おっぱいの女神
(……カポーン)
水を流す音で、俺こと三枝康一は目が覚めた。
見慣れない天井が目に入った、ここは何処だ。
全身がだるく感じられ、特に腰の辺りや腹筋がズキズキ痛む。
激しい運動をした後みたいだ、俺は一体何をしていたんだ?
ぼやけた記憶が次第に鮮明になる。
「そうだ、正美は!!」
慌てて飛び起きようとしてベットから転げ落ちてしまった、
カコーン!カラカラーン!けたたましい音を立てて洗い桶が転がる。
何で、桶が一緒に落ちたんだろう? その時は疑問に思わなかった、
どうやら大浴場に置かれた、籐のベットに寝かされていたようだ。
「……あいててて」
「そこの小僧、掃除の邪魔なんじゃが」
ぶつけた腰をさすっていると突然、後ろから声を掛けられた。
「そんなところで寝っころがられたら、床掃除が出来んじゃろ」
振り返ると女の子が、見慣れない機械を手に立っていた。
年の頃は小学四年生位で、亀の湯名入り法被を着ている、
小柄な身体には大きすぎて、法被がまるでコートみたいだ。
「お嬢ちゃん、お手伝いなの、偉いね!!」
正美に小学生の妹なんかいたっけ?、親戚の子かな。
俺の問いかけに答えず、手元の機械をいじり始めた。
長いT字型の柄、その先端にイソギンチャクのお化けみたいな、
白いソフトブラシが付いている、業務用の電動掃除機みたいだ。
キュイ~~ン!!
丸いブラシの先端が回転し始め、同時に洗剤も出る仕組みだ、
面白いな、見る見るタイルの床が綺麗になっていく。
「ふう、ここは暑いな……」
女の子の白くてむき卵みたいなおでこに、玉の汗が流れる、
すごく可愛い娘だな……
俺にロリ属性はないが、健全な気持ちで見とれてしまう。
でも何か口調、変じゃないか? 僕っ子でもなさそうだし。
……キュイ~~。
俺の近くまできて女の子は掃除機を停止させ、
床に転がる、亀の湯謹製の洗い桶をチラリと一瞥した。
「で、見たんか、小僧……」
「えっ、見たって何を、お嬢ちゃん?」
ぺたぺたぺた、裸足の足音が広い大浴場に反響した、
俺の前に女の子が仁王立ちする。
「もう一度聞く、正美のアレ、見たんか?」
小学生の女の子とは思えないドスの効いた声色。
「ひっ!」仁王像のような迫力に思わず後ずさる。
肘が濡れたタイルに触れる、ヤバい! 俺は裸のままだ。
ゲシッ!!
「あひゅう!!」
グリグリグリグリ!!
女の子の生足に踏みつけられてるぅ!!
俺の…… 俺のぉ!! ノオオオオッ。
声にならない咆哮が漏れ出した。
電気あんまの要領で、幼い女の子に刺激を加えられる。
虫けらを見るような視線で、俺を見下ろしたまま、
女の子は信じられない行動に出た。
帯を解き、勢いよく法被の前をはだける。
「小僧、お前を試したる、もしも反応したら不合格じゃ……」
女の子は法被の下には何も纏っていなかった……
俺は下からのアングルで、女の子を見上げる体勢だ。
全てが嫌でも目に入ってしまう。
……上のあんな部位や、下のこんな部位まで。
先程の彼女の足音が、混乱する頭の中で繰り返された、
ぺたぺたつるぺた、って。
風呂用コンタクトをしていた事が、本当に良かったのだろうか?
激しい背徳感の中で自問自答する。
……見え過ぎちゃって困るの!状態だ。
やばい! デルタフォース隊のチャックノリス少佐が、
俺の脳内に出動命令を出してしまいそうだ。
ロリテロリストを掃討せよ!!って。
おっぱい星人の新しい扉が開いてしまいそうだ。
「小僧、もう全部吐いて、楽にならんか? ほれ、ほれっ!
どちらにしても、お前は亀の湯の呪いに犯されておる、
いい加減に観念せい!!」
俺を弄ぶ小さな足、まるで独立した生き物みたいに足指が動く。
「おふうううっ!」
……もう限界かもしれない。
今までのおっぱい星人としての思い出が走馬灯の様に蘇る。
……放課後の保健室で、偶然みてしまった女教師の胸チラ。
小学生の俺はまだ、おっぱいソムリエとしての経験が浅く、
ブラカップのサイズまで特定は出来なかった。
今の俺だったら、アンダーもトップも特定出来たのに。
……それ以外にも、まだまだ心残りがある。
「こ、う、い、ち……」
薄れゆく意識の中で、誰かに呼びかけられた気がして、
声の方向を見る、暖かい光が差し込んでいる。
俺は全てが真っ白な部屋に一人佇んでいた。
「あなたは誰?」
逆光で顔は見えないが女性が立っていた。
神話の女神様のような出で立ちだ。
「あなたは女神様なの……」
「今は言えないの…… でも康一をいつも見守っているわ」
「俺はどうしたらいいんだ、このまま負けるしかないの?」
女神様?は慈愛に満ちた声で、俺に語りかけた。
「康一、まだ倒れちゃ駄目、あなたの救いを求めている人達が、
まだ大勢いるから……」
「あなたのために、聖なるおっぱいを用意したの、
どちらか選びなさい……」
そう言って彼女は胸元を開いた、おっぱいを見ても、
邪心は全く起きなかった、逆に心が浄化されるようだ。
「これはEカップのおっぱい……」たわわな爆乳がまろび出す。
彼女が白い胸襟を閉じ、再度、胸元を開いた、
……それは奇跡のような光景だった。
「これはDカップのおっぱい……」程よいサイズの巨乳が、
ぷるるんと顔を出す、どうしてサイズチェンジ出来るのだろう?
これも神様のなせる技なのか。
……究極の選択だった、どちらも甲乙付けがたい。
世間一般に爆乳といえるのはEカップ以上だろう、
グラビアアイドルでもマストなサイズだ。
おっぱいソムリエの検定でも、正解はこちらで間違いない。
しかし、試験に合格するだけでいいのだろうか?
けして通ぶるつもりでは無いし、Eカップファンを愚弄する気もない。
だけど俺の記憶に焼き付いた、最高のおっぱいがあるんだ。
誰のものかは定かでない、いつ見たのかも分からない。
そのおっぱいを裏切ることは絶対に出来ない、
それが俺のおっぱい星人としての、漢の矜持だからだ。
「Dカップのおっぱいを選びます……」
……迷いはなかった。
力強い俺の答えに、おっぱいの女神(?)様は微笑んだようだ。
まばゆい光の中で一瞬だけ顔が見えた、
俺の知っている誰かに似ている気がした。
……そのまま彼女は光の潮流の中に消えた。
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「!?」
俺は我に返った、目の前には勝ち誇った表情の女の子、
腕組みをしたまま、電気あんまを継続していた。
くちゅくちゅと水っぽい音が、室内に響きわたる。
俺は彼女に向かって叫んだ。
「お前に絶対に屈服しないぞ、俺にはおっぱいの神様のご加護がある!!」
「あまりの刺激に、精神がおかしくなったか……
たわけめ!! 足では生ぬるい、特別にアレを使ってやるわ!!」
俺から生足をどけ、脇にある掃除機を手に取った。
「……まさか、嘘だろ」
キュイ~~ン!!
激しい音を立てながら、モップ部分が高速で回転し始める。
イソギンチャクのお化けみたいな部分を、俺の前にかざした。
……あんな物に吸い込まれたら、一巻の終わりだ。
「安心しろ小僧、儂にも武士の情けがある、
一瞬で終わりにしてやるから、安心せい……」
女の子の顔が妙に輝き、妖艶な笑いに歪むのが分かる。
……そして一気に回転する先端部分を。
「や、やめろおっ!!」
次回に続く!!