「7の夢」
奇妙な世界があった。
その部屋は、入院患者用の病室のようで、とても狭く、とても小さいものだ。
窓は一つもなく、床も壁も天井も全て灰色の中にあるベッドに、少女が横たわっている。彼女の左右には汚れたベッドが一つずつあるだけで、もうその部屋はいっぱいだ。
眠っている少女は、腰まで届く長い黒髪と病的に白い肌を持ち、裾に赤い糸で『7』と刺繍された灰色のワンピース一枚のみを身に付けている。鏡一枚すらないこの部屋ではお洒落をすることもできないからだ。そして細くて白い右手には包帯が巻かれていた。
少女は時々うなされるように呻いている。額には汗がにじみ、何かに苦しむようにあえぐ。だが、彼女はまだ目覚めない。
彼女は、自分の意志でこの部屋から出ることは出来ない。ベッドと繋がれている足枷が邪魔をするからだ。足枷に付いている鎖の長さは、精々この狭い部屋の中を歩ける程度しかない。
ベッドに捕らわれている少女が今日まで生きていられているのは、あちこちから伸びるチューブやカテーテルが彼女の生命を清潔に維持しているためである。
こうまでされて、少女がこの世界に生かされている理由はただ一つ。
彼女は、世界の秩序のために生かされているのだ。