つるぺたはおやつに入りますか?
お前には、苦労ばかりかけちまったな……
三百六十五日、俺の側にいてくれて本当にありがとう、
一心同体とは、お前と俺みたいな関係を言うんだろう。
思えば手荒な扱いもしてしまった……
汚れ役は、いつもお前に押しつけてしまった俺を、
はたして許してくれるだろうか。
お前の存在が、どんどん俺の中で大きくなってきたのは、
確か小学校高学年の頃だった……
見違えるほど成長したお前の事が、頼もしくさえ思えたんだ。
俺にとって、最高のアラジンのランプみたいだ、
こすればなんでも願いが叶う!!
なあ最高の相棒、俺のおちんち……
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「ぎゃああああああっ!!」
「我が亀の湯の床がデリケートで、命びろいしたな小僧!!
この掃除機の先端がナイロンブラシだったら、
お前の大事な倅は、中折れして瞬殺じゃったぞ、
だがソフトブラシでも、ふつうの男なら三分で昇天じゃ……」
暴れ馬のような掃除機を、女の子の細腕で軽々と扱っている。
いったいこの子は何者なんだ、しかし今の俺に考えている余裕は無い、
高速で回転するブラシが、俺の相棒を根こそぎ持って行こうとする。
泡まみれのプレイって、もっと気持ちいいモンじゃなかったの!!
「どぅわああああっ!もげる、もげちゃう!女の子になっちゃう!
らめぇ!ぷろぺらなの?ぐるぐるってしちゃてるぅ!!」
「哀れな奴じゃ、強情を張らずに素直に従っておれば、
おなごとして生きていく事もなかったろうに……」
絶体絶命だ、さっきの威勢は何処へやら、
俺の脳裏にギブアップの文字と、女の子の未来が交互に浮かぶ、
三枝康恵ちゃんとして生きていくのも悪くないか……
いやいや!! 駄目だ、俺にはまだ見ぬおっぱいが待っている、
日本を飛び出してみたい! 世界中の何処かにあるという、
幻の大秘宝クワスチカに負けるとも劣らない、伝説のおっぱい!!
世界的な冒険家だった親父が、いつも俺に語ってくれた話がある……
(康一、おっぱいはいいぞ! おっぱいは誰も傷つけない。
おっぱいの事を考えるだけで、とても幸せな気持ちになるだろ!
想像してみろ、争いもなく貧困もない世界を……
世界中のどこかで戦争があり、罪もない命が何万人も奪われているんだ。
お父さんは、伝説のおっぱいを必ず見つけ出してみせる!
伝説のおっぱいには、世界平和をもたらす力があるんだ……)
やさしく俺の頭を撫でてくれた親父は、この世にはもう居ない……
俺が必ず見つけ出すんだ! 志半ばで倒れた親父の為に!!
「うおりゃああああ!!」
……熱い、この熱さは何だ?
全身の血液が逆流し、みぞおち付近に集中するのが感じられた、
身体に力が湧き出てくるようだ、俺にいったい何が起こったんだ?
キュイ~~ン、ガガガガッ!
「なんじゃと!! この業務用のパワーを受け止めるとは……
むっ! もしや呪いが完全に発症したのか?
……馬鹿な、仮にそうだとしても自由に動ける訳がない」
高速回転していたブラシが停止した、いや俺自身が止めたんだ。
身体の一部分が鋼のように固くなっている、そして熱い、
熱くてたまらない……
ガガガガ、ガキャ!!
「何っ!? 身体が!!」
急にブラシを止められた掃除機が逆回転を始めた、
その勢いで柄の先端を押さえていた女の子が身体ごと宙に浮いた。
「きゃうっ!!」
女の子がたまらす悲鳴を上げる、可愛い声も出せたのか……
暴走を始めた掃除機は、俺を軸にして猛スピードの回転を止めない。
「め、目が回るのじゃ、小僧、見てないで助けろ!!」
形勢逆転、俺の大事な相棒をいじめた罰だ……
「浦島太郎のお話を知らないのか? おちん、いや亀をいじめると、
バチが当たるって昔から言うだろ!!」
「こら!年上を敬わん奴のほうがバチが当たるのじゃぞ!!」
遠心力で振り回されながら、女の子が必死で掃除機にしがみつく。
年上って何、訳の分からない事を言っているんだ……
どう見ても俺のほうが大人だぞ。
「こ、小僧、亀のバチならぬ、呪いに犯されているのはおぬしじゃ……」
「俺が呪われているって一体何の話だ、脅そうとしても意味ないぞ!」
「だから、その力も亀の湯の呪いが発症しているからじゃ、
だかな、よく肝に銘じて覚えておけ!!」
目が回っているはずなのに、一瞬だけ彼女と視線が合わさった。
その厳しい眼光に俺は射ぬかれてしまった……
「そのままじゃと、おぬし確実に死ぬぞ……」
キュウ~~ン……ブチッ。
「……っ!!」
電源ケーブルが掃除機に絡まりコンセントから抜け、急停止した。
「小僧、儂を受けとめるのじゃ!!」
「おわあっ!!」
……女の子が降ってきた、それも裸ん坊で俺の上に。
「もがぁ! 息が出来ないっ!! それに何も見えない!!
失明? 呪いか、これが亀の湯の呪いなのか?」
「……たわけ、よく見ろ、おぬしの顔に載っているのは儂の尻じゃ!!」
「ぷはぁっ!! 死ぬかと思った……」
呼吸を確保出来るようになり、目を開くと蒙古斑のあるお尻が……
「ちょ!! お、おしりって事は、俺が酸素吸入していたのは……?」
「何をギャアギャア騒いでおるのじゃ、うるさい小僧め……」
くるりと俺に跨がったまま、彼女が身体の向きを変えた、
見事なまでのアイガー北壁が、目の前にそびえ立っていた。
神々しいまでの桜色な死の壁、挑戦するものを寄せ付けない、
漢ならたとえ無謀と思えても自分のリミットを越えてみたい!!
おっぱいはもちろん大好きだ!爆乳、巨乳、貧乳、
A・B・C・D・E・F・G、これはサイズの一部だが、
そんなカテゴリー分けなど意味がないんじゃないか?
俺はブラのサイズばかりに囚われすぎていたんだ。
何がおっぱいソムリエだ、馬鹿野郎、天狗になるな!!
ブラの要らないツルペタのおっぱい……
俺の目から何枚もうろこが落ちるのが分かった。
「何を泣いておるのじゃ、小僧?
おかしな童だのう……」
女の子が俺の頬を撫でてくれ、涙の軌跡を拭き取ってくれた。
俺の中で張り詰めていた緊張の糸がぷつんと切れた……
「ううっ、うわ~~ん! 俺は間違っていたんだ……
こんなに素晴らしい物を食わず嫌いしていたなんて、
何て、愚かで馬鹿なんだ!!」
俺は号泣していた、赤ん坊の頃に戻ってしまったみたいに……
次の瞬間、頬が暖かい感触に包まれた、
華奢だけどやさしい両方の掌、そのまま俺の顔を引き寄せる。
「よしよし、よくは分からんが、おっかない事があったんじゃろ、
儂の胸で思う存分泣くがよい……」
女の子の薄い胸に包まれていたんだ、それは死の壁なんかじゃなかった、
暖かい鼓動を感じながら俺は久しぶりの安らぎを覚えていた。
「康一、気がついたんだ!!」
大浴場の引き戸が開き、背後からいきなり声をかけらた。
振り返ると私服に着替えた正美が立っていた。
ヤバい!! 俺は裸で少女と抱き合ったままだ……
完全なる逮捕案件だ、さすがに言い逃れは出来ない状況だ
正美の顔を見ると完全に血の気が引いている……
口がパクパクして、おまわりさん、こちらです!!状態にみえた。
「……お祖母ちゃん、康一と何やってるの?」
ええっ!お祖母ちゃんって誰の事?
次回に続く!!