『夕焼けの写真』
ここは『プロツェターニエ』。この世界で最も大きい島国で、沢山の人々が暮らしている。そして、プロツェターニエの町のひとつである『スヴェト』には、気弱な少年が住んでいた。
彼の家はとても裕福で、毎日家に引きこもっては、ゲームばかりしていた。しかし、そんなある日、彼の母親がこう言いました。
「ねぇ"クララ"! 今日は夕日がとても綺麗みたいだから、海に行って写真を撮ってきてくれない?」
しかし彼は、ゲームをやりたいと言い、断りました。すると母親はそれに激怒し、彼に「じゃあ今日の夕飯は無しよ。"働かざる者食うべからず"だからね!」と言いました。
彼はそう言われると、泣く泣く夕日の写真を撮りに、自転車で海へ向かいました。
━━クララ。白い肌に金髪のショートヘアの気弱なメガネ男子。身長は約165センチ辺りで青色の瞳をしている16歳。ハイスクール・スヴェトの生徒。
クララは自転車で風を掻き分け、道を進み、海が少しずつ見えるところまでやって来た。その時、クララの瞳の中には、太陽と光る海が映る。そして、こう声が漏れる"なんて綺麗なんだ"と。
(━━僕は基本的に外には出ない。でもこの景色を見るためなら、ちょっとくらいなら、本当にたまになら、外に出ても良いかなと思えた。それ程に綺麗なんだ。そう、だから僕は目を奪われてしまった。自転車に乗っていることを忘れてしまうくらいに……)
海に夢中になっていたクララは、前方不注意状態になってしまい、前が急な坂道になってることに気づかなかった━━そして。
「う、うわぁぁぁぁ!!! 落ちるぅぅぅぅ!!!」
クララは物凄い勢いで坂道を落ちていく。しかし、止めようにも方法がない。このままでは道を曲がることが出来ず、真っ直ぐ崖に突っ込んでしまい、海へ落ちる。クララ、一体どうする……。
(━━どうしよ、どうしよ、どうしよ。海に魅力されていた僕は、坂道に気づかず落ちる。でも止まれない。このままじゃ僕は海に投げ出されてしまう。無理やり体を動かして、自転車ごと転倒、もしくは自転車を乗り捨ててジャンプをすれば、助かるかもしれないけど、僕は怪我をするのがとても怖いんだ。どうしよう……)
クララには勇気がなく、助かりたくても恐怖心に襲われ、何も行動を起こすことが出来なかった。そして残り数メートルになりクララは死を覚悟した、その時だった━━。
「何をしてるっ!!! 死にたいのかっ!!!」
そう声が聞こえた後、クララは何者かに真横から飛び蹴りされ、すぐそこの草むらに自転車ごと吹っ飛んだ。
飛び蹴りをした、いや、クララを助けた謎の女はクララの元へ向かうが、クララは気を失っていた━━そして数十分後。
(━━ん、んー……風が気持ちいい。目を開けると木や葉っぱが見えて、草の揺れる音がする。ここはもしかして天国……? 遂に死んでしまったのか。いや、毎日引きこもり、親に迷惑ばかりかけていた僕が死んで行く場所は恐らく、地獄だ。ということは、僕はまだ死んでいないのか……? じゃあ何故、僕は助かったんだろう)
クララは寝ていた体を起こし、周りを見渡す。するとクララの瞳の中には、夕日と赤く光った海が映る。そしてクララは口を開き、"綺麗"と声を発しようとした瞬間、別の"綺麗ね"という声が、背後から聞こえてきた。
クララは声の主を確認する為、振り返る。するとそこには、クララを飛び蹴りして助けた女の子が、木の枝に座っていた。
「もしかして君が僕を……? ありがとう! 助かったよ!」
しかし、女の子は呆れた様子でクララを見ている━━そして。
「私は"プロツェターニエ軍隊格闘部中隊長のヌイココ"よ。今日はたまたまこの町、スヴェトをパトロールしていたから、あなたの叫び声を聞いて、助けることが出来たけど、もし私がこの町に来ていなかったり、あなたの声に気づけていなかったら、あなたは死んでいたかもしれないのよ! そこんとこ分かってる?!」
━━ヌイココ。小麦肌に茶髪のオールバックの強いクール女子。身長は約160センチ辺りで緑色の瞳をしている18歳。プロツェターニエ軍隊格闘部の中隊長。
クララはヌイココと名乗った女の子にガチガチの説教を受けた。それとヌイココは小さい声で「全く……このパラレルワールドで良かったわね」と言いました。
しかし、クララは上手く聞き取れず、ヌイココに聞き返すが、ヌイココは「何でもないよ」と言い、少し悲しげな顔をしました━━。
するとクララは、何かを察したのか、ヌイココを励ますように、夕焼けの写真を撮ってその場でプリントし、その写真をヌイココに渡しました。そしたらヌイココは少し微笑みながらこう言った。
「素敵ね。あなたの名前は何? この出会いはきっと素晴らしい世界を創る。だから知っておきたいの」
そう言われるとクララは、自分の名前をヌイココに教えた━━そして、2人はお互い"よろしく"と言い、別れたのであった。