表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/20

胸いっぱいの愛を。

「ワ・レ・ワ・レ・ハ・オッパイセイジンダ!」

 ……はっ! 意識が飛んでいた。

 僕は今、UFOに拉致られていたの?

 片手で喉元をチョップしている自分に気付いた。

 洗い桶の不思議なイリュージョンを目撃したショックで、

 我を忘れて、ベタなものまねに現実逃避してしまった。

 誰も見ていないのに一人、赤面してしまう。


 あわてて荒息鍵(アラムスキー)型UFOの所在を探した。

 どうやら未確認飛行物体は不時着したみたいだ。

 気絶している康一の身体に黄色い洗い桶が被さっている。


「……良かった、いやいや!良くない!良くない!

 康一、しっかりして!!」

 肩をつかんで揺り起こそうとしたが、思い止まる。

 ……脳震盪を起こしている疑いがある時は。

 小学生の頃、康一と参加したボーイスカウトの

 キャンプでの救護訓練を思い出した。


「確か、意識がない人を揺すっちゃ駄目だ、

 呼吸や脈を確認するんだ……」

 床に横たわる康一の腕を取り、まず脈を確認する、

 大丈夫だ! 規則正しく脈動している。


 ……次は、呼吸だ、

 康一の顔をこんなに間近で見る機会はない、

「まつ毛、こんなに長かったっけ……」

 幼馴染みでずっと一緒だけど、すごくドキドキしてしまう。


「何、考えてんだ、こんな時に不謹慎だぞ……」

 でも今の自分もまっ裸、気絶している康一も裸。

 こんな状況で意識しないほうが無理!無理だよぉ。


 両手で顔を覆い、真っ赤になりながら躊躇してしまう。

 頭隠しておしり隠さず状態の僕は、さぞかし滑稽だったばずだ。

「康一、弱虫でごめん……」

 その時、救護訓練の記憶が脳裏に蘇ってきた。


 ……あの日、康一が僕に言ってくれた言葉。


「正美! お前、ビビりだから、いっつも俺に甘えてくるよな……」


「えっ、康一、甘えん坊の正美は嫌いなの?」

 そうだ、いつも康一の後ろに隠れていた、

 僕がいじめられた時も、家の事で泣いていた時も、

 康一は僕のこと、守ってくれた。

 昔からずうっと、甘えさせてくれた暖かい背中。


「馬鹿! お前を嫌いなわけねえだろ、いくらでも甘えていいぞ!」

 やさしく微笑ながら、こんな僕を受け入れてくれたよね。

 康一にもしもの事があったら…… そんなの絶対に嫌だ!!


 僕は決意した、目の前の康一は苦悶の表情を浮かべている、

 顔色も青白く、額には脂汗が流れていた。

 汗は大浴場の熱気だけではない、素早く呼吸を確認する、

 呼吸はあるが身体に触れていないのに熱が伝わってきた。


「急いでアイシングしなきゃ、でも康一を動かすわけにはいかない。

 どうすればいいの?」

 営業時間中なら助けを呼ぶことも出来るが、

 いまは合間の休憩時間中だ、家族も近くにいない。

 ……だから僕も入浴したんだ。

 慌てて辺りを見回すが、氷のう替わりになる物は見当たらない。

 氷でなくても頭を冷やせて、柔らかい枕みたいな物、

 ……急いで康一を助けなきゃ、手遅れになる前に。


「あっ!!」

 あった!僕は天啓のように閃いた。

 持っているじゃないか! 自分自身に この身体に!!

 そっと康一を床に横たえて、準備に取りかかった。


 洗い場の前に立ち、鏡に写った自分を見つめる、

 鏡の中にはもう一人の正美じぶんが立っていた。

 普段は男装に隠されている、均整のとれた体軀、

 胸のふくらみに手をかざす、掌におさまらない位だ。

 ……指の間から桜色の突起が顔を出す。

 赤ちゃんが初めて口にする大事な部分。


「おっぱいを持っていること、今まで嫌だった、

 どんどん重くなって、不自由で、僕を縛り付けて、

 こんな物、なくなっちゃえばいいのにって……」

 指先で二つの突起を優しく撫でる。


「でも違ったんだ、康一は言ってくれたよね、

 俺はおっぱいが好きだって、それに……」

 大浴場で鉢合わせした時の情景を思い出す。


(何で俺の理想が分かった? 色!艶!張り!()()()

 最高のおっぱいじゃないか)って!

 ただの杞憂だったんだ!!

 乳輪の大きさに悩んでいたのが馬鹿みたい。


「決めた!このおっぱい、ぜんぶ康一の為に使う、

 甘えん坊の僕を守ってくれたお礼に!!」

 今までコンプレックスだった事が腑に落ちた、

 マイナスがプラスに転換した瞬間だ。


 *******


「ちべたっ!!」

 洗い桶に溜めた冷水にタオルを浸し、それをおっぱいに当てがう、

 もともと脂肪組織の多い乳房は冷えやすい、そこを利用するんだ。

 一番敏感な乳首が急に冷やされ、固くなるのが感じられる。

 康一の為に我慢、我慢だ。


「……よいしょ、と」

 康一の両脇に手を差し込み、後ろから上半身を持ち上げる。


「やばっ!! 洗い桶が落っこちちゃう……」

 勢い余って、康一の大事な所を隠す桶が外れそうになるが、

 ぎりぎりの所で何か(?)に引っ掛かっているみたいだ。


「危ない、危ない……」

 慎重にいかないと駄目だ、介助の経験がある人なら分かるが、

 気絶したり、寝たきりの人を持ち上げるのは一苦労だ、

 せっかく冷やしたおっぱいが火照らないように気を付ける。


(むぎゅ♡)

 康一の頭をおっぱいの間に挟む、氷のう替わりだ、

 患部も冷やせて、柔らかい枕にもなる、一石二鳥だ。

 これぞおっぱい氷のうでアイシング!! なんちゃって。

 予想どおり、康一の脂汗が引き、顔色が良くなっていく。


「よし、このまま続けなきゃ!!」

 しかし問題発生だ、自分と康一の間にはタオルがあるが、

 薄々で、時折動く康一の頭が固定出来ない。

 このままではうまく冷やせないよぉ。

 後ろからだけでなく、頸部の首も冷やさなきゃ、

 それには顔面を挟んで固定する必要がある!

 仕方ない、奥の手を使うしかない、すっごく恥すかしいケド……

「えーい、ままよ!!」

(むぎゅ♡むぎゅ♡)

 恥ずかしいので誰にも言えない固定方法を使った。

 康一の為に頑張るって決意したんだから僕、負けない!!


 次回に続く!!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ