風景_Ⅱ_春たちへ、
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枯れ朽ちた薔薇、
噴水彫刻の白い花々、しろつめくさ
箱庭の
記憶から
あなたの抱く花かごが
届けられる
公衆としてのあなたは
革命広場にたつふたりのわたしを
姿見の病にたつわたしのふたりを
国家独立憲章と
そののちの
記念像からひき離した
わたしにはふたつの翳があるのに
とても壊れ易いのに
ふたつであることは
孤絶であることを
切傷の様にふかめてしまうのでしょうか
「今
あなたを、
あなたの残した譜面を開いています
ながくみじかい
初冬の樹々をわたるこがらしが酷くなると
わたしのふたつであるひとつ
あなたのひとつであるふたつ
それらが
とてもなつかしい一季節の疵であることの
淋しさを
椅子に凭れたまま眠る
ぼくを
ぼくたちを」
ぼく、と言うな
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青い花總、
可憐なものたちの死の様に
蹲る
黎明の色を差した薔薇
あなたがあなたであるためには
わたしはあなたでなければならない
花婿達の
花嫁の
戴冠はあなたたちを苦くした
厚紙と木の飛行機はもはや
自由のなかを想像することしかできないだろう
飛行船の燃えた昼に
托鉢修道僧への唾が約束された
小箱のなかの箱庭のなかの額縁のなかの鏡に
決して擬ええない
だれでもないぼくたち、の
咽喉の林檎がいつか
葛藤の草花の様に青く、
死のヴェールに覆われた石の姉妹たちへ
希望の欺瞞を
いと貴き血統、
統てを
果てなる樹へと
つなぎ
わたしあなたたるわたしへ
代筆者へ
指の窪へ指
壜詰へ
成り代わるその刻限まで
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