双子の妹は聖女様、姉である私は魔力なしの出来損ない悪役令嬢、妹には苛められ、両親には使用人扱いされた私は王太子殿下まで妹に奪われ婚約破棄されたそんな私のとった復讐の方法とは?
「魔力がないですね」
「え?」
「イシェル様は魔力がありません」
私は十歳の時の魔力判定の時、天国から地獄へ人生がはじまってしまいました。
私はイシェル・カーライル。侯爵家の長女、双子です。妹はアリエル。
十歳で我が国では魔力判定をうけますが、私はゼロでした。
貴族でゼロというのはふつうありません。平民は魔力なしがほとんどですが、貴族はほぼ99%魔力があります。
出来損ないといわれるのが魔力なしです。
そして妹は魔力が無限大、これも貴族では非常に珍しい、百年、いえ五百年前に出た聖女イーリス以来でした。
ええ、そこから私の人生の滑落ははじまりましたわ。
「お姉さま、ここが汚れてますわ。掃除も満足にできないなんて、さすが出来損ないの魔力なしですわ!」
「ごめんなさい……アリエル」
「ごめんなさいではなく、申し訳ありません、アリエル様ですわよね? お情けで置いてもらっている身分なのに! 本当に悪役令嬢にふさわしい方ですわ」
私はあの時から家の使用人となりました。
いえ、さすがに十歳の子供を放り出すわけにもいかず、両親は困ったみたいですが、世間体を考えて侯爵令嬢のままでもいられず、中途半端においておかれることとなりました。
魔力ゼロの私は悪役令嬢と世間からいわれているようです。
でも私は悪役といわれる悪さはなにもしてませんわ。
「ほらほら、ここも汚れてますわ!」
「申し訳ありません」
「お姉さまなんて貴族じゃなくて、平民になったらよろしいのに!」
「アリエル、これも気の毒な我が娘だ、責めてやるなお前は聖女候補なのだから」
「でもこれと双子のせいで、私は社交界で影口をいわれますのよ、私の子供が生まれたら魔力なしになる可能性があると!}
私はモップをかけながら、お父様と妹のやり取りを見ています。
世間体、それだけで妹をたしなめるお父様、お母様は愛人のところにずっといきっぱなしでした。
私という魔力ゼロを生んだのはお前の遺伝のせいだと責められやけになったのです。
「……これのせいでお母様が!」
「一応お前の姉だぞ、アリエル」
「……」
私とて好きで魔力がゼロなわけではありません。
偶然とはいえ神様もひどいことをするとは思います。
私と妹は十歳までは割と仲がいい姉妹でした。でもあれからお母様が半家出し、ほぼ戻らず、そして、魔力ゼロの子供が生まれたことで我が家は好奇の目で見られ、妹はひねくれ、父は私のせいで母が出て行ったと責めました。
私のせいといわれましても……。
あれから五年が経ちました。
私は掘っ立て小屋のような物置に住まわされ、そして家事掃除洗濯、すべてをさせられ、使用人にも下にみられ、命令される毎日です。とうとう父には無視されるようになりました。
薄いスープとパンの夕食をとりながら、今日も一日が終わり、泣けてきました。
妹はいつもこれのせいでお母様が出て行った、好奇の目でみんなみて陰口を言うと責めます。
でも……聖女候補、無限大の魔力を持つ乙女、と彼女はみなにほめたたえられて、天狗になっているところもありました。
おねえちゃま、と後をいつもついてくるかわいい子だったのに。
ああ、せめて魔力さえあればよかったです。
「……ああ、聖女としてアリエルが決定したのですね」
使用人たちの噂話で聞きました。
そして私は聖女候補から聖女となったアリエルが神殿にいくのを使用人の噂話で聞いたのです。
世界は本当に残酷でした。
冷たい風に吹かれ、今日の私はほうきで庭を掃くのです。
「……多分あの子が王太子様の婚約者となるのでしょうね」
はあと息を吐いて考えます。今は冬、春になると私たちは十六になり、結婚適齢期です。
聖女でも婚姻はできるのであの子が多分婚約者となるのでしょう。
でも……この後待ち受ける出来事により……。私が。
「お前が神託で王太子殿下の婚約者候補となった」
「え?」
「早く支度をして、王宮に行くのだ、なぜ魔力なしが……」
ある日、父から、私が王太子殿下の婚約者となったのを聞いたのは春の日でした。
神殿の神託で婚約者は決まるのです。主神オーディンの神託は絶対。
だが対外は貴族の高位の娘でした。
どうしてアリエルじゃないんだとぶつぶつと文句を言う父、婚約者として魔力ゼロを送り出すのがとてもいやそうです。
確かに魔力ゼロなら、魔力ゼロが生まれる可能性がありますから、それも仕方ないことです。
私は飾り立てられ、そして王宮に向かう馬車に乗せられました。
信じられない思いで王宮につくと、ぶすっとした表情の王太子殿下と陛下が待っていました。
「どうして魔力なしなんかが……」
ぶつぶつと文句を言います。確かにそうなんですけど、いやそうな顔で手をとるのはやめてほしいです。
神託が間違っているかと問い合わせを何度しても私の名前がでたそうです。
アリエルと間違っているのかと思われましたが、神に間違いがあるわけがないと神殿長がいわれましたそうです。
そこから、私の王宮の生活がはじまりました。
でも……。
「魔力なしがどうして婚約者に」
「王太子殿下がお気の毒ですわ」
いつものように貴族の令嬢方の陰口がはじまります。
私はこの王宮でも異質でした。館でいたときとおなじようにいじめられていました。
私とて諦めたくはなかったので、いろいろと勉強して努力しました。
だが魔力なしというだけでほぼ捨て置かれたのです。
「イシェル、神託が間違っていた、お前との婚約を破棄する! ここに宣言する!」
「え?」
「アリエルが真実の私の婚約者だ、お前が婚約者となったのは間違いだ!」
数か月後、私は高らかに王太子殿下に婚約破棄を宣言されました。
横にはアリエルがいて、聖女の正装でうれしげにわらっておりました。
同じ顔、同じ声、同じ体つき、でも彼女のほうがいつも自信たっぷりでした。
「……私との婚約は間違いだったと」
「そうだ、神殿長が神託の間違いを認めたのだ、ここから出ていけ!」
「……」
私は衛兵に引きずり出されました。私は何もしておりません。
魔力ゼロに生まれたというだけで虐げられてきて、また今度はこんな形で裏切られました。
「……魔力なしがそんなにだめなのですか」
雨が降っていました。冷たい雨の降る中私は外に放り出されましたわ。
ああ、こんな扱いをされることを私は何もしておりません。
ええ。私は何も悪いことなどしておりません!
母が出て行ったことを私のせいと思い、妹があのかわいい幼いころの妹に戻ってくれるのではないかと思い、父がイシェルと優しく微笑みかけてくれるのではないかと!
そう思ってきたのです。
でもそれは間違っていたことに気が付きましたわ。
私は……魔力なしです。
でもそれはいけないことですの?私のせいではありませんわ!
私はここから、妹とそして父、王太子殿下に復讐するための牙を研ぐことにしました。
そして……。
「……神殿長、私と王太子殿下の婚約は間違いだったのか?」
「いや私は……」
「どうなんだ?」
私はたくさんの民衆を率い、神殿に乗り込んでいました。
私は髪を切り、そして冒険者の一員となり、剣の腕を磨き、今は金のランカーといわれるギルド一の剣士となっておりました。
鍛練を繰り返し、使用人扱いされたことがよかったのか、体力はありましたので、死に物狂いで覚えました。
あれからもう五年、私は二十一になっていました。
長かったですわ。長かった……。
「どうなんだ?」
「あれは王太子殿下と陛下に間違いを認めろと責められたせいだ! アリエルを婚約者としろと、アリエルは殿下とできていたのだ」
「言質はとりました」
かなり私はすさみました。でもギルド長になぜか拾われ、私の魔力ゼロの境遇の話を聞いて協力してくれることになったのです。神殿長に剣をつきつける私はあの時の面影すらなかったので、名前を名乗っても彼は気が付かないほどでした。
魔力ゼロに対する貴族たちの扱いは民衆、そしてギルドの人たちを怒らせる要因となっていましたので。
「さあ、間違いを認めた、神に逆らったということだな。さあ、これからどうなるかはみなに任せる」
私はギルドから根回しし、反乱を起こし、そして神殿に攻め入りました。
ええ、聖女である妹は王太子妃となり、そしてここにはいなかったのですが、どうしても神託が間違いかどうか知りたかったのです。
そして……。
「……お前は!」
「ごきげんよう、王太子殿下、そして聖女様、ごきげんよう」
私は高らかに宣言します。王城に攻め入り、そして魔法の腕をみがくことすらせず、怠惰な生活を送ってきた貴族たちは剣の腕を磨き、アンチマジックの魔法道具を研究したギルド員たちの敵ではありませんでした。よほどバカにする貴族が憎かったのか。
「ごきげんよう、アリエル様」
「……お前は!」
「はい、懐かしいですわね、ケイン様、そしてアリエル」
私は剣を手ににっこりと二人に笑いかけました。陛下はもう脱出された模様、逃げ足は速いですわ。
二人は抱きしめあい、そしてこちらをにらみます。私が悪者のようですわね。
ああ、反乱軍のリーダーは悪者ですか。
「さて、これから魔力ゼロたちの復讐劇がはじまりますわ」
「お姉さま、どうして!」
「さあ、どうしてでしょうね」
初めて媚びるように私を見るアリエル。ああ、どうしてと聞くのなら、どうして私を五年も放っておいたの? この後はお父様に復讐するのか、それが悲しい……。
謝ってくれても心に響かない、もし、もし、本当に謝罪し、悪かったと言ってくれたら生命は助けようと思っていた。
でも落ちた剣をとりこちらに向かってくる王太子を切り捨て、泣き叫ぶ妹が魔力なしのくせにと叫んだ瞬間私は……。
私は泣き笑いの表情で妹を見ましたわ、殺せ、殺せ、魔力なしを差別し続けた王族を殺せ、という仲間の声が聞こえてきます。
私は剣を構え……そして。
「世界は本当に悲しいですわね」
私は父の首を手に笑います。
ええ、私はすべてを殺し、そしてすべてに復讐をしました。父はなすすべもなく私に倒されました。謝ることすらせず娘に剣をつきつけた父。
これから魔力なしたちがこの国を動かす時代がやってくるのです。
ええ貴族はすべて淘汰されるべきなのですわ。
でもどこかそれが悲しい、復讐は復讐を呼び、ええ私はただ家族に愛し愛されたかっただけなのですわ。
「イシェ、どうした?」
「なんでもありませんわ、ユージェル」
ギルドで同期の同じランクのユージェルに私は笑いかけました。父の首を放り出し、そして彼に縋り付き泣きました。
ああできたら愛してほしかった家族に……。
私は彼の腕の中で泣き続けました。銀の月だけが私たちをみておりました。
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