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4月5日†4


重い足取りで家路につく


夕方に近いせいか向こうの空は赤みがかっている


情けないことに身体はもうガタガタだ



プール掃除ってこんなにキツかったのか………。



しかし、始めは緑の藻で覆われていたプールが綺麗な水色に戻ったのだからやった甲斐はあったのだろう。


それにしても……深雪は………あいつはなんなんだろう…………。



掃除をしなくていいと知っていたなら、さっさと帰ればよかったのに…………。

それにブラシの毛を抜くなんて普通はやらないだろう。



…………ん?ブラシの話で何か引っ掛かるところがあり、深雪との会話を思い出す



『これで分かっただろ、私には無理なことが。それに………』



それに?


そういえばまだ何か言おうとしてたな…………。


まさかそこで掃除は冗談だ、ってことを言おうとしたのか?


でもその後は………


『何をしている。早く掃除に戻れ。私も暇じゃないんだ。』



って言ったよな…………。

あぁーー、わからん!



あいつは何がしたかったんだろう…………。



一度、深雪とは関わらない方がいいと思ったが、気になったら止まらない。


………明日訊いてみるか






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「ふぅ〜、ただいま」


「あっ!お兄ちゃんおかえり〜。遅かったね」


「ああ。掃除が長引いたからな」



ようやく家に着いた

時計はすでに4時を回っている


部活を見に行った杏は先に帰ってきていたようだ



「帰り早かったんだな。部活はどうだった、杏?」


話ながらリビングの椅子に腰を下ろす



「流石は高校生って感じだったね。はい、お兄ちゃんお疲れさま」



「おっ、サンキュ」


杏が紅茶をいれてくれた



「うぅん、私も飲もうと思ってたから。さっき帰ってきたばっかりで喉乾いてるの。お兄ちゃん、お砂糖とミルクいるっけ?」



「ああ、へーき」



せっかくの紅茶の風味が甘くなってしまう



「よくそのまま飲めるよねぇ」


そう言う杏は砂糖とミルクの両方をいれている


「って、お前まだ両方いれてんの?」


「うん、紅茶ってちょっぴり苦味があるじゃん。私苦いのダメなんだよね」


「コーヒーじゃないんだからさ…………それにもう高校生だぜ?」



「えぇ〜、コーヒー牛乳は飲めるもんっ!」


「はいはい」


ぶぅ〜、と口を尖らす杏



「そういえば掃除はどうだったの?」


杏が今日のことを唐突に訊いてくる


「あぁ……あれな………」

うんうん、と頷きながら杏は興味深そうに俺の顔を覗きこむ


できれば言いたくないんだが…………


「笑うなよ……あれ、本当は冗談だったんだって………」


「え?」



「だから、掃除なんて冗談だったんだよ」



やはり話が飲み込めないらしく、杏は首を傾げている。


本当にが頭の上に?マークが出そうな感じだ。


俺は掻い摘んで事情を説明した。




「ぷっ、あははははは!」

だから言うの嫌だったんだよ………



「笑うな、っていっただろっ!」


「だって、だって〜。あははははは」


腹を抱えながら笑っている。杏の目からは笑いすぎで涙がでている。


コノヤロォ、そんなに可笑しいかっ!


と、俺がちょっと力んだ時…………


ギュルルル〜〜


腹の虫が音をあげた

そうだ昼飯食ってねぇ



「あははははは、ギュルルル〜、だってっ」


バンバンとテーブルを叩く杏


こいつは一度ツボに入るとなかなか止まらない。

しかも笑いの沸点が低いのだ。


昔、杏の笑いが止まらなくなって、病院にいったことがあった。

医者もこんなのは初めてだと困惑していたが、どうにか治まった。

治るまでこっちは笑いどころじゃなかった。



「はい、そこで止めっ!」

「あははははは……は、はぁ、はぁ、」


そんな息を切らすくらいなら笑わなきゃいいのに



俺はコップに水を汲んで杏に手渡す



「はぁ、ありがと、お兄ちゃん」



「どういたしまして」



ふぅ、と一呼吸ついてから水を一気に飲みほす杏。


時計を見るともう18時だった。


腹が悲鳴をあげるのも納得できる。



「あっ!もうこんな時間だ、お夕飯どうしよっか?」


笑いも一段落ついたらしく、落ち着いた様子の杏が訊ねてくる。


「ん〜、今から買い物行ったんじゃ遅くなるからな〜。ある物でなんか作れないかな?」


冷蔵庫の中を見てみると中には以前余分に作っておいたミートソースがあった。


「おっ、これでいいじゃん。杏、ミートソーススパゲッティでいいよな?」


「うん♪いいよ〜、私ミートソース大好き〜」



「りょ〜かい」



と、言って俺は鍋に水を注いで火にかける。


その後、キッチンの戸棚を開けてスパゲッティを取り出す。


お湯が沸騰したら二人分の麺をいれて茹の上がりを待つ。


その間に冷えきったミートソースをレンジにいれ暖める。



無駄のない流れるような手際の良さの俺を見ている杏。


手伝えよっ!



チンッ、という音と共に麺も茹で上がり、それを皿に盛り付ければ完成だ!



うん。我ながら上手くできたな。


って誰でもできるんだが…………。



家の夕飯は俺と杏で交代でやっている。

親父と義母さんが世界中を飛び回るようになってからずっとだ。


だから男の俺も料理が出来る。

もちろん杏のが腕か上だ。義母さんから色々と教わったらしい。


ちなみに他の家事…………洗濯は料理当番じゃない方が、掃除は週交代だ。


弁当は杏が気が向いた時に作ってくれる。


基本的には学食か購買で済ましている。




「ほら、出来たぞ」


「いっただきま〜す♪」



杏が元気にいただきますをする。


さ、俺も食べるとするか






〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜




「ふぅ〜、食った食った」


夕飯を食べ終わり、自分の部屋で一息つく。


ベッドの上にゴロンと寝転がると、やっと落ち着けたせいか、どっと眠気が襲ってきた。



………んん〜、今日は疲れたな…………


目を閉じて今日の出来事を思い返してみる…………


校長のカツラ

ロリ顔巨乳の登場

冗談だったプール掃除

無愛想な少女


………初日からハードすぎだろこれ…………。



そんなことを思っていると眠気の波が俺の意識を拐っていった………。




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