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おもいでがおっぱい。

「あなたが強い子に育ってくれて、本当に嬉しいの。

 だけど康一、お父さんやお母さんにもっと甘えてもいいのよ……」


 なんでそんなこと言うの ……お母さん?

 約束したよね、お母さんを守るって……

 だから男が泣いちゃ駄目なんだ、お父さんみたいに強くなるんだ!!

 もっと褒めてよ、お母さん……


 *******


「……こ・う・い・ち」

 誰かに名前をよばれた気がした、おかあさん?

 それはあり得ない、夢を見ていたんじゃないのか……


 だとしたら、この声は誰だ?


 あわてて上半身を動かそうとするが、身体の自由が効かない。

 まるで鉛の様だ、かろうじて薄目を開けようとするが、

 視界がぼやけて焦点が定まらない……

 背中に感じる固い感触、俺はベットに寝かされているのか?


 膝のあたりに重みを感じる、同時に温もりも……

 この感触は何なんだ、俺の身体を誰かが押さえている、 

 それが身体の自由が効かない理由なのか。


「……康一、苦しかったでしょ いま楽にしてあげる」

 やっと視界がクリアになる。


「正美? お、お前 何してんだよっ!!」


「わわっ!! 目が覚めちゃった、ど、どうしよう……」

 思わず、自分の目を疑った、大浴場でみたおっぱい再び、

 おっぱいの中のおっぱい、俺の中で殿堂入り級なおっぱいだ。

(おっぱいソムリエ財団、2021版データブックにて当方調べ)


 正美が俺にのし掛かる体勢で馬乗りになっていた、

 こちらに負担を掛けまいとの配慮か、肩肘をベットについて、

 体重を分散しているんだろうが、その配慮が俺にとっては仇となる。

 正美との距離が、ヤバい程近い……

 頬に正美の吐息まで掛かってしまう近さだ。

 ……その瞬間、気付いてしまったんだ。


 「正美、か、かわいい!!」


 「……こ、康一」


 正美がとても愛おしく思えた……

 また頭がバグったんじゃないか、これも呪いの副作用かもしれない。

 正美は俺の大事な幼馴染みで親友、そして何より根本的に男だ……

 子供の頃から、正美は良く女の子に間違えられた、色白で華奢な体軀、

 いじめられていたのを俺が助けることもしばしばだった。


 いくら俺の理想のおっぱいを装着しているとはいえ、

 これは偽だ、フェイクおっぱいに俺は騙されないぞ!!


「何なんだよ、また俺をコケにしようとしているのか……

 冗談キツいぜ正美、なあ俺もう疲れちゃったよ、

 今日だけで色んな事あってさ、確かにお前も、この街も、

 俺がいない間に全部変わっちまった……」


 正美は泣き出しそうにも見える表情を浮かべ、

 こちらを黙って見つめていた。


「康一、ごめん、僕のせいなんだよね……

 だけど、やらなきゃ駄目なんだ、今は訳を聞かないで……」


 そしてメモのような物を広げ、そこに視線を落とした。

 しばらく思案した後、正美はこう切り出した。


「僕がアパートに遊びに行った時のこと、覚えてる」

 突然、正美は何を言い出すんだ? 一週間前に俺のアパートに来たことか、

 ゴミ屋敷化しかかっていた所を、正美は何時間も掛けて、

 ピカピカにしてくれたんだ、お前が女だったら絶対、嫁さんに貰うのにって、

 冗談で言ったら、何だか妙にわちゃわちゃしてたっけ……


「康一のベットの下も掃除したよね、

 悪いけど見つけちゃたんだ、カラーボックスの奥に……」


 えっ、ベットの下、カラーボックスの奥深くといえば……

 おわあっ! おっぱい星人、魂の貯蔵庫じゃないか!!

 親父と冒険の傍ら、世界中で仕入れたお宝がぎっしり詰まっている。


「正美、アレを見たのか……」


「うん!!」


「カラーボックス何個目まで見たの……」


「大掃除だからね、もちろん全部だよ♡」

 ニコニコしているのが逆に怖い、正美は変わっていて、家が銭湯で、

 子供の頃から、女性の裸なんて見放題なのに全然興味ないんだ。

 良くからかうネタにするんだ、お前、男が好きなんじゃないのかって。


 焦る必要はないんだ、正美は男で、女の子にえっちな本を見つかった訳じゃない。


「康一、ずり○チ四平よんぺいって何?」


「ぶほっ!!」

 えっちな本のタイトルに、思わず咳き込んでしまう……


「一番のお気に入りみたいで、同じ本が何冊もあったけど、

 あれは何してるの、何だかサングラスを掛けた男の人と、

 麦わら帽子の男の子が並んでる表紙だったけど……」


「そ、それは、サングラスが巨○さんで、麦わら帽子が四平なんだよ……

 ま、幻のイトウならぬ、幻のおっぱいを求めて北の歓楽街へ釣り三昧、

 その筋では有名な巨乳ハンターの話なんだ」


「あっ、だからおっぱいに大きな魚を挟んでいたのか!

 僕、北海道だから鮭かと思ったよ!!」


「そうそう○根さんは四平のおっぱい釣りの師匠なんだ、

 鬼ならぬ、まりっぺのいぬ間に、魂のおっぱい釣り紀行に出掛けたんだ。

 四平のじっちゃんが作った、巨乳捕獲用の特別製ビッグタモが凄いんだぜ!!

 って、俺に何、語らせてんだ、まさみっ!!」

 何で、えっちな本の話をするんだ、よりによって俺のフェイバリットな一冊を。


 エッチな本の事を指摘されて戸惑う俺に、

 いきなり正美が覆い被さってきた!!


「あの本と同じこと、してもいい?」

 俺の耳元に囁きかける……


「えっ、同じ事って?」


「ずりキ○……」


「阿呆か~~ お、お前正気なの?」

 正美の顔は耳まで真っ赤だ、こいつが下ネタを言うなんて初めてだ……

 理由わけは分からないが、正美の固い決意を感じる。


「正気だよ、()()()()()て意味でしょ、康一は嫌いなの……」

 確かに俺はおっぱいが好きだ、寝ても覚めても忘れない、ビックリするぐらい、

 大好きなんだ、だけどお前は男で、俺の大切な……


「これはおっぱいの練習テストなんだよ…… 康一が将来、本当に大好きなおっぱいに

 出会えたとき、扱い方を分からないと困るでしょ!

 だから僕のおっぱいで練習テストするんだ……」

 正美は泣き笑いの表情かおを浮かべていた、それを見た俺の胸が何故だか疼いた。


「それに安心して、嘘おっぱいなら、いくら触っても大丈夫でしょ……」

 そうか!! やっぱり映研の佐藤が作った偽おっぱいなんだ。


「それなら安心して揉ませて貰うぜ、正美!!」


「うん!!」

 俺の返事を聞いて正美の顔に、ぱあっ、と笑顔が戻る、

 すでに第二ボタンまで外してあるシャツに手を伸ばした。


 白いシャツの前がおっぱいの部分だけはだける、

 程よい大きさのおっぱいが重力に逆らうように、ぷるるん♡と顔を出した。

 大浴場で見たときより生々しい、あの時は浴槽からの湯気もあって、

 風呂用コンタクトをしていたとはいえ鮮明でなかった……

 今回は白いブラに隠されているが、まるでハイビジョン並みによく見える。


 胸の高鳴りが抑えきれない……

 ごくり、唾を飲み込む音を、正美に聞かれてしまわないだろうか。


「康一、目が真剣すぎてちょっと引くかも……」


「しょうがないだろ…… こんな最高のおっぱいが至近距離にあるんだ、

 存分に堪能させて貰うぜ!!」


「馬鹿こーいち……」

 これ以上ないほど真っ赤になった正美が視線を逸らした。


「でも、こわれちゃうといけないから優しくしてね……」

 そう言いながら、後ろ手でブラのホックを外しに掛かった。


 そうだった、佐藤謹製の偽おっぱいだから、手荒にあつかって、

 破損して弁償させられても敵わないからな……

 おっぱいじゃないが、狼男の特殊メイクでウン十万掛かるそうだから。


「……!?」

 ナイロン素材の擦れる音と共に突然、目の前が真っ暗になった。


「やっぱり恥ずかしいから、ちょっと目を瞑っててくれる、

 イイって言うまでブラを顔から外しちゃ駄目だよ……」

 ええっ、俺は正美のブラで、目隠しされてるの?

 そういえばほんのり両目が暖かい……

 眼精疲労に効きそうだ!! おっぱい星人専用ホットアイマスクとか、

 売り出したら大ヒット商品になったりして……


「ぷっ、あはは、康一、まるでおっぱい仮面みたい!!

 ブラで顔を隠して世を忍ぶ姿とか、すっごく可笑しいかも!!」


「動画撮影はご遠慮ください……」

 こんな姿を世界発信されたら、社会的に終了のお知らせだ……


「大丈夫、康一と僕だけの秘密にするから♡」


「さーせん」

 ワクワクが止まらないとはこのことだろう……

 合法的におっぱいを触って、弄んで、転がして、

 俺の妄想が遂に実現化するときが来た!!

 おっぱいの試乗が出来るんだ、

 短い試乗コースではなく、サーキット貸し切りで全開試乗可なんだ。

 ヤバい、俺のクイックシフトが、もうトップギアに入ってしまいそうだ……


「じゃあ、五つ数えたら顔のブラを取るね……」

 正美がカウントを始める。


「い~ち!」「に~い!」


「さ~ん!」「し~い!」


 いよいよ、おっぱいの決算大試乗会のはじまりだ……

 偽物レプリカでもいい、最新スペックのDカップおっぱいを乗り回せるんだ。

 もう死んでも構わない!!


 次回に続く!

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