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部屋で休憩をしていると、この部屋のドアをノックする声が聞こえてきた。誰だろうか?
「どうぞ」
そう言ってドアを開け、部屋に招き入れる。
「失礼します。こんにちは、佐倉くん」
訪ねて来たのは、日比谷だったようだ。でもどうして俺の所に…?普段関わりが有るわけではないのだが。
「いきなりで図々しいと思うけど、君を信じて頼みが在るんだ…」
俺の疑問を察したのか、日比谷が答える。
「頼み?頼みって何だ?」
「渡辺さんに付いてなんだけど…聞いてくれるかな?」
「渡辺、か。問題ない、続けてくれ」
どうやら、聞いておかないと不味いようだな。俺の言葉に日比谷は、沈痛な面持ちで話し始める。
「渡辺さんがクラスメイトから疎外されている。皆、渡辺さんを無い者として扱っているか、軽蔑した目で見ているかのどちらかだ。この世界に来るまではそういうことはなかった。このままだと渡辺さんに暴力を振るう人が出て来ても可笑しくない。渡辺さんが勇者ではないのが影響しているんだと思う。でも、僕が渡辺さんの近くにいる限りはそういうことは起きないだろう。一度、クラスメイトに怒鳴ってしまったからね」
「ああ」
「だけど、騎士団長のアルベルトさんが、勇者の中でも戦闘力が一定以上高い人達は直ぐに実践訓練に移る、って言っていたんだ。自分で言うのも難だけどクラスの中で、今のところ一番僕が強い。残念だけど、実践訓練に最初に移るのは恐らく僕だ」
「そうだな」
「うん、そうすると僕は渡辺さんの近くにいることは出来なくなる。だから僕は、君に渡辺さんを守って欲しい。…頼む、僕の替わりに渡辺さんを守ってくれないか?」
なる程、そんな訳があったのか。日比谷は復讐に怯えて動いている俺より何倍も良い奴だ、尊敬するよ。俺としては願ったりの頼みなので受けようと思う。だが、少し疑問があるな…
「…分かった。お前の替わりに俺が渡辺を出来る限りだが守る」
「本当!?ありがとう、佐倉くん!助かった」
「だが、一つ疑問がある。どうして俺なんかをお前の替わりに選んだ?正直言って自分は簡単に信用出来るような人ではないと思う、しかしお前は俺を選んだ。何故だ?」
「それは…君が渡辺さんを気にかけているように思えたから、かな。最初、渡辺さんが何もスキルを持っていないことが分かったとき、君は焦って心配するような顔をしていた。そして、僕より前から彼女へ声を掛けていた、大丈夫か?って。今思えば、君はその時から渡辺さんを心配していたんだよね。だからだ、君を選んだのは。選んだって言い方はあまり良くないと思うけど」
…よく見ているな、だが、日比谷は勘違いをしている。俺が心配なのは復讐されないかどうかだ、渡辺の事じゃあ…ない。しかし、誤解されておいて問題はない。いや、寧ろ利点の方が多いのでこのまま勘違いさせておこう。…心が少し痛むが…。
「なるほど、な。わかった。ありがとう、日比谷」
「礼をいうのはこっちの方だよ。ありがとう、佐倉くん。…じゃあ僕はそろそろ行くから、また今度」
「ああ、また今度」
そう言って日比谷は俺の部屋から出ていった。俺にとってかなり良い方向に進んでいっているな。しかし、まだまだ油断は出来ない。これから、頑張らないとな。
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2日目の夕食後、俺は訓練所にいた。何となく自分のステータスを確認する。
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佐倉 颯馬
Lv01 age16 HP24/24 MP49/49(+1)
《水魔法Lv01》《氷魔法Lv01》
《雷魔法Lv01》《瞑想Lv01》
《魔力感知Lv01》《魔力操作Lv01》
《必要経験値減少》
『魔導の才』
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何故訓練所にいるかというと、一つ試してみたいことがあったからだ。このステータスだが、MPが1だけ増えている。これには心辺りがないのだが、恐らくなんらかのスキルの影響だろう。
魔術師にとって、MPがどれほど重要かは分からないが必要ないということはないだろう、MPを増やしておいて損はない。だから、MPが増えた原因を突き止めようと思っている。
俺がこの2日間で使用したスキルは瞑想と魔力感知、魔力操作の三つ、このどれかに原因があると思うので虱潰しにやっていく。
先ずは瞑想から。このスキルだった場合、考えられる原因は時間と回数程度。俺が瞑想を一番長く使ったのは、おおよそ40分程。回数は3,4回だ。なので初めに多めに50分瞑想を続けようと思う。因みに、瞑想のスキルでは何分間瞑想するか決められ、しっかりと決めて置いた時間に瞑想が解除されることを既に確認している。
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50分瞑想をした後、ステータスを確認する。MPが増えていると嬉しいのだが…
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佐倉 颯馬
Lv01 age16 HP24/24 MP50/50(+2)
《水魔法Lv01》《氷魔法Lv01》
《雷魔法Lv01》《瞑想Lv01》
《魔力感知Lv01》《魔力操作Lv01》
《必要経験値減少》
『魔導の才』
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…運が良いことに、いきなりビンゴを引いたようだ。これから、詳しい条件を割り出して行こう。