表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RYANGA--リャンガ  作者: 錬寧想
第一章:リャンガとして

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

33/35

第二十九話:水の中の仲直り

33回目の投稿になります。

一瞬でも楽しんで頂けると幸いですっ。

何卒よろしくお願い致します。


 ゴポゴポゴポゴポ


 ロコイサ王に沈められた骨のモンスターは川に流されるままに流されていた。再生こそしているものの残ったのが頭蓋骨(ずがいこつ)だけである事に変わりはなかった──────────


 (ったく、行事菓(ぎょうじか)のせいで味わったこともねぇ屈辱二度(くつじょくにど)も味わっちまった……。身体取り戻しにいかなきゃならねぇけど、どうすっかなぁ……。この状態で今から戻った所でどうせあの女がいるだろうし……てかそこら中景色が変わりすぎててまず戻り方が分からん。かといってそこら辺のヤツら使ってあいつらから身体の回収させるっつってもまず言葉が通じねぇし……うわ……なんかもう考えんの面倒くなってきた、一旦寝よ。まっ、寝て気分良く起きれりゃ為るように成んだろ)


 骨のモンスターの意識がだんだんと薄れ始め静か眠りに入っていく。だがその眠りを妨害(ぼうがい)するかのように、真っ暗な視界の中に次第に思い出したくもない骨のモンスターの過去の記憶が映り始めた。


 

 それはロコイサ王国が廃国になる前夜の記憶───────

 

 【メデ王宮広場・夜】


 その晩もその場所には変わらず華やかで優美な時が流れ、色鮮やかな茜色(あかねいろ)に灯る明かりの下でロコイサ王国の多くの国民が楽しげな会話や日常生活・盛んな商売で(にぎ)わせていた。

 月明かりにうっすらと照らさる程で姿ははっきりと見えないが本来の人の姿をした骨のモンスターと月の光を度々照らす美しい紅玉のような瞳を持つ行事菓と呼ばれる青年が居たのは、広場からの音がほんのりと耳を優しく覆う程で見えている明かりも温かく優しく眠ってしまいそうな程の距離にあった対称的な静かな時間の流れるメデ王宮の屋上庭園(おくじょうていえん)


 『明日の事なんだけどねっ、セリデイホもいる事だしここにわざわざ皆を率いてくる必要ないと思うんだっ。君一人であの分身使っちゃえば一寸の狂いもなく全て上手くいくし、その方が迅速且(じんそくか)つ安心だよ絶対。うんっ絶対そうだねっ!』


 『ア? 俺どころかお前一人居りゃ十分だろ。

 俺はあんなデメリットしかねぇ愚能力なんて使う気はねーぞ。分裂した分個々の力は個体数に応じて半減されるし、挙げ句力の反動で能力解除後には分裂した数一体につき1年眠らなきゃいけなくなるんだからよ。明日の事は個人の力なら俺の方が圧倒的で差しなら問題はねーけど、なんせ脆い荷が多すぎる。奴らの数的に手が回らない隙も多くなる訳でそしたら俺も必然的に分裂しまくらなきゃならねぇ。

 その後当分は俺が居ねー訳で戦力も大幅に下がんだろ。その間に何かあったらどーすんだ?…………お前に限ってんな事はねーか。いやだとしても俺の戦力はデケェだから考えを改め直せっ』


 そのセリデイホの言葉が不服そうに行事菓は右の(ほお)(ふく)らませた。


 『だって……なるべくロコイサには嫌われたくないしー』


 それを聞きポカンと口を開けた後セリデイホは、まるで駄々(だだ)()ねる子供を見て否定もできず仕方なく寄り添うかのように言った。


 『ハッ、これから最低に思われて嫌われるようになるってヤツにそれ以下もねぇーだろ。……ったく……なら事が済んだ後、万が一に1欠片でも俺の身体が戻らなかったら死んででも弁償しろ! あと眠りについた俺をちゃんとした場所まで運べ! ならやってやる!』 


 『ホッ! 勿論(モチロン)! 感謝の限りっ!!』


 ──────────────────────────────────────



 それから難なく事を成した俺は、意識を保っていられない程の睡魔(すいま)と戦う中で動かす事の出来ない身体を行事菓に引き()られていた─────


 ズルズルズルズル


 『オイ……運び方雑すぎんだろ……起きた時身体欠けてたら弁償してもらうから……覚えとけよ……』


 『んっん~んん~~だってこの身体思ったよりデッカイカイし~っオっモイモイんだよ~~。ベンショ~ウメンド~ク~サ~イな~~っ出来たら許してくれるとウレシイナ~~っ』


 行事菓は鼻歌混じりに言い訳をし。


 ドシンッ!!


 そのまま後にリンロ達に見つかる場所へと飽きたおもちゃを投げる子供のように適当に置いた。


 『ちょっ……お………雑………』


 『ふぃ~~すっ…………ん?

 …………あら?もう寝ちゃった?

 …………そっか、それじゃあ寂しくなるけどセリデイホっ、おやすみすみっ!! また明……あ違うか……。また……また……またまたまたまたっ!!』─────────────────────────────────────────────




 そうだ……あん時気が薄れゆく中で最後に見たのは、オレを置き去りに愉快(ゆかい)な足取りで立ち去って行くアイツの後ろ姿だったな。クソッ、思い出したくなかった、胸糞悪(むなくそわ)りぃ……。


 「いっつもだよな…………あのぶっ飛び気まぐれ主君野郎(しゅくんやろう)のせいでオレ達配下はいつもしなくてもいい苦労ばっかさせられてきた。つか良く考えてみたら今まで、成すべき事よりもその間に差し込まれるアイツの邪魔を除ける方が骨が折れてたような気がする……ぷハっ!……今日の事もそうだし何か笑えてきたわっ……」


 まっ、だが────


 ゴポゴポゴポッ


 その時後ろからスイスイと滑らかに水中を移動し迫ってきたのは水で形成された大きな一片の手。その水の手が骨のモンスターを優しく握り包み込む。


 「う~ん、最後のは君らしくもないお下劣非道(げれつひどう)さでさ~。何か~と~ッても見苦しかったんだけどっ!セリデイホっ! どうしちゃったの!」


 その突然発せられた無邪気な子供のような発言とはうって変わり、その声はまるで誰も居ない冷えた洞窟の中で聞いているかのような鳥肌を立て思わず黙り込んでしまう程に冷徹(冷徹)で且つ品を帯びていた。


 「ア? 誰のせいだよっ」


 「おはよはよだねっセリデイホっ!

 計算ではもう10年くらいは眠っていなきゃだと思っていたんだけど……少し早かったねっ!何でっ!? フフンッ、とはいえボクだってずっとまだかなまだかなって途中何を待ってるか分からなくなってしまうくらいにセリデイホの事待ちどおしかったんだからねっ!」


 当の本人何故か分からなかったが一瞬セリデイホの頭にリンロの姿が過った。


 「…………。

 早く起きれた理由は知らんが、まずは先の件の精算を始めてもらいたいんだがな? 俺のこの有り様を見て謝りたくはないか? 謝りたいよなぁッッ!!?」

 

 「…………何か寝起き悪いなっ」


 「ああ、すこぶる過去一悪いぞ?…………だがァッッ!!気にすんなっ。お前の情けない姿を見たい訳でもない、見える必要はない。只その場でひれ伏して一言どーぞっ!」


 「ひへふひまひたっ!」


 「オイ一言が違うなァッッ!? ん? てか、お前には俺のこの姿での言葉通じてんだな」


 「? まあ君のホネホネグァグァ語も別に理解は出来るけど……今はもう普通に話せてるだけだけど?」


 さっきまで無かったはずの身体の部位の感覚がほとんど戻っていることに気付きセリデイホは自身の手を見た。


 「!」


 大きな骨だった身体は随分と縮んでいたが手にはしっかりと肉が付いており、人の手の形と何ら変わりはない。そう見えるようになったのは他の部位もまた同様にだった。

 まだ完全に戻ってはいないが中肉中背・筋肉質な彫刻のような肉体美・銀髪とエメラルド色の縞模様(しまもよう)の長髪・金色の瞳を持つ男、それが本来の彼の姿だった。セリデイホが手を開閉し感覚を確かめる。


 「君の身体はちゃんと全部集めといたよっ、さっき取られちゃった分も含めてねっ。だから元の姿に戻ったら速攻で僕に元気満々な姿見せに来てよねっ。もうずっと君の狂気的な顔の刺激ととなりにいる時の鳥肌と寒気が足りなくて退屈(たいくつ)になりそうだったんだからさ」


 「おい……さっきからちょくちょく挟んでくるその待ってましたアピールウゼェからやめろ。てかあんな事しといてよく言えたもんだな、ア? 

 だが俺も鬼じゃねぇ……せっかく楽しみに待っててくれたんだからその期待には応えてやるよ……。

 過去一の狂気的な顔とやらを拝ませてやるから待っとけッッ!!」


 「於曾(おゾ)っ!!」 


 ぱっ


 「あ!? オイッ!!」


 「もォ~~、セリデイホが恐いこと言うからビックリして一つ君の欠片が手から溢れて流れていっちゃったじゃぁ~~ん。だけどま~直ちにセリデイホがボクの事許してくれたらもしかしたら取り戻せるかもしれないな~~」

 

 「………チッ、もういいっ。このままだとお前に連れ帰られてる間に俺の気が狂いそうだ。あれは自分で取りに行って後は一人で戻るから場所だけ教えろ」


 「うんっじゃあその質問も流しますっ」


 「流すなっ!」


 「はてさてっ只今セリデイホくんの流された筈のこの身体の欠片と~流された筈の只今の質問~、どちらにも魔法の言葉【俺は今までの行事菓の日々の行いを全てもれなく許してやります!】が必須(ひっす)となりますが~どうなさいますか~っ?(ニコッ)」


 「…………」


 (そーいやコイツの戯れ言は、あしらえばあしらうほど無限増殖していくんだったわ)


 「チッ、過去の事はもういい、全部水に流すっ」


 「う~んそうですか~魔法の言葉が全然違いますね~~。でもとりあえず僕を許してくれたお優しいあなたにはどちらも差し上げましょ~~っ。


 それでまずは僕達が今居る場所なんだけど、ここはボク達の思い出の聖地~っ! 【ゲンガムン・ガクカン山】で~~っす!」

 

 「…………あ?……は? はぁっ!!?? 何でンな胸糞悪りィーとこにいんだよお前ッ!! それが本当ならほぼ確実に着いた瞬間胸糞悪すぎてその場所沈めちまうけど、本当に合ってんだろうな!!??」

 

 「ははッ、さすがセリデイホっ。ボクと一緒の第一声だ~っ。でもね~っ、来たらそうも言ってられないくらいおもしろい事があるよっ?」

  

 「ハッ……そうかよ、なら俺を継続で一刻以上笑わせ続けられるなら沈めねーでいてやるよ。とりあえずお前は変なトコ行かねーでそこでそのまま待ってろ」


 「あはははっ!! だったら沈没(ちんぼつ)だぁ~~~~っ!!!」


 「あ……周りの景色変わりすぎてて分かんねーから、行き方教えろ」

  

 「うん、それならこうやって──」


 スゥゥ


 セリデイホの目の前で水を元に行事菓が新たな命を生み出した。それはヒヨコのような小さな水の鳥。


 「その子がここまで案内してくれるよっ。君は僕以外中々誰の言う事も聞いてくれないからね~……君より上の小鳥さんに生まれてもらいましたっ【カクウエちゃん】ですっ!」


 カクウエはキョロキョロと辺りを見回した後、セリデイホを見て首を(かし)げた。


 「カクウエ……ちゃん。どー見たって格下だろッッ!」


 彼の言葉を理解できたカクウエがご機嫌斜めで鳴き声を上げセリデイホに襲い掛かる。


 「オマエヨリカクウエウエ~~ッッ!!」


  パチャパチャガッガッパチャパチャガッガッ!!


 「意外に痛ぇッッ! オイッ!悪かったからもう止めろっ!」


 セリデイホの降参にカクウエが止まり行事菓が話を再開した。


 「とま~詳しくは君がこっちに来てからにするとして、先の件には本当に感謝しているよっセリデイホ。お陰で君が眠っている間に事も上手く運んだ。

 只気掛かりだったのが君に許してもらえるかどうかで。無理だったらもう一度仲間になってもらえるまで頑張ろうと思ったんだけど、許してもらえたからこれからまた宜しくでいいよねっ?」


 「俺が否定しねーなら、んな事勝手に思っときゃいいだろ。てかお前に頑張られたら逆に居たくなくなるわ」

 

 「フフンっなら良かった良かっただよっ。本当、この先の事も含めてボクの人生を一言で表すとしたら【セリデイホへの感謝】だなぁ~っ! 

 あ~~っ!これから毎日が楽しくなっちゃうなっ!」


 ブルンっ


 らしくもなくセリデイホが震えた。


 「頼むからそれだけはやめろ。お前の壮絶な生い立ちを差し置いて俺への感謝が上回るとか、俺の今後が塵屑(ちりくず)になる未来しか残らなくなるって言ってんのと同じだぞ」


 「よ~しっ! それじゃ~さっそく~帰りにぃ~~っ!!───」


 「ふんッッッッ!!!!」


 パシャンッ!!


 セリデイホは全身に力を込め水の手を飛散(ひさん)させると、颯爽(さっそう)と泳ぎ去って行く。


 「あら、行っちゃった……」


 悠々(ゆうゆう)とリラックスしながら泳ぎ去る彼の後ろ姿はどことなく機嫌が良さそうだった。何故なら彼の口角が少し上がっていた。


 (ったく、アイツの声久々に聞いてすっかり目が覚めちまった。いつもああいうふざけた言動に掻き乱されちゃいるが、何だかんだいって結局あいつは俺含め他のヤツらの事もいつもちゃんと考えて動く最終全部丸く治めちまうような奴なんだよな。そんなだから、俺も感覚狂っちまっていつまでもあいつの側にいたんだろうな……ハッ)


 「それはそれであいつに会った時の俺の反応はどうなるか分からんが……。んじゃ悪りぃが案内頼む……カクウエちゃん」 


 カクウエが了解の意味を込めた鳴き声を上げる。


 「オマエヨリカクウエウエ~~ッ!!」


 バシャんッ!!


 セリデイホとカクウエの姿はそのままどんどんと色濃くなる青の中に消え去って行った────────────



この物語を読んで下さり、ありがとうございます。

貴重なお時間を頂き感謝の限りです。


また続き読んでやってもいいぞ・今後楽しめそうだと感じられましたら、ブックマークや広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして頂けると至極幸いです。


 これからより多くの読者様に届いて一瞬でも楽しんで頂きたいので宜しければお力添えの程よろしくお願い致します。この度は本当にありがとうございました。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ