4月6日†1
更新は不定期なのでよろしくお願いします。
ピピピピッピピピピッ
「ふゎ〜あ、よく寝たわ」
大きな欠伸しながら目覚まし時計を止める。
いつもならここで二度寝するが、今日はお目めパッチリだ。
きっと昨日の疲れのせいでグッスリと寝たのだろう。
「よいしょ、っと」
俺はベッドから立ち上がり着替えを取り出す。
せっかく早く起きたんだから、たまには朝飯でも作って杏を驚かせてやるかな
そんなことを思いながら制服に着替えていると、部屋の外からいいにおいがしてきた。
「ん?まさかな………まだ6時だし杏が起きてるはずが…………」
学校は朝のSHRが8時に始まるから7時半に家を出れば余裕で間に合う。
しかし、二度寝が好きな俺は目覚まし時計を起きなければならない時間の一時間前にセットしている。
着替えが終わり、恐る恐るリビングを覗く。
リビングに杏の姿はない。
よしっ
俺はそのまま摺り足でリビング向かう。
リビングに入る前に某スパイ映画の主人公のように拳銃を構えたふりをし、もう一度リビングを見渡す。
異常なし!任務続行だ!
さっ、とリビングに入るとさっきのにおいがより強く感じられる。
においのする方へ行くと、キッチンに人の気配が…………。
敵視認。任務を遂行する。
ターゲットを撃っても某ライセンスが俺を護ってくれる
俺はすっ、と敵の背後をとると………
「バーンッ!」
「きゃっ!」
バリーン!
任務完了。あとは脱出するだけだ。
「コラッ!お兄ちゃんのせいでお皿落としちゃったじゃないっ!!」
何っ!確かに任務は成功したはずだ…………
まさかこれは某スパイ映画じゃなくて、某ゾンビゲームなのか!?
「待ちなさいっ!」
あぁっ!制服を掴まれた!きっとこのまま噛まれて、俺もゾンビの仲間入りに…………
「誰がゾンビよっ!それより、早く割れたお皿片付けなさい!」
「……はい」
杏の喝がとんだ。
しゅん、と萎んでいる俺は皿の破片を集めてゴミ箱の中へ入れるが、小片が辺りに散らばってなかなか終わりそうにない。
「片付け終わるまで朝御飯あげないからねっ」
うぅ……あんまりだ………
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
片付けが終わり、朝飯を食べて俺たちは学校へと向かう。
通学路にある桜の木々はもうほとんど緑色に染まっていた。
今年はそれほど暑いということなのだろう。
今日は深雪に昨日のことを聞かなきゃな
でも、どうやって話せばいいんだろうか
あの態度からすると、俺の話を聞いてくれる可能性は低い…………ん〜、どうしたものか……………
「お兄ちゃん、どしたの?難しい顔しちゃって」
杏が覗きこむように訊いてくる。
「あぁ、ほら昨日、掃除のこと話したろ。」
「うんうん」
「それでさ深雪が冗談だってことを知ってたのに、それを言わずに終わるまで待ってたのが気になってさ」
「あれれ?お兄ちゃんそんなこと話したっけ?」
首を傾げ、人差し指を口にあてる杏
本当に知らなそうだが、俺は確かに言ったはずだ
「お前、ばか笑いして聞いてなかったな」
「あっ、えへへ〜。めんご♪」
杏がぺろっ、と舌を出して謝る。
「まぁそれで、その訳を訊いてみようと思うんだけど、あいつ、無愛想で人の話聞きそうにないじゃん?だから、どうやって話そうか考えててさ」
俺は話を終えて、杏の顔をみる
「そぉ?深雪さんだったよね。あの娘、他の女の子たちとは楽しそうに喋ってたよ」
「ホントに?」
俺は信じられなく思わず聞き返してしまう。
「うん」
じゃあ昨日のあの態度はなんだったんだ?
ますますあいつが解らなくなってきたぞ
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
杏と話しているうちに学園へと到着した。
校門では、友達と一緒いるやつや、一人のやつもいる。
一人やつは多分一年生なのだろう。
入学してまだ二日目、当たり前と言っちゃ当たり前だ。
昇降口で上履きに履き替えて、教室に入る。
周りを見渡す何人かは座っており、一部の中の良いグループは集まって談笑している。
…………いた
俺は窓際の席にぽつんと座っている少女の下へ駆け寄る。
「あの、ちょっといいかな?」
「……ん?」
少女は俺に気付いたらしく、こちらに視線を向ける。
「あのさ、深雪さん、昨日の掃除が先生の冗談だって知ってたんだよね?」
訝しげな表情を浮かべる深雪。
「……だから?」
「いや、その、なんで言わずに待ってたのかな〜、って気になってさ」
深雪はふぅ、と息を吐き出すと
「私の行いにいちいち理由が必要なのか?」
「別にそんなわけじゃないけど………」
「けど……なんだ?」
冷たくいい放たれる言葉に棘がある。
「だからさ………」
「もういい、お前と話していても時間の無駄だ。あっちに行ってくれ。」
昨日と同じだった
話そうとしても、一方的に拒絶される感じ
「……わかったよ」
俺は諦めて席に戻る。
今後一切あいつに関わるのはやめよう………そう思いながら…………
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
高校生活最初の授業は、ガイダンスや自己紹介が中心に進んでいった。
中でも皆をざわつかせたのは、俺と杏の関係だった。
俺の実の母親は生まれつき身体が弱かったらしい。
だから俺の出産の時に母体が耐えられなく、俺を産んですぐ亡くなってしまった。
俺は男手一つで育てられていった。
そんな中、親父がある女性と再婚すると言い出した。確か俺が中学に入る前のことだったと思う。
その人が俺の今の義母さん。つまり杏の母親だ。
杏の家も色々とあったらしく父親がいなかった。
歳が同じだったということもあり、俺と杏はすぐに打ち解けた。
その後、中学を一緒に卒業して今に至っている。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
キーンコーンカーンコーン
授業の終わりを告げる鐘がなると、今日はもう放課だ。
「お兄ちゃんっ」
「なんだ杏?」
「私今日も部活行くから先に帰ってていいよ」
「ああ、わかったよ」
「じゃあねっ♪」
杏は手を振りながら教室から駆け出していった。
「………部活…か。どこに入ろう………」
うちの学園は部活には必ず入部しなければならない。文武両道を目指す、というのが目的らしい。
「秋斗っ!」
杏と入れ替わりに大和が声をかけてきた。
「お前、早くも敗北者になったんだな」
「は?」
大和の言ってる意味がわからない
「だから敗けたんだろ?しっかし深雪さんに手を出すなんてお前勇気あるなぁ」
「何言ってんだ?」
「隠すなって朝見てたぞ。告ったんだろ?残念だ。ただ相手が悪かったなぁ」
どうやらこいつは俺が深雪に告白したと思っているみたいだ
「ちょっ!待てよ、告るわけないだろ!」
「大丈夫だ!俺は口が固い。誰にも言わん。んで深雪さんに何て言ったんだ」
俺は、はぁ、とため息をつき大和に視線を向ける。
大和は興味津々といった様子で目を爛々と光らせている。
「昨日のことでちょっと話しをしただけだよ」
「っ!お前昨日も告白したのか!?しつこいと嫌われるぞ」
「あのなぁ………」
話の通じない大和に昨日のことをざあっと説明した。
「そうかぁ………それで秋斗君はツンツンした娘が好きになっちゃったのか」
「違うって!」
大和はどうしても色恋沙汰と結びつけたいらしい。
「はは、わかってるよ」
「ったく。ホントにわかってるんだか………」
俺は頬杖をつきながら大和の顔を見上げる。
「それにしても深雪さんねぇ………」
大和はんん〜、と何か考えてるようだ
「俺の情報によると、深雪さんは中学の頃から男子と話したことは滅多にないらしい。事務的な会話は何度かあったみたいだが、それでも冷たく無愛想にされるんだってさ」
驚いた。こいつは中学は俺と一緒で、深雪とは違うはずだ。
「な、何でそんなことをお前が知ってんだよ?」
フフンッ、と大和が自慢気に手を腰にあてて話す。
「俺の情報網を舐めちゃいけませんぜ旦那。このクラスの女子のことなら何でも知ってるぜっ!!」
「………………」
「ちなみに今日は隣のクラスの調査に。A組には確かあの娘がいたよな〜」
大和はだんだんと自分の世界に入っていく。
…………変態め
俺は、ウヘヘ、とか言ってる大和を尻目に教科書を鞄に突っ込んで席を立つ。
「じゃあなっ」
「ウヘヘ……エヘ………って、待てよぉっ!」
……誰が待つかよ
次回に続きます。




