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5 ■読み飛ばし可■ VS力士(前編)


 ソメナイの行動記録 

 2332年11月23日午前8時58分



(さてと)


 不染井は右手でフィッシュテールしながら、相手を見る。

 すでに戦闘開始の合図はなされていたが、カラテの力士は、大股、わずかに前傾した仁王立ちの姿勢のまま動かない。


(本業とは違って、スタートと同時に来ないんだな)


 などと頭の片隅で思いつつ、その思考を置き去りにするような速度で、次の瞬間、不染井は真正面から無敵山に突っ込んでいった――いや、3歩目で地面を踏み叩くようにしてストップ。

 するとまとっていた『殺気』は止まらず、彼女の形を保ったまま、『幻影』となって無敵山に進み、斬りかかる。

 

 スキル『殺気放さっきばなち』だ。


 これは元来『攻撃しようとする相手の殺気を鋭敏に感じ取り、その方向、タイミングを予測する』という守備側のテクニックを逆手にとったもので、数十年前、生まれつき殺気が消せないというハンデを負ったブラジル国籍の侍が、苦悩の末、「だったら、殺気だけをぶつければ、敵は『斬りかかる俺の幻影』を見るのでは?」と発想し、実現した妙技である。

 『殺気による幻』は攻撃者の姿瓜二つだが、あくまで幻覚であり、実体をもたないから、飛蚊ひぶん症のように目障りなだけで実害はないし、幻覚の輪郭には輝くような特殊なエフェクトがまとわりついているため、落ち着いて観察すれば真贋しんがん判定はそこまで難しいものではない。面白いのはこの『幻』が、受け手だけではなく、出し手や第三者――観客の目にも見えることで、ゆえに『魅せ技』としての人気も高い。

 もちろん、使い手の『技量』とフェイントとしての『効果』は比例するから、換言すれば、幻影が現れるか否か、さらには引っかかるか否かで受け手のレベルが窺い知れ――つまりは試金石にもなる。


 無敵山は突進してきた不染井の幻を一顧いっこだにしなかった。


 見えていない、ということはない。

 先に述べたように、不染井が見ている幻は、そもそも無敵山が感じた殺気である。

 斬りかかった幻は次第に薄くなり、その剣が力士に届くまえに消えた。


(さすがに代表クラスともなると引っかからないか)


 そう感心しつつも、すでに不染井は動いている。

 『殺気』の陰に隠れるように、無敵山に向かい再突進していた。

 今度は殺気どころか気配も足音も消していたが、力士はきちんと反応した。

 間合いに不染井が足を踏み入れた途端、手を出してくる。

 その、まともに食らえば一発で終わりそうな、無敵山のストレート気味の右の張り手を、不染井は会釈するように、内側へとかわす。


 壁のない壁ドンみたいな状況。


 そこから不染井を抱くように右腕を曲げこむには時間が掛かる――そう思ったのか、無敵山の二の矢は、左腕だった。

 いや、そもそも彼は左利きである。

 ワンツーパンチの要領で初手よりもさらに勢いをつけた左の張り手――を、不染井は充分引きつけてから寸前で身を屈めて避け、そのまま、無敵山の大きく開いた両足の間をベースボーラーのようなスライディングでくぐる。そのようにして力士の股下を通過する途中、不染井は仰向け気味だった身体を反転させて腕立て伏せのような体勢になり、先行する両足をピンと伸ばし、その爪先で強く接地し、ブレーキを掛ける。それでも勢いが良かったせいか、少し滑って、ちょうど力士の股下を抜けきったところで、ようやく停止する。その際、慣性に任せて膝を縮めていたため、クラウチングスタートのような格好になっている。

 すでに不染井は上を見ていた。

 そちらには力士の意外と引き締まった臀部でんぶ――いや、さらに上方。スライディングの寸前、力士の左をかいくぐる際に、中空へと投げ放っていたガンブレードがあった。

 刃は、上空5メートルの辺りか、くるくると回転しながら、放物線の頂点を迎え、そろそろ降下を始めようという矢先だった。

 その鏡のように磨かれた刃が、力士のうなじから左の肩甲骨の中間辺りにある白いマークを、一瞬、映した。意外と狭い。さながら湿布のようにも見えた。

「ご注意を」鳥型が警告する。「あのマークから少しでもはみ出てしまうと刃は入りません」

 現実世界でもタップダンスをしながら、3ケタを超える本数の針に、次々と糸を通して、文字どおり『ハリセンボン』のオブジェをつくってしまうほど、手先が器用な不染井である。その手の身体操作には自信があった。

 一方、すっかり不染井を見失っていた無敵山だが、風切り音だろうか、頭上で回転するガンブレードに気づいたらしい。得物さえ抑えてしまえば負けはない――そう考えたのか、力士は消えた相手に文字どおり目もくれず、最優先で、落ちてくるそれを掴もうと腕を伸ばした。その背後から不染井もすでに跳んでいる。バスケットボールのようなリバウンド勝負だったら、彼女に勝ち目はなかっただろう。不染井は力士のマワシのヘリ――そのわずか数センチの幅を踏み台にして、もう一度跳ぶ。これで彼女の身体は力士の頭の高さを越える。だがまだ互いの手と剣の距離で比べれば、力士のほうが近い。なので不染井は『手で掴む』ことを諦める。セパタクローの競技者のように空中で身体を捻り、剣に向けて足を伸ばした。力士の指よりも先に――いや、彼の太い指を蹴り弾きつつ、彼女の右足の甲が一瞬速くガンブレードに触れた。ここでフィッシュテールを発動。無理やり右足の先から太もも、腰を介し、右手に刃を届ける。力士からすれば、2階から降ってきたモチを、後方から飛んできた猛禽類にさらわれた気分だったろう。何が起きたかもまだ理解できていないに違いない――不染井はそんな空想をしながら、屋上からの投身自殺のついでに、たまたま地上を通りかかった人間の脳天に鉄槌パンチを落とす気概で、ちょうど眼下に見える、力士の、肩口のマークに刃を突き立てる。


 ――が、刃は力士の肉体の表面で止まってしまった。


 無敵山は不染井の姿を確認することもなく、肩をいからせ、首をひねるだけで、周辺の筋肉を隆起させ、マークの形をゆがめたのだ。その結果、刃が、マークからわずかにはみ出てしまった。


(あれ? ひょっとして、誘われてた?)


 力士の『使い魔』は不染井には見えないが、だからといって、それが存在していない証拠にはならない――そんな当たり前の事実に今さら思い至る。

 はがね――というより、分厚いタイヤみたいに弾力性に富んだ肉体によって、ガンブレードの剣先が勢いよく弾かれた。思いがけない外力をもらった不染井はとっさにネコのように回転して、弾かれた反動をいなす。なんとか空中にいるあいだに体勢を整える。けれど、片足が地面についたときには、眼前、もう、無敵山の、壁のような背中が迫っている。死角に逃げたつもりだったが、誤魔化せなかった。力士は後ずさりするようにして不染井をしつぶしに来た。


「なに、その技!」と、はしゃいだ声で叫びつつ、後ろに跳びのがれようとした不染井の背に違和感。

 いつの間にか透明な、感触としては水袋のような柔らかな壁が出来ている。それが不染井の後退を阻む。

「おっとっと……!」

 またもやバランスを崩しかけ、反射的に体勢を保とうと後ろに引いたカカトに、さらに奇妙な感触。何かを踏んでしまった。


(あ、ごめん……)


 理由は分からないが、思わず、そう声に出さずに謝ってしまった不染井は、すぐに思考を戻し、顔を相撲取りに向けたまま、鏡のように磨かれたガンブレードの刃面で足元を確認した。不染井のカカトは『徳俵とくだわら』を踏んでいた。知らぬ間に土俵が出来ている。


「遅くなりましたが」鳥型が出現して早口で伝えてくる。「現在、無敵山関のフィールド・スキルが発動しています。不染井様は勝負が終わるまでこの『土俵』と定義された領域の外に出ることは出来ません。いえ、厳密には出来ないのではなく、出たら敗北となりますので、私が気を利かせて柔らかな壁をつくり阻止している――とご理解ください。当然ながら、無敵山関の攻撃により、押し出されることは阻止できませんのでご注意を」

 

(遅いって!)不染井は、けれど、全身に高揚が駆けめぐるのを感じる。


 なるほど相手をエリア外に押し出せさえすればいいのだから、背中を使った攻撃方法も存在するのか、という合点が、さらなる快感を促す。

「弁明させていただきますと」鳥型の声はそんな彼女の思考の中に無理やり入ってくる。「無敵山関のスキル発動条件が『敵――つまり、不染井様の攻撃をその身に受けること』でしたので、これでも最速でございます。それと私がつくった『壁』はあくまでルールギリギリの特例でございますので、これを利用すること――たとえば三角蹴りの足場などには利用できませんのでご了承ください。ちなみに、土俵に足裏以外の部位をつけてしまっても負けにはなりませんので、ご安心を」


 そうこうしている間に、力士の大きな背中がずんずん迫っている。


 この岩壁のような背中をガンブレードで斬りつけても、弾かれるだけで、ほとんどダメージを与えられないことも分かっていたし、先ほどの攻撃も不完全と判定され、力士のエネルギィを奪えなかったから、放出攻撃どころか、それを逆噴射して飛んで逃げることも出来ない。そもそも満足に得物を振るう距離は残されていなかったので、不染井は素直に避けることにした。


 ジャンプ。


 満足に助走も取れない状態から、20段もある跳び箱を飛び越えるような、垂直気味のジャンプで繰り出して、なんとか力士の身体を乗り越える。その際、俯瞰ふかんから、もう一度、力士の首筋のマークを確認したが、筋肉で形状が歪み、波打ち、とても刃を差し込めそうになかった。跳んだことで土俵の広さも確認できたが、二度目の跳躍である。さすがに読まれたのか、着地間際を狙われた。


 力士は今までとは段違いの速度で迫っていて、彼に背を向けた体勢で降りてくる――着地寸前の不染井も、刃をバックミラーのようにしてそれを察知していたから、足裏での着地をやめ、身体を捻り、背中で受け身をとるように反転しながら、その勢いのままノールックで後方へガンブレードを振った。イメージとしては、胴上げされるように天高く打ち上げられたゴルフ選手が、仰向けの状態で落下し、そのまま背中から地面に衝突――という残り50センチほどでスイングを開始。その勢いで回転し、背面、真下にあるボールを打つ、という感じ。


 背を向け、両足着地――と見せかけた、振り向きとスイングが一体となった、斬り上げ。


 力士の股間から入って、腹部、胸部を経由し、肩口まで、ぐーっと一直線で斬り裂ける――そんな期待すらおぼえた渾身の一撃だったが、あっけなくマワシで止まる。

「力の込めやすい、かつ、攻撃範囲の広い『ぎ攻撃』は甘えです」鳥型が現れ、早口で評価を差し込んでくる。「世界トップクラスのプレイヤは、同じ状況なら迷わず『突き』を狙います。理由は二つ。敵に読まれにくいから。そして、突きならば『カウンター』と評価され、威力向上の恩恵が付与されるから、です。どうせ博打をうつなら、ハイリターンを――それが世界上位勢の思考です」

 ごもっともだが、まさかマワシが刃を通さないとは思いもよらなかった――というのも甘えなのだろうなあ、と不染井は思う。


 ともかく、防御が成立したため、攻撃者である不染井にペナルティ。

 一瞬だけ、空中で全身が硬直する。

 通常なら、重力に引かれ、地面に衝突するはずだが、止まる。

 本当に一瞬だったが、その『一瞬』に、無敵山は反応した。

  力士は左手を伸ばし、己の股間で止まったガンブレードをワシ掴みにする。

 ようやく硬直が解け、不染井は地面に足をついたが、その途端に刃を引っ張られる。

 綱引きになれば勝ち目はないが、刃を捨てしまえば、今度は勝ち筋自体がなくなる。

 不染井は、すぐさまガンブレードをフィッシュテール。刃を左手に送る。

 手綱を断ち切られた格好となった力士だが、もう不染井に迫っている。

 り足なのに、巨躯を活かし、一歩一歩が大きい。

 フィッシュテールが遅かったか、慣性でわずかに前方へ引っ張られていた不染井は、迫ってきた力士に、バランスを取ろうと無意識に前に伸ばしていた左腕を掴まれる。

 左ヒジを力士の太い腕と脇腹で挟まれ、抜けない。

 いわゆる、片閂かたかんぬきの状態。

 痛みを感じないゲーム世界である。ただ、ひどくしびれて、腕の力が入らない。

 それは世界的に見ても凄まじいと評価できるほどの腕力で、『強さ』に触れると嬉しくなってしまう不染井は、一瞬、こころよさでうわの空になった。

 その隙を見逃さず、力士は左手でマワシを取るように不染井の右腰――先ほどロールアップしたスカートのウエスト部分を掴んできた。

 組みつかれ、30センチ以上は高いはずの力士の頭部が、不染井の左肩に乗せられている状態。

 同様に不染井の顔も力士の左肩に乗っている――いや、肩の筋肉で埋もれている、という感じだろうか。


(なにこれ、すご、動けないじゃん……!)


 不染井の動揺をよそに、力士は投げに入る。

 左の上手投げ。

 投げられる最中さなか、その流れる視界、揺れる三半規管が、幼少のころ、父親にねだって飛行機ごっこをしてもらった素敵な思い出を呼び起した。けれど、思考自体は冷静で、かつ、その愛おしい記憶が彼女に活力を与えてくれた。


 不染井は、掴まれた左腕、そのヒジ付近でフィッシュテールを発動させる。


 それが与えるダメージはともかく、力士をわずかに驚かせた。

 左腕のフックが緩まる。

 その一瞬に不染井は、干す直前のバスタオルをバサバサと打ち振るように、左腕を引き、じり、引き、捻って、抜いた。

 色気のない痩身が、こういう場面では有利に働く。

 そのまま、刃を身体に伝わせてウエストでフラフープのように回したが、こちらは逃がしてくれない。

 そもそもフィッシュテールには攻撃技としての威力はない。扇風機のプロペラのように我慢ができる。

 力士は一度体勢を整えるように空足からあしを踏んで、投げを中断したが、残った左手で無遠慮に不染井を引っ張っている。

 それら『バランスを整える』一連の動作が『次の投げ』への準備になっている。隙がない。 

 さて、いったん開いたドアが強風に押されて戻され、閉まる――というイメージが役立つか定かではないが、右腰側のスカートをぐっと引っ張られた不染井は、離れたはずの力士の胸板に向かって、引き寄せられる。

 次に両手でスカートを握られたら、もう抵抗は出来ないだろう。

 引き寄せられながら不染井は、差し出される力士の右手を注視した。

 大きな声では言えないが、この局面で――いや、最初から、力士が『投げ』にこだわらず、『張り手』を選択していたら、半拘束されている不染井には、もう、どうしようなかった。だが、力士は『投げ』での勝利にこだわった。そのほうが、より高い『勝利ボーナス』が見込めるからだ。周囲に実力差も喧伝できる。なので、彼の右手は、不染井の顔面ではなく、マワシ――いや、スカートの折り曲げたウエスト部分へと伸びる。


 そこに不染井は左足を合わせる。


 ムエタイの選手が相手のミドルキックに対し、足を上げ、すねでカットする動きに似ていた。

 あるいは馬に乗ろうとして、あぶみに片足を掛けるような体勢か。

 身体の柔軟な不染井はそれよりももっと大袈裟に、大胆に足を上げ、力士の右手に靴裏を合わせる――右手を靴で踏みつける。

 一瞬だけ。

 その接触の瞬間、力士は右手に握力を込めるが、潰れたのは靴のみ。不染井はすでに靴を脱いでいる。彼女は力士の右手を踏み台にして、跳んでいる。もう片方の手でスカートがきつく掴まれているが、ウエスト部分が伸びてくれた。現実世界なら、間違いなく布地が裂けていただろう。


(そもそも脱げる設定にしておけば良かったか~)

 

 だが、うまく、事は運んでいる。

 そのようにして、力士に上から被さるように飛びつく。抱きつく。まるで巨大な赤ちゃんに抱かかえあげられて授乳するような格好だが、彼女の目の前には、力士の左の肩口――うなじから肩甲骨の中間、広がりきった白いマークがあった。

 すでに無敵山は、いったん逃した不染井の左足を捉え、そのまま強引に投げに入っている。

 不染井のほうも、飛びつく前に右手でガンブレードをフィッシュテールし、最小の50センチまで縮めている。

 三半規管が揺れる中、タイミングを測る余裕などなかったが、それでも丁寧に集中して、狙いを定めた。

 右手の手のひらで回していた直径50センチの『円』が回転を止める。

 止めた瞬間から、刃が元のサイズに戻ろうと膨張を始める。

 その膨らんでいく刃の形状をイメージの中で見極めつつ、マークに突き立てる。

 今度は、弾かれず、面白いようにすーっと入っていく――が、投げが成立するのが早かった。


 不染井は土俵に叩きつけられる。


 そのまま力士が全体重を預けたら危うかったが、首に入った刃が気になったのか、ボディプレスを諦め、投げ捨てた感じになったのが不幸中の幸いとなった。

 背中から思いきり地面に叩きつけられた不染井だが、すでに立ちあがっている。

 むしろ、強烈に叩きつけられたことによって、硬いはずの土俵がトランポリンのようになって強引に復帰させられたと表現できるか。

 『手合わせ』を見守っていた他の選手やスタッフなどの『観衆』が「あれ? ソメナイ、投げを抜けた?」と勘違いするほど『一瞬』だった。 

 投げられた不染井自身、「あれ? 私、両足で着地したっけ?」と血迷うくらい『一瞬』だった。

 もちろん、それらは単なる幻想で、実際には背中から土俵に叩きつけられていた不染井は、その衝撃で『背骨を骨折した』――と判定されたらしく、首から下、背中から両足の先まで痺れて、うまく動けなかった。そのまま後方に倒れなかったのは、鳥型のつくったカベが支えてくれいるお陰だ。文字どおり、土俵際に追い詰められた。

 対する力士は肩口に刺さったガンブレードをゆっくり慎重に引き抜こうとする。

 気を利かせた鳥型が刃の表面に目盛りを表示する。およそ293ミリ。あと少しだった。

 ガンブレードを引き抜いた力士は、鏡代わりにするように、数秒ほど刃を眺めたり、ひるがえしたりしていたが、不意に脇に挟み込むと、テコ――いや、カンヌキの要領で、真っ二つに折った。

 折れたガンブレードは『武器破壊成立』と見なされ、すぐに霧散を始めたが、力士は、空気中に漂う、その粒状になった破片をむんずと掴み、まるで塩をくように土俵に放った。

 それがどういうパフォーマンスなのか、相撲にうとい不染井には――いや、実のところ、相撲に詳しくてもその意図は不明だったが、これで彼女には『一度消した、あるいは破壊された生成武器を再生成するには60秒の冷却期間を要する』というルールが適用されることになる。

 不染井は『カラテ(笑)』になったわけだ。


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