番外編:【水庭トヨニ先生の早口言葉教室・前編】
僕の名前は、ケース・メイト10歳。さっきまで友達のジョペチン君とサッカーボールでキャッチボールをしていたんだけれど、ジョペチン君が急に僕のサッカーボールを持ち逃げして隠れんぼを始めてしまったんだ。
ボール泥棒ジョペチン君を探して10分、僕はある場所に辿り着いた。
──【ジョペチン研究所】──
乾いた芋の皮を何枚も重ね作られた看板が古びた小屋の前に堂々と立てかけられていた。
(間違いなくここだ)
僕が確信を持ち乗り込もうとしたその時だ────
「うっぎゃ!!やっべ!!タスケチーンっ!!」
中からジョペチン君の叫び声がっ!! 僕は直ぐ様中へと突入した。
バギぃーンっ!!
古びた扉は思ったよりも軽く脆く、僕の突進で簡単に壊れぶっ飛んだ。
「!!」
僕が目にした光景は衝撃だった。
【僕のサッカーボールを椅子代わりに使うジョペチン君が、僕の飛ばした扉の下敷きになっていた】
ジョペチン君は今にも泣きそうだ。
僕が呆然と立ち尽くしていると、ジョペチン君よりも更に奥に立っていた一人の女の人が声を発した。
「ヘイッジョペチンっ!! 如何なる時も動じなーイっ!! さあ続けテ~いっ!!」
ジョペチンは扉の隙間からケース・メイトを半泣きで睨みをきかせ口を開き始めたが、もはやその顔は変顔と化していた──
「うっぎゃ!!やっべ!!タスケチーンっ!!うっぎゃ!!やっべ!!タスケチーンっ!!うっぎゃ!!やっべ!!タスケチーンっ!!」
ケース・メイトは固まっていた。彼は一体何をしているのだろうかと………。
「ジョペチン…………君?」
「うっぴゃぁーいっ!!!! 遂に三連続咬まずに言えたっピーーーっ!!!!」
それから間髪入れずにジョペチン君は、見ているのが恥ずかしくなるくらいのハイテンションで踊り狂い始めた。
「よく言えましたねジョペチン君。今日から君は早口言葉の申し子です」
「はいっ!! ありがとうございますっ!! トヨニ先生っ!! でも………」
「?」
「僕一人で早口言葉世界征服するの恥ずかしいから……早口言葉申し子のユニットを組みたいんですっ!! それで今日……連れて来ました。
彼が僕のパートナーになるケース・メイトくんですっ!!」
(え……どういうこと?)
「申し子に選ばれし申し子……ケース・メイト……素晴らしいっ!!
初めまして私は水庭トヨニ初めまして私は水庭トヨニ初めまして私は水庭トヨニ。ようこそケース・メイトくんっ!! 我が早口言葉教室へ!!」
「!!!?」
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