女子高生になっていいの?
「えっ、康一も今日から転校だよ、聖胸女子高等学校に……」
今、何つった? 俺の聞き間違えか…… 難聴に気を付けなきゃ。
「ほら、これ教科書、学校案内も読んどいて……」
「うがあっっ、書いてある事が意味不明すぎる……
それに何で俺まで、女子高に通わなきゃいけないんだっ!!」
学校案内のパンフレットを、ビリビリに破きそうになったが、
正美の困り顔が視界に入った俺は、その怒りを必死に堪えた。
俺達は今、亀の湯ロビーにある応接スペースに集合していた。
差し向かいのソファーに、岩ばあちゃん、にゃむ子さん、
そして俺の隣に、聖胸女子高等学校の制服を着た正美が座っていた。
「……お祖母ちゃん、康一に転校のこと、言ってなかったの?」
「…………」
孫である正美に厳しく咎められるが、お祖母ちゃんの返事がない。
「岩ばあちゃん、寝たふりしても駄目だよ!! 今日が転入なのに、
初日から遅刻なんてみっともないよ、僕、困るんだけど……」
正美に、おばあちゃんと呼びかけられたのは、傍らの美少女、
ゆっくりと、船を漕ぐような仕草で、前後に身体を揺らしている。
サラサラの長い黒髪が半開きの口元に掛かる、まるでお人形さんのようだ。
「おぉ、いつの間にか寝ておったのじゃ、年寄りは疲れやすいでのぉ……」
まるで別人格ばりに、可憐な容姿と不似合いな言葉が飛び出す、
アニメの吹き替えに例えると、ロリ系美少女役の台本がそっくり、
老婆役と入れ替わったみたいだ、でも声は年相応の少女なんだよな。
俺もようやく慣れたけど、最初はすいぶん驚いたもんだ……
「まあまあ、岩さんも悪気があったわけじゃないし、にゃむ子も謝るから、
コーちゃんもまさみんも、許してもらえるかな?」
「まあ、にゃむ子さんがそういうなら勘弁してあげてもイイよ……」
正美が不服な表情で、しぶしぶ了承した、
「じゃあ、全部丸く収まったね♡」
喜びのあまり、にゃむ子さんがソファーから上半身を乗り出した、
前屈みになったブラウスの胸元が、ちょうど俺の目線の対角線上だ……
瞬時にロックオンしてしまったのは言うまでもない。
ゆったり目のブラウスの胸元、にゃむ子さんの形の良いおっぱいが、
ブラに包まれて深い谷間を作ってい……
あれっ、俺の見間違いか? 思わず自分の瞼をこすってしまう……
「全然、収まってない!! 俺を忘れてるだろっ、俺──三枝康一だよ!
それに正美はいいとして、外見も全て男の俺が女子校に通えるわけないだろ、
普通に考えて変だし、たとえ入りたいって言っても門前払いがオチだ……」
にゃむ子さんの溢れるような笑顔と、前屈みの胸元に釘付けになり、
あやうく誤魔化されてしまうところだった……
でも、にゃむ子さんの胸元に感じた違和感は何だ?
違和感の正体を探るべく、俺の脳内ニューロンが活発に活動を始めた。
接続を司るシナプスの形が増減する「シナプスの可塑性」が始まる。
おぱソムとして、まだまだ駆け出しの俺だが、おっぱいソムリエ一級なら
100メートル先のターゲットにヘッドならぬ、チェストショットが可能だ。
狙撃とか物騒な話ではない、目で孕ます!ケフンケフンもとい、
おっぱいのサイズ特定が、正確無比に出来るんだ、この技能を俺は極めてみたい。
それが亡くなった父親へ、せめてもの恩返しになると信じて……
静かに目を閉じて、先程の場面を思い出す、古いフィルムの逆回転のように
記憶が巻き戻る、俺はまだ走馬灯を見たことはないが、今際の際で
同じ風景が見えるのかもしれない。おっぱいティスティングの始まりだ。
「ゲッツセット!!、モンダリング開始スタート」!!
ちゅっぱ、ちゅっぱ、
俺の口が無意識に形を作る…… 赤ちゃんがおっぱいを吸う仕草になり、
突き出した両手が、虚無空間で、わしゃわしゃとせわしなく蠢いた。
あの地獄のようなおっぱいブートキャンプが、俺に与えたもう唯一のギフト、
苦しかったシャドウおっぱいも、この特殊性癖技能開発の為にある。
にゃむ子さんのおっぱいに顔をうずめた、楽しかった大運動会!
心で俺が叫ぶと、俺ちゃん小学校脳内在校生が答辞で返してくれた。
(楽しかったおっぱいパン食い競争!)
それだけじゃない、にゃむ子さんのおっぱいに関する記憶、全てを脳内再生する。
見える、見えたぞっ、Gカップおっぱいの残像思念が、
乳頭の描くアール曲線の軌跡までハッキリ見える……
カシャカシャ、チーーン!!
これが揉んだリングだ、索乳さくにゅう完了っ!!
おっぱい鬼教官ビリーの日に焼けた笑顔と、
サムズアップのハンドサインが俺の脳裏に浮かぶ、
(グッジョブ!コーイチ、カミカゼオッパイボーイ……)と、
「何んだと……にゃむ子さんがノーブラ?」
俺は自分の索乳結果に驚きを隠せなかった……
「こ、康一、大丈夫? そんなに女子校に通うのが嫌なの……」
あっ、やらかしてしまったか、
おっぱいティスティングは、諸刃の剣だってこと忘れていた。
おっぱいソムリエの実技を見たことがないと、ドン引きされてしまう……
紳士の諸君も充分気を付けてくれ、大切な家族や友達を失ってしまうことになる。
「ち、ちがう!! 禁断の花園、全男子憧れの女子校に、男がたった一人なんて、
入学出来るなら、ぜひシテみたい、そうだ、この命を引き換えでも、
何だってする、それ何てラブコメ?状況なんて、ぜったい美味しすぎるぜ……」
また心の声がダダ漏れになってしまった……
「じゃあ、康一は何で、そんな態度なの?」
にゃむ子さん以外の二人が、汚物というより産廃を見るような視線になる。
「だってぇ……根本的に無理だろ、男のまま、女子校に入学なんて」
自分が悪いのに何故か逆ギレ状態の俺、一応、普通の男子高校生なんだよ、
みんな、忘れてるだろうけど……
「コーちゃん、ぶんむくれにならないの、カワイイほっぺ、
指で突っついちゃうぞ♡」
俺達を静観していたにゃむ子さんが、ソファーの隣に座り、
俺の頬を指先で突く仕草をする、肩が触れるほど距離が近い……
何だろう、柑橘系のすごくいい匂いがする、胸ばかりに視線が行ってしまうが、
にゃむ子さん、顔もタイプなんだよな、キュートな中に見え隠れする
華やかな大人の表情…… ふにゅっと笑った口元から覗く白い八重歯。
はっ、ヤバい、見惚れて本題を忘れる所だった……
「なあに、コーちゃん? にゃむ子の顔ばかりじっと見てんのぉ」
そのまま腕にしがみついてきた、柔らかなふくらみに埋没する感触、
俺の肘に、にゃむ子さんのおっぱいが当たってるぅ!!
「な、何で、にゃむ子さん、ノーブラなの!!」
腕の感触で、先程のおっぱいティスティングの結果が正しいことを理解した。
「ノーブラが聖胸女子高等学校に入学するとき、大事なことなんだよ……
学校紹介にもしっかり書いているから、もう一度よく読んで♡」
えっ、何でノーブラと女子校入学が関係あるの、
訳が分からないよ、にゃむ子さん……
次回に続く!!