4月7日†1
遅くなりました(汗
「お兄ちゃ〜ん♪朝だよ、起きてっ」
「……………」
「お兄ちゃん、起きてよぉ」
「……………」
「もぉ…………」
「………お兄ちゃん……」
「……キスしても……いいかな……ちょっとくらい……大丈夫…だよね……」
…………………
……………
………
ピピピピッピピピピッ
「!?」
「ん…んん………あれ?杏?」
「あ、お、お兄ちゃん、お、おはよっ」
目を開けると何故か目の前に見慣れた義妹の顔があった。
目覚ましは起床時間より早くセットしてあるから、まだ杏が起こしにくる時間帯ではないはずだ。
それに、気のせいか杏の顔がほんのりと赤みを帯びている。
「杏、顔赤いぞ?熱でもあるのか?」
「だっ、大丈夫だよっ」
「ホントか?どれ、ちょっと頭を……」
俺は起き上って、自分のおでこを杏の額に当ててみる。
う〜ん。熱はないようだ
「お、お兄ちゃんっ、何やってんのよっ、こ、子供じゃないんだからっ」
「はは、熱はないみたいだけど、本当に顔赤いぞ?大丈夫か?」
「だっ、大丈夫だって!」
「ん、そうか?なら良いけど。じゃあ俺は寝るから朝飯出来たら呼んでくれ。おやすみ」
杏がなんともないと分かったから、バイバイ、と手を振って俺は再び夢の世界へ。
「あ、おやすみなさい…………じゃなくて!お兄ちゃん起きてよっ!」
「ん?なんだ?やっぱり熱あるのか?」
「だから違うって!」
「じゃあなんだ?」
「お兄ちゃん部活見に行くんでしょ?それなら朝練とかも見ないと……」
確かに朝練は部活の雰囲気を感じるのにいいかもしれないが、朝のスイミンライフを失ってまで見たいものではない
「え゛!?いいよ、放課後だけ見れば……」
「ダ〜メ!行くの!行かないなら、こないだお兄ちゃんがお隣のお姉さんの……………」
「行きます。行かせてもらいます。」
「うむ。よろしい♪じゃあ早く準備してね♪」
そう言って、にこにこしながら部屋を出ていく杏。
何がそんなに嬉しいのだろうか?
それより俺ってこの脅しに弱いよな………
このままだとヘタレになりそう………
…………………
……………
………
制服に着替え、杏と一緒にた朝飯を食べる。
今日のメニューは白いご飯に味噌汁、アジの開きだ。
入学式の日と比べるとかなり豪華が、いつもより早い時間帯なのに手間がかかっているのは何故だろうか?
しかも、キッチンの方を覗くと弁当の包みが見える。
どんだけ早起きしてるんだよ………
「……ちゃん、お兄ちゃん!」
「…ん?」
「私の話聞いてた?」
「いや、全っ然」
しょうがないわねぇ、と呟く杏。
どうやら俺に何か話していたようだ。
「悪い悪い、で、何だって?」
「だからぁ、どの部から見に行こっか?って」
「ん〜、俺はどんな部があるか知らないから、杏に任せるよ」
「そぉ?じゃあまずは水泳部ね♪」
「却下」
「ええー、なんでよー?」
言い忘れてたが、杏は水泳部に所属している。
小さい頃からスイミングスクールに通っていたみたいで、泳ぎはかなりのものだ。
「ロリ顔巨乳いるんだろ?朝から会いたくないし………。それに………」
「泳げないもんね♪お兄ちゃん」
そう……
俺はカナヅチだ
小学校の時に海で溺れて死にかけてから、泳げなくなった。
「だから入らない部活見に行ってもしょうがないからな」
「そんなことないよ。水泳部入って練習すればいいじゃない。私が教えてあげるから♪」
「気持ちは嬉しいが無理だ」
「なんでよ?」
「男のプライドに関わるからだ」
「???」
泳げないのに水泳部に入ったら周りにバカにされるのは目に見えている。
まして、男子高校生が義妹に泳ぎを教えてもらうなんて、恥ずかしすぎる。
高校生のくせに泳げないなんて情けないとか言われるが、周囲の環境がどうしても俺を遠ざける。
体のいい言い訳、つまり逃げだとわかっているつもりだ。
本当はただ怖いだけだと。
「だから水泳部はなし。そうするとだな……運動部で頑張るのもなんだから、文化部にしよう」
「う〜ん、私、文化部の方はあんまり詳しくないよ?」
「でも俺よりは知ってるだろ?さて、飯食い終わったし、そろそろ行くか」
「そうだね、鞄持ってくるね」
そう言って杏は自分の部屋に駆け込む。
俺はその間に食器を流しに運ぶ。
我が家には食器洗い機があるからボタンひとつで片付けられる。
「お兄ちゃん、行くよ!」
「ああ」
部屋から飛び出し、玄関へと向かう杏に相づちを打って、俺も玄関へ向かう。
「いってきま〜す♪」
ガチャ
ドンッ!!
「いったーい!」
いつものように杏が元気よく玄関の扉を開けると、何か鈍い音と、聞き慣れた声が聞こえてきた。
俺は、何が起きたのかわからず呆然としている杏を押し退けて、外へでてみる。
すると予想通り、お隣さんが尻餅をついていた。
鼻を押さえているとこをみると、ドアにぶつけたらしい。
その姿を眺めていると、こっちを向いてキッ、と睨まれた。
「ちょっと秋斗君っ!この美し〜い顔に傷がついたらどうすんのっ!!責任とってよねっ!」
この人が例のお隣のお姉さん。中川 彩華さん。
解らないところの多い人だが、意外としっかりしているOLさん。
俺たちが高校生二人きりだということで、たまに面倒を見てもらっている。
今更だが、俺たちはマンション住まいだ。
「責任って……犯人は杏だし………」
「えっ、お兄ちゃん、可愛い義妹のせいにするの!?」
ひょこっ、とドアから顔を出す杏。
おい、その言い方だと、まるで俺がやったみたいに………
「はい、じゃあ責任として、秋斗君に明日のお昼奢ってもらおうかな♪近くのファミレスでいいからね♪」
「ちょ、ちょっと待った!高校生に奢らせる気か?」
「嘘よ♪割り勘ね♪」
ったく………って飯は食いに行くんかい…………
「じゃあ明日の11時に迎えに来てね♪あっ、もう時間ないから行くわね。バイバイ」
そう言い残すと、彩華さんは物凄い早さで階段で降りていってしまった。
彩華さんは翠より台風的レベルが高いかもしれない。
「さ、杏行くぞ」
「え、あ、うん……ねぇ、お兄ちゃん。明日彩華さんとお昼食べに行くの?」
ふと、杏が訊ねてきた。
その顔にはちょっと曇りが感じられる。
責任を押し付けたことを反省しているのだろうか?
「そうだな……断る理由がないからな。責任のことなら気にしなくていいぞ。こういう機会がない限りファミレスなんていかないからな」
「うぅん……そんなことじゃなくて………」
そんなこと…………って少しは悪気をもてよ……
「私も一緒に行っていいかな?二人きりじゃアレでしょ……?」
「ああ、一緒に来いよ」
「いいの!?」
「別に構わないだろ」
誰も誘っちゃいけないなんて言われてないしな。
「よかった♪これで安心できる」
「何がだ?」
「うぅん、なんでもないよ♪さ、早く行こっ!」
「わっ、おい、腕掴んで走るな」
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