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本日二話目です。
異世界召喚の次の日の朝、俺達は訓練所に来ていた。広さは中庭と同じ程度で広々としている。だが、地面は中庭とは違って土だ。中庭は城の西に位置しているが、訓練所は城の東にある。
昨日、渡辺を庇い、ボコボコにされたので身体の彼方此方が痛い。
正直、訓練なんて休みたい気分だが、訓練初日ぐらいは出ておかないと基礎中の基礎さえ分からなくなり次の練習について行けなくなる。此処が頑張り時だと思って乗り越えよう。
訓練の前に騎士団長からが説明があるらしいのだが…あの人だろうか?
「俺はこの国の騎士団長、アルベルトだ。王からはお前らをビシバシ鍛えろって言われてるからな、勇者だからって手加減はしないから覚悟しておけ」
クラスメイト達の顔が若干強張った。
「よし、では初めに、スキルを基準に物理チームと魔法チームに別れてもらう。持っているスキルが物理寄りなら物理チーム、魔法寄りなら魔法チームだ。どっちも出来るやつは好きなほうを選べ」
俺は魔法チームのようだ。この騎士団長、当然かのようにイケメンなのだが、異世界ってどうなってるんだ?
「物理チームは俺の周り、魔法チームはあっちの魔術師の周りに別れてくれ、如何にも魔術師って服装だから、ほら…分かるだろう?」
そういって騎士団長が指を差す。…確かに服装が其れっぽい人がいるので言われた通りに騎士団長から離れ魔法チームの方に移動する。渡辺と日比谷は物理チームのようだ。魔法チームが集まると、魔法使いは話し出した。
「おはようございます。私は魔法チームの顧問をさせて頂きます、この国の宮廷魔術師、エリーです。これからよろしくお願いします。」
「「「よろしくお願いしまーす」」」
「はい、其れでは早速始めましょう。では、まずは魔法がどういう物なのか説明させて頂きます。魔法とは、人間の此処辺りにある魔力を身体のこの辺に持ってきて、具現化することを言います。以上。まずは魔力を感じることから始めましょう」
エリーさんは身振り手振りを使い説明する。…はい?恐らく、下腹部の辺りに魔力があるって事なのだろうが…説明が抽象的で、そんでもって短いからか分かりにくい。一応、指示に従って魔力を探す。
「平均で一時間程探していたら見つかります。皆さん頑張って下さい」
長くね?…そうだ、瞑想で精神を集中させて探そうか。上手くいくかはわからないが、試してみよう。
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…見つけた、恐らくこれが魔力。一度意識すると自分の身体の一部のように感じることができる。……〔スキル《魔力感知》を手にいれました。〕なんと、新しくスキルを覚えた。やっと見つけたが、周りはどうなっているだろう?瞑想を解除し、目を開く。すると、周りから音が戻ってくる。
「ん?そこの君、魔力を感じることが出来たみたいですね」
俺に向かってエリーさんがいう。驚いた、魔力を感じれるか分かるのか…
「42分、魔法チームの中で三番目に速いですよ、おめでとう御座います」
42分、平均より18分ほど速い記録だな。二十人の中で三番目というのは地味に嬉しい。
「それでは、あなたは魔法の具現化訓練に入って下さい。魔力を身体の中からグィーっとやって外に出す感覚です」
…なるほど分からん。これは、休まないで良かったな。ただでさえ分かりにくいのに、一回でも休もうものなら永遠についていけなくなる。
さて、グィーっととはどういう感覚だろうか?魔力を身体の外へと引っ張り出す感じか?ええと、魔力を…引っ張り出せ…ないな。動かない。
「すいません、エリーさん。魔力引っ張り出せません」
エリーさんが答える。
「引っ張り…出す?どういうことですか?」
「えっ、」
「えっ?」
…言葉が悪かったのか、引っ張り出さないのか、どっちだ?
「ええと、身体の中からグィーっとやることができません」
「ああ、なる程。では、コネコネしてください」
「えっ???」
「えっ???」
額に汗が滲む。どうやら説明の前に解読をしないといけないようだ。コネコネ?柔らかくするのか?…つまり、元々は硬いのだろうか…。
魔力を曲げようと試みる。…痛たたたたたたた、って痛い。凝り固まった身体を無理に曲げているような痛さだ。
ハッキリいってつらい。コネコネとは、魔力を柔らかくすることだったのだろう。痛みに耐えながらも柔らかくしようとする。
…しばらく痛みに耐えていると、周りからも悲痛な叫びが聞こえてくる。クラスメイトもこの段階に入ったようだ。
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二時間は魔力をこねていただろうか…やっと、痛みを感じないまま自由に動かせるようになった。魔法がこんな苦行だなんて聞いてないんだが、もう魔法なんかやりたくないと思ってしまう。しかし、これしか攻撃手段がないからな。嫌でもやらないと。……〔スキル《魔力操作》を手にいれました。〕どうやら、ちゃんと魔力を操作出来るようになったようだ。長く苦しい戦いだった。
「…あっ、魔力をグィーっと出来るようになったのですね。魔力チームで2番目に速いです」
どうやって感知しているのだろうか?それと、一人抜いたようだ。頑張った甲斐があった。
「お疲れ様です、疲れたでしょう。今日の訓練は此処までです、部屋に戻って良いですよ」
「はい、ありがとう御座います。では」
そういって俺は訓練所の中を後にした。エリーさんの説明、難しかったな…その内、《解読》とか手に入らないだろうか?