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おっぱいんのんでねんねして♡

「も、もう駄目だよぉ……」

　ぐったりと露天風呂にある寝湯に横たわる。

　にゃむ子さんに身体の隅々まで

　泡まみれにされた後、外の露天風呂に移動を促されたんだ。

「にゃ、にゃむ子さん、その後ろ手に隠した物は何なの！？」

「うふふふっ、バレちゃったか♡　

　まさみんって、しばらく女の子を封印してたでしょ……

　さっき身体のあちこちを触って、にゃむ子、気付いちゃったんだぁ、

　このままじゃ、まさみんが本当の女の子に戻れないって……」

　……そうだ、僕は大きな秘密を抱えている、

　胸の奥が早鐘のように高鳴った、まだ康一には知られていない、

　もし康一の耳に入ったら、僕のこと嫌いになるのかな……

　そんなの絶対に嫌だ！！

「……まさみん、泣いてるの？」

　にゃむ子さんが心配そうに僕の顔を覗き込む、

　僕は自分で泣いている事に、気付いていなかった……

　頬から顎のラインにそって涙が流れるのを感じた、

　止めどなく溢れる涙を止められない。

「まさみん、ゴメンね、にゃむ子嫌な事しちゃった？」

「ち、違うの、にゃむ子さんのせいじゃない、

　僕が勝手に思い出しちゃって……」

「……まさみん」

「何で僕はこの家に生まれたのかなぁ、男の格好した僕じゃなく、

　もっと可愛い女の子として、康一と出会いたかった……

　そうしたら僕じゃなく、私って胸を張って言えたのに、

　子供の頃から僕は康一の隣にいた、それだけで良かった。

　いつも一番の理解者は僕なんだって……

　だけどおっぱいの成長に合わせて、僕の中で康一への気持ちが、

　どんどん膨らんでしまうんだ、でも絶対に言えないんだ、

　言ったら、この関係が壊れてしまうから……」

　駄目だ、止められない、嗚咽したまま自分の気持ちを吐露してしまう。

「まさみんは、本当にコーちゃんの事が好きなんだね……

　でもどこがいいの？　お調子者で、色んなおっぱいに目が眩んで、

　本当にまさみんの事、大事にしてるかなぁ……」

「……にゃむ子さんは知らないんだ！　康一の良い所、いっぱいあること、

　そりゃ、おっぱいが三度のご飯より好きだし、一人暮らしでお金が無いのに、

　食費を削って、えっちなおっぱい本の為に、断食して即身成仏化しかけたけど」

　あれっ、自分で言ってて分からなくなってきた、康一の良い所って、どこ？

「まさみんって、本当に可愛いね、そんなにムキにならなくても平気だよん♡

　好きになることに理由なんて後付けでいいんだよっ、

　それが女の子の特権なんだから……」

　そうだった、僕は康一が大好きだ、子供の頃から変わらない、

　たとえどんなに離ればなれになっても、康一を見つける自信がある。

　だけど一体どうやって伝えたら……

「にゃむ子さん、僕はどうしたらいいんだろう？」

「大丈夫ぅ！！　にゃむ子におまかせあれ、

　じゃ～～ん、特殊アイテムだよっ！！」

　あっ、さっき後ろに隠した物だ、一体何のアイテムなの？

「はい、はい、キャップを外してぇ、とろとろの液体ぉ

　容器に移すのぉ！」

　ん、にゃむ子さん、それをどうする気？

「まさみん、そのマットに横になって♡」

　い、いつの間に、寝湯にエアーマットが敷いてある、

　亀の湯の寝湯は浅いタイプで、寝転がった背中にお湯が流れて、

　全身を温めることが出来る、気持ちよくてついついうたた寝してしまう。

「こ、こう？」

　ふに、ふにゅん、

　エアーマットにおそるおそる横たわる、中に含まれた空気がお湯で暖められ、

　そのまま横たわるより全然、気持ちいいかも。

「じゃあ、タオルを顔に被せるね……」

　にゃる子さんが暖めたタオルを僕の顔に被せた、

　まるで美容室みたいだ、顔中が暖かい……

「じゃあ、はじめよっかぁ、にゃむ子のすぺしゃるコース♡」

　にゃむ子さんの弾けるような声だけ聞こえる、何が始まるの？　

「とろんとろんの液体を、まんべんなく塗り込んでぇ」

　あれ？　僕の身体に、さっきの液体を塗るんじゃないの？

「ふふっ、この部分にもたっぷり塗っとこっ♡」

　にゃむ子さんの謎の行動が分からないよお、いったい、どの部分なのっ！！

「ここはまさみんの大切な部分専用だからねっ

　念入りに……」

「にゃ、にゃむ子さん、僕の大事な部分って、何なの？」

　たまらず裏返った声が出てしまう、動揺が隠せない……

「動いちゃ駄目だよぉ、患部にうまく塗り込めなくなるから、

　まさみんは長い間、自分を押さえ込んできたから、その固まった身体を

　ゆっくりと解きほぐさなきゃダメなんだ、これは岩さんにも頼まれた事なの」

　ええっ、お祖母ちゃんが公認なんだ……　それなら仕方がないな、

　家長であるお祖母ちゃんの言うことはいつも正しいから。

「まさみん、にゃむ子エステシャンの資格持ってるから安心してイイよ」

　それを聞いて少し安心した、エステなら大丈夫だろう、

　にゃむ子さんはウチに来る前に、女性専用のエステサロンで働いていたんだ。

「お待たせ、じゃあいくよっ！！」

　にゅっちゃ♡にゅっちゃ♡

　ひゃあっ！！　こ、この感覚は手じゃないよ、にゃむ子さん

　にゅるん♡　にゅるん♡

　さらにこの感触はっ、間違いない、自分の身体にオイルを塗っているんだ。

　にゃむ子さんの二つのふくらみが、手のひらの替わりなのっ！

　本当に女性専用のエステシャンか、あやしいよお……

「あうあうっっ……♡」

　びくん！びくん！

　驚きのあまり、自分とは思えない素っ頓狂な声が漏れ

　思わず喉が痙攣してしまう。

「まさみん、これは必要な儀式なの、我慢して、にゃむ子も苦しいの……」

　それは嘘だっ！！　視界を奪われても分かるよ、にゃむ子さん、

　吹き出しそうになるのを堪えてるでしょ、絶対に楽しんでるよぉ……

「あ、バレちゃった、だってぇ、久々に可愛い女の子を堪能出来るんだよ」

　まっ、まさかにゃむ子さんって、女の子もいける人なのぉ！

　身の危険を感じて身体が硬直してしまう……

「うそ、嘘よん、にゃむ子はいたってノーマル、

　この果実は殿方だけの物だから♡」

　はあっ、安心した、女の子に戻る前に新たな扉が開いちゃう所だった、

　顔のタオルが取り払われ、やっと自由に呼吸が出来る、ふうっ……

「まさみんがあんまり可愛いから、意地悪しちゃったのぉ、

　冗談はこれくらいで、本当の儀式を進めるね」

　にゃむ子さんが大きな瞳を細めながら真面目な面持ちになる。

「このオイルは、岩さんの故郷にある神聖な場所しか入手出来ないの。

　岩さんはもとより、コーちゃんにも関係ある事だけど、

　まさみんは一(・)番(・)軽(・)い(・)から、これだけで大丈夫なんだって……」

　初耳の事ばかりだ、お祖母ちゃんは何で今まで教えてくれなかったんだ、

　そして僕に今後、何をさせようとしているんだろうか？

「……にゃむ子さんにも関係あるんじゃない？」

　駄目だ、余計な事まで口走ってしまう……

「そうだね、まさみんには隠し事出来ないなぁ、

　私の両親のことで、岩さんにも迷惑かけたから……」

　にゃむ子さんが憂いを帯びた表情になる。

「にゃむ子、今が一番幸せなんだ、岩さんや亀の湯のみんなに囲まれて、

　ここで働ける、そんな他愛のない日常が本当に嬉しいんだぁ。

　そしてね、まさみんが本当の妹みたいに思えるの……」

　にゃむ子さんが何だか眩しく見えた、僕に取ってもかけがえのない人だ。

「あっ、まさみん、こんなお姉ちゃんがいたら大変だって顔してるぅ！！」

「そんな事ないよ、毎日飽きないかなって、にゃむ子さんといると、

　驚きの連続だから……」

「こらこら、人を疫病神みたいに言わないのぉ！！」

「きゃあっ！！」

　にゃむ子さんが身体全体でぶつかってくるが、お祖母ちゃん謹製オイルのせいで、

　エアマットから揃ってにゅるん、と外に転げ落ちてしまう。

「あ～～、床がオイルまみれになっちゃった、これが終わったら、

　開店前までに掃除が大変だよ、にゃむ子さん、どうしようか？」

　立ち上がろうとするのも難しい、二人でもつれ合ってしまう、

　ぬるぬるでバラエティ番組のオイル風呂みたいだ。

　思わず、にゃむ子さんに救いを求めると、

　こちらにウインクで答えてくれた。

　何か名案が浮かんだようだ……

「にゃむ子におまかせあれ♡」

　そうして僕たちは、無事儀式を終えた……

　＊＊＊＊＊＊＊

「何で、俺が風呂の床掃除までしなきゃいけないの……」

　康一が業務用の掃除機を掛けながら、ブツブツ文句を言う、

　目ざとく見つけたお祖母ちゃんが、少女の声で叱責を飛ばした。

「こらこら、小僧、こっちにブラシを掛け切れてないのじゃ、

　初日から手を抜く出ないぞ！！」

「合法ロリばあちゃん～、だって全部、俺一人で外も風呂も掃除してるんだ、

　少しは休ませてよ……」

「ただ飯を食わせるほど、ウチに余裕はないのじゃ、

　でばでば働かんかい、ごちゃごちゃ抜かすなら

　また掃除機で、小僧の粗末なモンを吸ったろか？」

「ひえっっ！　それだけはご勘弁を……」

　康一が業務用掃除機を放り出して、相棒の場所を押さえる。

「うふふ、コーちゃんたら、よっぽど相棒を掃除機に吸引されたのが、

　トラウマだったみたいねっ、ねえ、まさみん♡」

　この平和な時間がずっと続いたら良いのに……

　僕は追いかけあう康一とお祖母ちゃんを見て、何故か泣き出しそうになった。

「まさみん、大丈夫？」

　にゃむ子さんが隣で声を掛けてくれる。

「うん、大丈夫だよ、にゃむ子さん、これは嬉し涙だから……」

　この何気ない光景を目に焼き付けておこう、

　平凡だけど、二度と訪れないこの一瞬を……

　次回へ続く！！