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再会
神流は帰郷するレーサーの通る場所で安藤麗子を待っていた。
出待ちのファンが何人かいる。
ここを通るレーサーにプレゼントを渡したりサインを貰うのが彼らの目的だ。
だが、神流の目的は安藤と話をする事だった。
元々、神流はボートレーサーになるため、試験に受かり研修所に入った。
そこで安藤麗子とは同期生だった。
二人にほのかな愛が芽生えた。
しかし、研修中、事故で大ケガをした神流はレーサーになる事を断念した。
安藤が通りかかる。
神流は「麗子」と声をかける。
安藤は驚きの表情を浮かべた。
「惜しかったな」神流が言うと安藤は「練習不足だから仕方ないわ」と答えた。
「次は何処で走る?」
「桐生よ」
「じゃあ、また応援に行くよ」
神流はそう云ってバス乗り場に向かった。
その後ろ姿を麗子は見ていた。