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クララとヌイココのパラレルワールド  作者: 死馬奇大造
不動のパラレルワールド
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『天使とマフィア』

 ここはヌイココの過去。当時のヌイココは10歳の女の子で、実家近くの小学校に通っていた。そして、その中でも彼女は、超優等生のスーパーエリートだった。とはいえ身体能力を除いては、だ。


 この頃のヌイココは、現代のような軍隊で格闘部中隊長になるほどの力は備わっていなかった。なんならむしろ、スポーツが苦手なくらいだった。


 そんな運動音痴のヌイココは、読書が好きでよく図書館へ通っていた。図書館では、いつも同じ椅子に座って、気になった本を片っ端から読んでいた。しかし、この日のヌイココは、本じゃないものに目を惹かれていた。


 ━━━━━━それはとある女性だ。


 図書館の窓から差す太陽の光は、その女性を照らし、触れれば消えてしまいそうなほど、儚く美しい。そう、その姿はまるで天使だった。


 当時、10歳のヌイココは、大人しい女の子で、興味が湧いたものに対しては、とことん追求する性格だった。なので、その女性が余りに綺麗過ぎて、図書館を出た後も、尾行してしまった。そして━━。


「あんた、いつまで私に付いて来るつもり? 私はこれからとっても危険な場所へ行くのよ。死にたくなかったら直ぐに帰りなさい」と言われてしまったヌイココ。


しかしヌイココは、その女性に対して「危険なら何故、お姉さんはそこへ行くの?」と言い返した。すると女性は「仕事よ。とっても大変なね」と言い放ち、どこかへ行ってしまった。


 その時、晴れていた空は曇り始め、とても不穏な空気に包まれていた。


 ━━━━━━プロツェターニエの裏社会『チェム・マフィア』。プロツェターニエの闇に潜む犯罪組織で、プロツェターニエの町のひとつである『プローハシティー』にアジトがある。


 そして、何たる偶然か、ヌイココが通っている学校や実家、それに先程までいた図書館、これらのあるヌイココの生まれ故郷が、何とこのプローハシティーであった。


 更に先程、ヌイココと出会った女性は、その犯罪組織、チェム・マフィアのアジトへ向かっている途中で、付いてきたヌイココに対して、危険だと警告したのだった。


 しかし女性は何故、その場所が危険と知っておきながらアジトへ向かっているのか━━。


 実はあの女性、当時のプロツェターニエ軍隊の人間で、プローハシティーにチェム・マフィアのアジトがあると発見し、その組織のボスである"オーチェン"を捕らえてくるよう軍隊から指示を受けていたのだ。


 それで、その女性はチェム・マフィアのアジトと思われる建物の前までやってきて、タバコをふかしていた。


(━━数々の犯罪に手を染めている極悪組織のチェム・マフィア。奴らには、プロツェターニエの警察も手を焼いていて、遂に我々軍隊にまで仕事が回ってきた。ったく、私は忙しいってのに、極道の相手とはな。


 それにしても、チェム・マフィアの(やから)も不運だよな。何せ襲撃するのが、この私"ミハイロワ"なんだからな。とはいえ、1人ではないがな━━)


 ━━ミハイロワ(当時)。真っ白いロングヘアで全てが美しく天使のような姿をしているクールな女性。身長は約175センチ辺りでよくタバコを吸っている30歳。プロツェターニエ軍隊格闘部の大隊長で軍隊最強クラスの力の持ち主。


 ミハイロワは、吸っていたタバコを口から離し、煙を吐きながら口笛を吹いた。すると、どこに潜んでいたのか、軍隊の一般隊員が30人くらい、ぞろぞろとその辺から出てきた。


 そしてミハイロワは再び、タバコをふかし、口から煙を吐いた、その瞬間「いけ!」と声を発した。すると、約30人の一般隊員達が一斉にアジトと思われる建物に突入した。


 建物内では、中にいたチェム・マフィアの人間と突入した軍隊の隊員達が乱闘し、続々とお互いの人間が倒れていく。


 しかしそんな中、ミハイロワはチェム・マフィアのボスであるオーチェンの部屋の前まで来ていた。そして入口の扉を蹴り開け、オーチェンと対面する━━。


 ━━オーチェン。赤髪のボウズの男。身長は約180センチ辺りで顔半分にタトゥーを入れている29歳。チェム・マフィアのボス。


「チッ、あのなぁ軍隊さんよ……俺らは確かに悪人だが、お前らも大分、クソ人間だな。この奇襲の荒々しさ、俺らと何も変わらんな。(はた)から見たら、どっちがマフィアか分かんねぇぞ。


 てかなんならまじで、お前らより俺らの方がよっぽどマシな人間なんじゃねぇの? なぁそう思わないか?」


 ミハイロワは、意味のわからないことを言っているオーチェンに対して「何が言いたいんだよ」と言った。するとオーチェンは━━。


「知っているだろうが、この世界には、たくさんの人間が生きてる。そしてその中には、お前らの様な、いわゆる善人という奴らを、悪人として捉えてる人間もいるんだよ。


 でも、そりゃそうだろ? 善人と言われる正義は、ある人にとっては悪なんだからよ。つまり、まあ何が言いたいのかと言うとな"悪は正義、正義は悪"ってわけよ」


 長々と理解に苦しむ話をされ、イライラしたミハイロワは「だから結局、何が言いたいんだよ!!」とキレた。すると再びオーチェンが━━。


「ならバカにも分かるよう言わせてもらうが……チェム・マフィアのボスである俺、オーチェン様は悪人にとってのヒーローなんだよ!! だから、こんなとこで捕まる訳には行かねぇぇぇ!!」


 そう言いながらオーチェンは、手元にあった謎のボタンを押して、いきなり窓へ向かって走り出し、体を丸めて勢いよくガラスに飛び込み、外へ出た。


 するとミハイロワも、絶対に逃がさんと言わんばかりに、オーチェンが飛び込んだ窓から、後を追うように、外へ出た。するとその瞬間━━アジトの建物が爆発した。

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