『悩みそれぞれ』
ここは『スヴェト・ハイスクール』。クララが通っている学校だ。しかし、クララには友達がおらず、虐めを受けていた。その為、クララは稀にしか学校に行けず、家に引きこもってはゲームばかりしていた。
けれど、今日のクララはいつもと何か違った。いつもは学校に行く度、憂鬱そうに嫌々と行くのだけれど、今日は元気よく家を飛び出し、走って学校へ向かった。そして━━。
「あれ? お前はもしや…… 金とゲームしか取り柄のない根性無し人間のクララじゃねーか! おいおい、わざわざ俺様に金を届けに来てくれたのか?! ほんと助かるぜぇ! 丁度、金欠で困ってたんだよぉ!」
(━━こいつは僕が学校に来る度、力ずくでお金を奪ういじめっ子の"ピィヴィディ"。僕はピィヴィディに虐められ、学校を休むことが多かったが、昨日、僕はヌイココに出会って変わったんだ。
僕もヌイココみたいに人を助けられる強い人間になりたい。だから、僕は今日からどんな敵にも逃げずに立ち向かう。そう決めたんだ! そして、その第一歩が━━)
「ピィヴィディィィ!!! お前だぁぁぁぁ!!!」
━━ピィヴィディ。スキンヘッドの大柄男。身長は約180センチ辺りで顔に多くのピアスを開けている18歳。ハイスクール・スヴェトの生徒。
クララはいじめっ子のピィヴィディに向かって拳を振るう。するとピィヴィディは、まさか、あの気弱なクララが立ち向かってくるなど、予想もしてなかったのか、顔に一発喰らう。
しかし、クララのパンチはヒットしたものの、ピィヴィディには効いていなかった。そして、クララはカウンターパンチを腹に喰らってしまい倒れる。
「何に感化されたのか知んねぇけど、お前が俺様に歯向かうなんて、百億年早ぇんだよ!━━金は貰ってくぜ」
それでピィヴィディは、倒れているクララからお金を奪い取り、去っていった。クララは痛みと悔しさで涙が止まらず、その場で長い間、泣き崩れていた。
━━━━━━そして帰宅後。
「生き生きと朝、学校へ行ったと思えば、泣きじゃくって帰ってきて、何を言うのかと思ったら、"僕は強くなれないんだ"って…… はぁ、あのねぇ、クララ。弱い人間がそう簡単に強くなれるわけないでしょ! 昨日、クララを助けた子は、あんたの何倍も努力して、強くなったんだよ! だから、その子はプロツェターニエの軍隊にいるんでしょ? 違う?」
そう、クララは昨日、ヌイココに出会った事と会話した内容を母親に話していた。それでクララは正論を言われ、黙り込んでいると母親が━━。
「でもまあ、すぐには強くなれなくても、諦めずに努力すればきっと憧れる、その子みたいになれるわよ。そのための第一歩を今日、踏み出したんでしょ? だったらメソメソ泣いてないで前を向きなさい! クララ!」
そう言われるとクララは、急に元気になり、いきなり"軍隊に入る"と言い出した。すると母親は少し呆れた表情で、笑みを浮かべていた。
(━━僕はなんて情けないんだ。ピィヴィディに立ち向かって、負けて。いや、負けたことは別にいいんだ。でも僕が悔しいのは、ヌイココに出会って、僕まで強いと勘違いしてしまったことだ。何もしてないくせに気持ちだけは、いっちょ前で、ほんと恥ずかしいよ、僕は。
でも、ママに言われて分かったんだ。確かに今の僕は弱い。けど今までは、ピィヴィディに対して、逃げることしか出来なかった僕は今日、立ち向かえた。これは僕にとって、とても大きな成果なんだ。そして、これからも一歩ずつ着実に、強くなる!━━そう決めたんだ)
『いち! に! いち! に! いち! に!』
━━ここは『プロツェターニエ軍事基地』。プロツェターニエ軍隊の隊員が訓練をしたり、作戦会議を行ったりする場所だ。
そして、今まさに軍隊の隊員達が訓練を行っている。
「おい、そこ! 動きが遅いぞ。もっと早く判断し、次の行動に移れ。それと、お前! 先程のトレーニングの追込み、とても良かったぞ。だが、まだまだ力を出せるはずだ。これからも努力するように」
指導してる彼女はヌイココ。格闘部中隊長として、一般隊員を教育している。すると中隊長のヌイココに、来訪者が来ていると隊員から連絡があったので、ヌイココは軍事基地の応接室へ向かった。
応接室には、何やら怪しい雰囲気の男が、椅子に座ってヌイココが来るのを待っていた━━そして2人は顔を合わせる。
「あなたは、実家の執事の……"デジュニ"? 私に一体何の用ですか? しばらくぶりの立ち会いなのに申し訳ないですけど、訓練最中なので、早めに終わらせて頂きたいのですが」
━━デジュニ。黒髪長髪の男。身長は約175センチあたりで暗い性格の40歳。ヌイココの実家の執事。
デジュニはヌイココに急かされると「旦那様からの伝言をお伝えに参りました。それだけお伝えして、すぐに失礼します」と言い、ヌイココに父親の伝言を伝えた。
(━━"話がしたい、家に帰って来なさい"これが伝言だった。
私は幼い頃から実家を出て、軍隊の寮で暮らしていた。しかも、実家にはここ数年帰っていない。
というのも私の家系は、元々プロツェターニエとは違う島国の"プリロダ"という場所で暮していて、両親はプロツェターニエ出身ではなかった。そして、両親の生まれ故郷であるプリロダは昔、プロツェターニエに戦争で負け、何人もの人が帰らぬ人となった為、プリロダの民はプロツェターニエに良いイメージを持っていなかった。
しかし何故か、私の両親はプリロダの因縁の敵であるはずのプロツェターニエに移住し、私を産んだ。その結果、家族で唯一、私だけがプロツェターニエ出身になったと、教えられた。
でも私は、両親の故郷のプリロダを襲撃したであろうプロツェターニエの軍隊に入隊する事となり、私は負い目を感じて、実家を飛び出してきた。だけど両親は、私が軍隊にいる事に対して、悪く思う様な人ではないけど、私自身が会いにくくて……)
ヌイココはデジュニに「伝言は受け取ったけど帰る気はないって御父様に」と言い訓練へ戻っていった。