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RYANGA--リャンガ  作者: 錬寧想
第一章:リャンガとして

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11/35

第八話:再会は酷い

11回目の投稿になります。


 いつも読んで下さる方、今回目に留めて下さった方ありがとうございます。

 一瞬でも楽しんで頂けると幸いです。


 どうかよろしくお願い致しますっ!!

 

 ケホッケホッ


 リンロの後方(こうほう)、サーカスゾーンにあるカラフルなクッション椅子(いす)が並ぶ観覧席(かんらんせき)

 そこでカウリに心配そうに見守られていたミハリが、意識を取り戻し()き込んだ。


 半信半疑(はんしんはんぎ)で息を()んでいたリンロはホッと息をつく。

 

 (……良かった)


 「ありがとう……カウリ君」

 

 一部記憶(いちぶきおく)のなかったミハリはカウリが救ってくれたのだと思い込み、カウリにお礼を言った。 


 「……うん」


 (助けたのは僕じゃないんだけどな………)

 そう思いつつもカウリは、リンロからの口止(くちど)めも(ふく)めここで自分から話すのは違うなと一旦(いったん)ミハリからのお礼を預かった。

  

 カウリはなるべくリンロ達に触れないようにと気を使っていたが、それに反して向こうの騒がしさは(いちじる)しく目立っていた。


 「チョーチョー。ネガティブ・逃げティブに続き、棒読みティブときたっチョか。

 お前……俺様のことまだ信頼してねーだろぉっー!!」

 

 (ティブとは一体………)

 「いや……本当に助かったと思ってるぞ」


 「だったらもっとちゃんと言うっチョーっ!! 


 こう(ひざまず)いて、神々(こうごう)しいものを見るように(まぶ)しそうな目をしながら感涙(かんるい)を流して『ああ……信頼(しんらい)(かみ)っチョ、トゥーチョゴッドゴッドゴッドトゥーチョ3(スリー)ゴッドサンド様ぁ~。最早(もはや)あなた様以外誰も信頼できなくなりましたっ!!』って言えぇぇぇーーーーっ!!」

 

 「あの人達は?」

 

 必然的(ひつぜんてき)にミハリからそう問われたカウリは困ったように答えた。


 「……えっ……と……。

 あの人達は、ミハリちゃんを助ける時に力を貸してくれた(なぞ)の人達だよっ」


 ミハリが謎の人達とされた二人を見つめる。 


 「……………」


 その時突(ときとつ)として、どこか(なつ)かしいような雰囲気(ふんいき)が風のようにミハリへ向け流れた。


 5秒……10秒……とミハリがリンロの後ろ姿を見つめ続けていると、その瞬間(しゅんかん)だけまるで氷が()けていくかのようにミハリの頭の中のリンロ以外の記憶(きおく)が消えていった。


 ミハリの記憶から鮮明(せんめい)抽出(ちゅうしゅつ)されたリンロの面影(おもかげ)がその後ろ姿に(かさ)なっていく。 

     

 ────!!!


 「あっ……あのっ!」


 「!!」


 「!!」


 ミハリが突然大きく出した声にびくつくカウリとリンロ。


 「リンロ? ……………………ですか?

 あっ……間違ってたらごめんなさいっ」


 「ン? 何だあの当てずっぽう女。何かお前のこと呼んでるみたいだチョ?」


 リンロは()(あせ)を流していた。


 「………………」


 おい(うそ)だろ。7年も会ってねー奴を後ろ姿見ただけで分かんのかよ……。

 やばい、()まず()ぎて声が出ねえ。

 とりあえず何か言わねえと………。


 「俺──」



 ゾヒッ!!



 顔を左に向けた直後(ちょくご)。リンロの身体の正面、目線よりも下から彼に向けられ殺気(さっき)が飛ばされた。

  

 「分からないなぁー」


 そこに立っていたのは移動した勢いのまま両腕(りょううで)を後ろで(なび)かせ、左足を前に大きく足を開き両膝(りょうひざ)を曲げ前屈(まえかが)みに姿勢(しせい)を落としたネユマ。

 

 「!!」


 リンロはすぐさまネユマの方へ視線(しせん)を落とした。


 「リャンガである君が何故人間(なぜにんげん)を守ろうとするんだい?

 人間は僕たちが普通に生きようとしているだけで、平気(へいき)でそれを否定(ひてい)し存在を否定し傷つけ殺しに来るようなやつらなんだよ?」


 キュッ


 ネユマは左足を(じく)(こし)(ひね)った。


 「そんな(やつ)ら守る価値(かち)もないだろうっ!!」



 メキメキメキッ



 右足で風を()き込み竜巻(たつまき)(ごと)()り出されたネユマの(まわ)()りは、リンロの右脇腹(みぎわきばら)に強くめり込みくの字を(えが)いた。



 でュボゴッ!!!!

 


 リンロは子供に投げられた人形のように自身の左手側(ひだりてがわ)へと勢いよく()()ばされた。


 「人間とリャンガは共存(きょうぞん)できないよ」


 ────────────


   

 (ミハリにずっと(うそ)つき続けて心配かけて…………。

 その間ずっとカウリに支えてもらって迷惑(めいわく)かけてきて…………。

 さっきまで動けずにいた他人の俺を、トゥーチョはここまで連れて来てくれた…………。


 やっとここまで来れたっつうのに、結局(けっきょく)このまま何も守れず(じま)いで終わんのかよ……)


 「ほんと最低だな…………俺」



 リンロの身体は(はしら)花壇(かだん)・ベンチ・転落防止柵付(てんらくぼうしさくつ)きの腰壁(こしかべ)とぶつかるものをことごとく()(やぶ)り、そのままリポムファンカースの屋上外(おくじょうがい)へと飛び出た───────


 やがて横へ飛んでいた(いきお)いが止まり、今度は遠く下に見える地面へ向け落下を始めた。


  

 (ごめん………トゥーチョ…………カウリ……………ミハ───『………じゃん』



 その時走馬灯(ときそうまとう)のように()かんだのはリンロが8歳の頃、図書館の解体工事現場(かいたいこうじげんば)でミハリと出会った時のこと。


 『死んじゃ……ダメじゃんって……言ったん……だよ。

 ちゃんと聞きなよばかっ!!』


 (なんで今更(いまさら)こんな記憶……)


 …………あれ? もしかして俺、自分で思ってるより生きたいとか思ってんのかな?

 いやそんなことねーか。あってないような命だったし……。

 きっとミハリへの罪悪感(ざいあくかん)からだろうな。

 

 「ごめん、無理だミハリ………。俺はもう……」


 ポタッ


 リンロの左の目の下に1(てき)の水が落ちた。


 あったけえ………雨…………。


 そんな雨にふと、今どんな空をしているのか気になったリンロはゆっくりと目を開き始めた。

 余程(よほど)光景(こうけい)なのか彼の目はどんどん大きく広がっていく。



 ミハリがいた───



 彼女の目から(こぼ)れた(なみだ)(ふたた)びリンロの顔に落ちる。


 「死んじゃダメじゃんっ! バカっ!!」


  は? 


 口をぽかんと開けたまま力の()けたような顔でリンロはミハリのことを見ていた。


 「ミ……ハリ……何で……お前………」


 「手を()ばしてリンロっ!!」


 「…………何……来てんだよ……俺はっ」


 その瞬間俺(しゅんかんおれ)はカウリに言われた言葉を思い出した。

 俺はミハリに何も言ってない…………。


 言っておくべきだったとリンロは後悔(こうかい)した。

 

 「俺はもう人間じゃねえっ…………。リャンガっつう化け物なんだっ! 一瞬(いっしゅん)でも俺に()れれば、お前は死んじまうっ!!」


 俺がそう言うとミハリは一瞬驚いたような表情を見せて、それから優しく笑った。


 「うん、分かった」


 何だよ…………その反応。

  

 「…………。分かったんなら、まずそのこっちに突っ込んでくる今の体勢(たいせい)を変えてくれっ頼むっ! 少しでいいから上着とかも使って空気抵抗(くうきていこう)を増やしてくれないかっ?

 

 俺が何とかするっ。昔に約束しただろっ? 支える番交代(ばんこうたい)だって……だから今度は俺がっ」


 (ミハリと出会ってから支えられていたのはいつも俺ばっかりだった。俺は一度だってミハリのこと支えられてねえのに)


 しかしミハリは何も聞こえていないかのようにそのままリンロを目掛(めが)け落ちていく。


 「おい……聞こえてんだろっ! 俺に(さわ)った瞬間死ぬんだぞ!? んなことしても何も意味ねえんだよっ!!」

 

 (俺なんか生きてる価値もねえ最低な命なのに。

 俺はずっとお前を心配させて傷つけて。()()お前の人生奪(じんせいうば)おうとしてんだぞ? そんな奴助けに来る必要なんてねえだろっ!! 何でだよっ!!)


 「死んだ後の私の身体を使えば、リンロならきっと助かれると思う」


 「…………何……言ってんだよ……んなことできるわけ……。


 ………やめろ─────

 

 



 やめろおおおおおおおおおぉぉぉぉーーーーっ!!!!」


 (のど)()けそうになる程にリンロは大声で(さけ)んだ。

 ミハリの手が俺に見えている空を少しずつ消していく。


 「(たの)むから…………やめてよ……」


 「リンロはこれからも強く変わっていける。だから最後までちゃんと変われないと思った自分越(じぶんこ)えて生きなきゃダメだよ?」


 「いやだ」


 「ごめんね……バイバイ、リンロ」



 ぐッ!!!!!!



 それ以上は(こわ)くなり俺は目を()じた。


 (ああ終わったな……。


 もう目開けたくねえな…………。

 次目(つぎめ)ぇ開けてミハリのいない世界を見ちまったら俺、きっとすげえ泣き(さけ)んじまうんだろうな。そのまま失神(しっしん)とかして死んだり出来んのかな。


 でも今さっき、それはミハリに駄目だって言われちまったんだよな…………。

 

 とりあえず……生きねえと……)──────

 


 《目を開くとそこには、普段(ふだん)(なん)ら変わらない平凡(へいぼん)な青空が広がっていた》


 

 それを見ていたのはミハリ──────

 


 「え?」


 「ほんとリンロの言ったとおりだったね」


 その声はミハリの下の方から聞こえる、だがリンロの声ではない。体勢(たいせい)も変わっていた、さっきまで下を向いていたはずなのに今は仰向(あおむ)けになっている。


 下に目を向けミハリは、自分が屋上(おくじょう)よりも上に高く上がっていることに気が付いた。


 声がしていたのは屋上からだった。


 リンロが転落防止柵付(てんらくぼうしさくつ)腰壁(こしかべ)()(やぶ)った屋上の(ふち)、そこに立っていたのはカウリ。

 左肘(ひだりひじ)を上げた彼の手はキラキラと光る空色の風を(まと)っていた。そしてそれはミハリの左手へと(つなが)がっている。 

 

 「ねえミハリちゃん。

 君の気持ちも分かるんだけど、今のは少しムチャし過ぎかな。


 この(さい)だから言うけど。リンロはね、今みたいになるのが嫌だったから君に生きてることを隠してたんだよ。彼の気持ち()み取ってあげてもらえないかな?


 ミハリちゃんを傷つけたくない、ミハリちゃんに生きてほしいって想ってるリンロの気持ちをさ」

 

 「…………」


 目を開けると俺は屋上から()びている、まるで雪が日に反射(はんしゃ)したようなキラキラと(かがや)空色(そらいろ)の風で作られた太い糸に左手を(つか)まれ(ちゅう)()るされていた。


 何が……起こったんだ? なんでミハリはあんなとこに……。 

 

 涙が()まりうっすらと開いたリンロの左目は、それが現実(げんじつ)なのか区別(くべつ)ができずにいた。反対の閉じた右目からは一本線(いっぽんせん)の涙が()れている。

    

 スッ


 カウリが左手を下ろすとミハリがゆっくりと降下(こうか)した。そのままカウリに手をとってもらいミハリは地に優しく足を着けた。


 タッ 


 カウリは右手を前に出しそこから繋がるリンロを屋上から見下ろす。


 「僕だって二人に死んでほしくない……二人は大切(たいせつ)存在(そんざい)だから。

 それに今まで僕が過ごしてきた君達は自分を()し殺した君達で、一度だって本当の二人のことを支えられていない」


 カウリがリンロに明るい笑顔を見せる。

 

 「僕はまだまだ君達とは全然生(ぜんぜんい)()りないよっ」


 

御貴重なお時間を頂きありがとうございました。


また続き読んでやってもいいぞ・今後楽しめそうだと感じられましたら、ブックマークや広告下の【☆☆☆☆☆】を【★★★★★】にして頂けると至極幸いです。


皆様の応援を頂けますととてもモチベーションとなりますっ。これからより多くの読者様に届いて一瞬でも楽しんで頂きたいので是非お力添えの程よろしくお願い致しますっ!!




 次回は、『第九話:変われる気がする』です。 



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