4月5日†3
「あぁ……暑い…」
まだ春だと言うのに容赦なく照りつける陽射し
はぁ…………課題を忘れたからって……なんで掃除なんだよ………
しかもプールだし
なんでもあのロリ顔巨乳が体育担当で、しかも水泳部の顧問らしくそのせいで俺は外にあるプールの掃除をさせられている。
当の水泳部は、というと学校にある屋内プールで練習しているみたいだ。
この学校は私立であるためかマンモス校であり、かなりの設備が整っている。
だから実際には水泳部は練習でこの外プールを使うことは滅多になく、いつも屋内プールで練習している。
「…………水泳部顧問カンケーねぇじゃん」
と言ったら
「体育の授業でプール使うでしょ♪」
と言われた
「はぁ………一人でプール掃除はないだろ……」
プール掃除ってもんはみんなでやるから大変な掃除が楽しくなるんだろう。
一人で孤独にやるのなんて拷問にすぎない。
しかも、50mプールだから尚更気が遠くなる。
俺は制服の裾をまくりあげてブラシで必死に底をこする
今の時刻は11時、早く終わらせないとランチタイムになってしまう
……今ごろ杏は弁当食ってるんだろうなぁ………
と、そんなことを思っていると
「キャッ、キャッ♪」
と高い声が聞こえる
プールに誰か来たようだ
「坂口君♪がんばってるぅ?」
「は…はい……まぁ……まぁです……」
ロリ顔巨乳だった
ん?よく見たら隣に二人女生徒がいる
コイツらも課題忘れか?
バカなやつらだ………って人のこと言える立場じゃなかったわ
「うっわ!バカみたい〜罰掃除させられてる〜」
「うむ、馬鹿だな。」
「うるせーっ!」
一人は神崎 翠、去年まで同じ中学校だった
女子の中では話しやすく貴重な存在だか、如何せんうるさくてせっかちなやつだ。
台風の如くやってきては辺りを荒らし、台風の如く去っていく。
コイツと一緒にいると毎日のように台風一過を体験できる。
もう一人は……知らないな………
って初対面のやつに馬鹿っていわれた………
「何しに来たんだよっ!」
「バカを拝みに来たのよ〜」
べーっと舌をだす翠に対し額にピキピキマークを浮かべる俺
「仲が良いいわねぇ〜」
「「よくないっ!」」
二人同時に突っ込みハモる翠と俺
「ウフフ♪翠ちゃんと素葉ちゃんも掃除しに来たのよねぇ♪」
ロリ顔巨乳が笑いながら言った言葉に固まる二人
そうか素葉っていうのか
「お前らも課題忘れたのか?」
「ちっ、違うわよっ!私はちゃんと出しました〜」
「私もだ。」
「じゃあなんで罰掃除なんだ?」
再び黙り込む翠
「先生が教えてあげよっかぁ〜♪」
ロリ顔巨乳が沈黙を破るように言った
………先生がその発言するとなんか危険です………
「ちょ、せんせーダメっ!」
と翠が言うもののロリ顔巨乳話をは続ける
「翠ちゃんはねぇ、名前を書き忘れちゃったのよね〜」
「うっわ恥ずかし」
「うるさいっ!」
高校生になってまで名前を書き忘れるなんて翠しかいないだろうな
「それで素葉ちゃんはねぇ………」
「そのまま出した。」
ロリ顔巨乳が言いかけたとこを素葉の言葉が遮った
「はい?そのままって?」
「だからそのまま……白紙のまま出した。何か文句があるのか?」
「いや……ないです………」
文句はないが白紙って…………
一見無愛想な少女は実はすごいやつだった
「はい♪じゃあ三人ともお掃除がんばってねぇ♪」
といってブラシだけ渡し、去っていくロリ顔巨乳
……なんかデジャヴが………
三人だけ残された俺たち
右を向くとギャーギャーわめいている台風が………
左を向くとブラシの毛を抜いている少女が………
はぁ……こんなんで掃除が終わるのだろうか………
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「ぢぬ〜〜あづいよぉ〜〜」
いつも激しい台風も暑さは苦手らしくふらふらしながらブラシをかけている
それもそのはずプールサイドの気温計は30°近い
これでは夏が思いやられる
そして一番問題なのは、掃除をしているのが二人だけということだ
例の少女は始める前に
「本当にやるのか?」と聞いてきただけで、今は日傘を指して本を読んでいる
どこから出してきたんだよ…………
「あの〜素葉さんだったよね?」
俺の呼び掛けに反応して少女がこちらを向く。
改めて少女の顔を見るとちょっとドキッとした。
少し大きめな目にちょこんと付いている鼻と口、やや短めの髪を後ろで一つに結んでいるようだ
俺は美少女の部類に入るだろうその顔を見ながら話を続け………
「名前で呼ぶな。」
………られなかった
…………こいつは人の話を遮断するのが好きなのか?
「いや、でも俺、君の名前しか知らないしさ。」
「………深雪。」
はぁ、とため息をついてから少女が言う
みゆき?確かにみゆきって言ったよな?
「じゃ、じゃあ深雪さん、一緒にプール掃除を………………」
「無理だ。」
本日三度目の遮り
いい加減頭に来る
「なんでムリなのかなぁ〜?」
ふんっ、と深雪が右にあるものを指す
その先にあったのは無惨な姿になったブラシだった。
毛が全て抜かれ、本来の用途の働きができる形ではなくなっている
俺は目線を深雪に戻す
「これで分かっただろ。私には無理なことが。それに………」
プールサイドにいる深雪は俺を見下すような目で見てくる
無愛想な上に性格まで悪いのか…………
ちょっと可愛いからって調子に乗るなよ!!
「何をしている。早く掃除に戻れ。私も暇じゃないんだ。」
カチン
俺の中で何かが吹っ切れそうになった
「秋斗〜、何してるの〜?早く終わらせようよ〜」
ふと後ろを向く翠が底をこすりながらブーブー言っていた。
俺が深雪と話してる間に翠は一人で掃除していたのだ。
ほんのちょっとだけ心が痛む。
あぁそうだ………こんなやつ相手にしなけりゃよかったんだ。
「悪い悪い、今いくよっ。」
と言って、俺は翠の方へいき掃除を再開する
「何話してたの?」
翠が上目遣いにきいてくる
「いや別に……」
「あぁ〜怪しいな〜。本当は深雪さんのこと好きなんじゃないの〜」
「んなわけないだろっ!」
ビクッと少し飛び上がる翠。声を荒げてしまった
「わ……悪いな」
俺は咄嗟に謝る
「う……ううん。ちょっと驚いただけだから。それより早くおわらせよっ♪」
「ああ。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「んん〜やっとおわったね♪」
大きく伸びをする翠。
結局掃除が終わったのは3時半で、お昼の時間を過ぎてしまった。
「やっと終わったか。」
俺たちが掃除を終えたのを確認して立ち上がる深雪。そのまま何も言わずにプールから出ていってしまった。
「秋斗っ、先生に報告しに行こっ!」
そう言って翠は俺の腕を掴んで走り出す
「うぉっ、ちょ、ちょっと待てって!おま……速すぎ!」
掃除から解放された喜びからか、翠はいつも以上に速いスピードだ。
………って速すぎるよ
まるで高速道路を飛ばしているかのようなスピードで走り、5分とかからず職員室に着いた。
ガラガラッ
職員室のドアを開けるとひんやりとした空気が体を刺す。まだ4月なのに冷房をいれているのだ。俺は地球温暖化の大きな原因の一つはこれだと思っている。
周りを見渡すとロリ顔巨乳がいた。
クソッ!涼んでやがる
「中川先生ーっ!」
職員室だというのに大声をだす翠。
ロリ顔巨乳もこちらに気づいたようで手をふっている
「神崎さんに坂口君、どうしたの?」
「先生何言ってるんですか?掃除が終わったんですよ!そ・う・じっ!!プール掃除っ!」
「えっ!?あれ本当にやったの!?冗談だったのにぃ」
「はい?冗談?マジですか?」
ボー然としながらロリ顔巨乳をみる翠と俺
「大マジよぉ〜♪本気でたった三人にプール掃除なんてさせたと思ってるのぉ〜?」
俺たちは目をパチパチさせている。
目の前の教師が言ってることが信じられないのだ
「それにちゃんと素葉ちゃんには冗談だから帰ってもいいよぉ〜、って言っておいたわよ♪」
なにっ!あいつそんなこと一言もいわなかったぞ!
「まぁいいわ♪二人ともありがとね♪」
ロリ顔巨乳はこれで日曜日フリーになったわぁ、とか言っている
俺は今起きてること自体が冗談のようだった




