おっぱい嫌いな人なんているの?
「ダックスフントさん、もう許してぇ、
ワンワンビスケットはもう品切れだからぁ……」
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はっ、夢? 僕はうなされていたのか……
枕元の目覚まし時計が、いつの間にか床に転がっていた。
身体中が汗ばんでいた、夢のせいなのか……
そうだ、夢に違いない、そう思いたかった、
あんな恥ずかしい事が、僕に出来るはずない。
ぼんやりとした頭が次第に鮮明になり、鮮明な記憶が蘇る、
かあっ、と頬が熱くなる、それでなくと熱っぽくて、
肩の辺りに妙な違和感を感じるのに……
裸の時間が長くて、風邪でも引いたんだろうか?
「ど、どうしよう、本当の事だ、恥ずかしくて康一の顔、見れないよ……」
にゃむ子さんの機転で、フルコースまで行かなかった(はず?)だが、
どちらにしても恥ずかしい事には変わりがない。
学校休んじゃおっかな……
康一は、偽おっぱいと信じているみたいだから、
その点は問題はないんだけど。
「まさみん、コーちゃん、降りてきて、朝ご飯出来てるよん♡」
あわわわわ…… そうだった、康一はウチで同居するんだっけ、
じゃあ、いきなり顔会わせなきゃいけないよ……
今朝の朝食当番はにゃむ子さんだ、日本家屋の特徴で、
食卓のいい匂いが、自分の部屋まで微かに漂ってくる。
家自体が呼吸しているみたいで、一年中寒暖が過ごしやすい、
反面、隙間も多くて、隣の音も丸聞こえなのが、
プライバシーの観点からは駄目だけど……
「まさみん、遅刻しちゃうよ!!」
「はい、はいっ! 今、降りるから、ご免なさい」
時計を拾い上げると…… しまった、電池が外れて止まってたんだ、
いつもより寝坊しちゃった…… 急がなきゃ!!
慌てて身支度しようと制服を探すが、いつもの場所に掛けてない。
「あれ? 制服が無い、どこ行っちゃったのかな、間に合わないよ!!」
仕方が無いので、パジャマのまま部屋を飛び出した。
「おはよう、まさみん♡」
「正美、飯が冷めるのじゃ、早く食え……」
にゃむ子さん、お祖母ちゃん、こ、康一、おはょぅ……」
駄目だ、まともに康一の顔が見れない……
俯いたまま、自分の席に座る。
「ま、正美、その髪、ど、どうした?」
えっ、僕の髪って?……
恥ずかしさも忘れて顔を上げた、目を丸くした康一の顔があった。
周りのお祖母ちゃんと、にゃむ子さんは至って通常営業だ……
康一だけ、何をそんなに驚いているんだろう?
自分の頭に妙な違和感を感じて、首を振ってみると、
僕の動きに合わせ、ワンテンポ遅れて何かが揺れた。
「何だ、これ?」
頭のてっぺんに手を伸ばすと、明らかに普段と違う長い髪の先端に触れた。
「何、これ! 僕の髪じゃない……」
驚いて思わず席を立つ、リビングにある姿見に見慣れぬ自分が写る。
後ろで引っ詰めにしたポニーテールの髪型、
後頭部で揺れていた正体はこれだった。
「えっ、ええ~~~!! 僕の髪型が女の子になってるよっ……」
ややこしいが僕はもともと女の子だ、理由があって普段は男装している。
康一には絶対秘密なのに、これじゃあ、お終いだ……
「コーちゃん、まさみん、お岩さんと相談して決めた事があるの。
今回の件で、呪いの解毒が大切な事が分かったでしょ……
で、二人に提案なんだけどぉ、まさみんのおっぱいも、
絶対に必要なんだから、この際、普段も女の子の格好で過ごすって、
どうかにゃ♡ その髪の毛は高級ウィッグで、まさみんが寝ている間に
こっそり装着したんだよ……」
昨日は康一の解毒もあり、ショックと疲れで昏倒したように、
眠っていたんだ、首周りの違和感はこれが原因だったのか?
「僕が、女の子になってもイイの……」
にわかには信じられない、お祖母ちゃんとにゃむ子さんを交互に見つめ、
真意を探る。
「無関係の小僧を巻き込んでしまった責任は、取らなきゃアカン
だから正美は、心配せんでもいいんじゃぞ……」
「お祖母ちゃん……」
涙が溢れそうになるのを必死で堪える、こんな日がくるとは信じられない……
男の子として周りを偽ってきた罪悪感と、自分自身の苦悩が思い出される。
ありのままの性別で過ごせるなんて!!
「あれっ、コーちゃん? さっきから黙ったままだけど……
はは~~ん、さては、美少女まさみんに見惚れてたんでしょう♡」
「お、俺が? 中身はあの正美のまんまだろ、それに偽おっぱいだし、
俺様が見惚れる訳ないぜ……」
「嘘、嘘!まさみんのブラで目隠しプレイされて、相棒共々、ご満悦だった件、
にゃむ子、知ってんだからぁ♡」
「そ、そそ、それが何か問題でもあるのか、アレは解毒の一環で、
し、仕方が無かったんだ、俺は不可抗力で無罪でしょ、
ねえ、そうでしょ、合法ロリ祖母ちゃんも何か言ってよ!!」
「こっちに来ないで、へ、変態、お兄ちゃんは少女の敵よ!!」
必死に同意を求める康一に対して、お祖母ちゃんが震え声で応じた。
どうみても純粋無垢な少女にしかみえない……
「あ~~!! こんな時だけ、都合良くロリ少女に戻らないでよ、
岩ばあちゃんっ!!」
皆の喧噪の中、僕は一人、多幸感に包まれていた、子供の頃、
誕生日のケーキを一人で半分食べた時みたいだ……
でも待てよ、ふと疑問が浮かんだ、
僕が女の子に戻れるのは、すごく嬉しいけどその間、学校はどうする?
この格好で登校したら大騒ぎになるのは確実だ。
「まさみん、この制服着てみて、きっとびっくりしちゃうよん♡」
にゃむ子さんはごらんの通り、トラブルメーカーで騒がしい。
だけど僕に嬉しいサプライズを、いつも与えてくれる人だ、
多少の事では驚かないぞ、と思ってもそれを軽々と越えてくる。
「……この制服は、聖胸女子高等学校、確か、にゃむ子さんの母校だよね」
「ピンポン♡ピンポン♡ にゃむ子のJK時代のお下がりだよ!」
手渡された制服は、お下がりとは思えない程、綺麗な状態で、
スカート、セーラーブレザーの上に、ちょこんと
チェックのネクタイが置かれている。
「にゃむ子さんの女子高制服と言うことはGカップ用だよね、
正美が着たら、おっぱいの部分が結構余るんじゃないか?」
空気を読まない康一に、何かキツイお灸を据えたくなったが、
迂闊なお仕置きは、ご褒美に変換する輩なので、
そうなったらそれで面倒くさいので、今回は完全に無視しよう。
「その事なら、心配ご無用よん♡ その制服には面白い仕掛けがあるから……」
にゃむ子さんが意味深に笑った、これは何かよからぬ事を企んでる顔だ。
「お前達にやって貰いたい事ある、
朝食を済ませたら、番台前に集合じゃ」
「お祖母ちゃん、僕たち学校へ行かなきゃ……」
「今日は休むのじゃ、学校には儂が連絡しておくでの……」
「もう何が起こっても驚かないよ、なあ正美!」
康一は異常な程、順応性が高い、これも海外を旅していた経験からなのか?
学校での康一は、わざと優等生の型に自分を落とし込んでる気がする。
僕にだけ、時折、本音の康一を見せてくれる。
「細けえ事はいいんだよ!!」って……
そんな康一を見ることが一番嬉しいんだ。
「さて、食事も済んだし、一番風呂にするか、
にゃむ子、正美を大浴場に連れて行くのじゃ」
「らじゃ!らじゃ! まさみん、一緒に行こ♡」
「じゃ、俺も一緒にお供します、にゃむ子さん!!」
「コーちゃんは今回、お留守番よ、番台前のロビーに掃除機掛けててね♡」
「ええっ、そんなぁ……」
康一の落ち込み具合が、傍から見ても半端無い……
まるで世界の終わりに直面した、人類ただ一人の生き残りみたいだ、
ちょっと可哀そうかな……
*******
かぽーん…… ちょろちょろ
「ねえねえ、にゃむ子さん、なんで康一だけ、仲間外れにしたんですか?」
洗い場の仕切り越しで、にゃむ子さんに声を掛ける。
桶を片手に立て膝のにゃむ子さん、ぱしゃぱしゃと背中にかけ湯をしている。
それにしても日本人離れしたプロポーションだ……
こちらから横向きに見える、おっぱいの存在感が凄い。
にゃむ子さんの胸はGカップだが、大きいだけの
だらしないおっぱいではない、一度、部屋で触らせて貰った時も、
揉み返しの弾力が心地よく、同性の僕でも驚いたんだ、
磁石が吸い付いたかのごとく、己の手のひらが離せない手触りだった。
亀の湯大浴場は男湯、女湯があり、時間で左右が入れ替わる方式だ。
今日の女湯は牛乳風呂がメニューだ、隣の男湯は薬膳風呂だ、
また早朝で営業時間外なので、それまで自由に使用できるんだ。
「コーちゃんがいたら、出来ない話もあるって、お岩さんがね……」
お祖母ちゃんがそんな事を…… 康一に聞かれたらマズい事って何?
急にネガティブな感情が湧き上がり、しばらく考え込む。
寝不足もあってか、椅子に座ってウトウトしてしまう……
「……んっ、はあっ、何?」
しばし寝落ちをしていたみたいだ……
身体を触れられた感覚で目を覚ます。
わしゃわしゃ……
むにむに♡
「わっ、わっ、何、何っ、えっ! にゃむ子さんなの?」
「ごめ~んね、お岩さんの言いつけで、まさみんの身体を清めさせて貰うよん♡」
ごしごしごしごし……
「ふぁぁぁあっ!!」
湯気でよく見えないが、背後から両手で鷲掴みにされ、
泡まみれ状態な僕。手の動きが凄いよお、
ああっ、何故、こんな事するの……
「あの制服を着る前に、隅々までよ~~く洗っちゃうから 覚悟してね♡」
えっ、ちょ、何処まで泡まみれにするの?
そこは敏感すぎるから駄目!
「にゃ、にゃむ子さあ~~ん……」
女の子に戻れそうなのは、嬉しいけど、
どうなってしまうのか、かなり不安だよお!!
前途多難な僕。
かぽーーん!! ちょろちょろ……
次回に続く!!