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我が祖国に滅亡あれ  作者: ひトヒトリ
2/2

日常

なんでもないある日の朝のことだ。

本当になんでもない朝であり、いつもどおりの朝だ。

僕と父、そして母は、だだっ広いテーブルを囲んで朝食を食べている。

会話はなく、ナイフとフォークを動かす音だけが響く。


5年以上前、まだ弟たちが土に埋まってはいなかったあの頃、

毎朝の朝食はとても賑やかだった。

チャールズが冗談を言うと、レオナルドが呆れたような笑みを浮かべつつ諭す。

アルフレッドは笑いを噛み殺している。

父が次男に乗っかりつまらない冗談を披露すると、一瞬の静寂が訪れる。

母はため息をつき、弟たちはたまらず笑い出す。

父は苦笑すると、母は少し微笑んだ。


みんな笑っていた。僕以外は。


いや、正確にいえば笑ってはいた。顔筋に、口角に、笑顔の形を貼り付けていた。

少しも楽しくはなかったけれど。


だから僕は大して変わっていない。笑顔を作る必要がなくなっただけで。

変わったのは周りだ。

父は朝からワイングラスを傾け、母は見るからに痩せた。

父からかけられる言葉は最小限の事務的な言葉。

僕はそれに対して、「はい」や「勿論です」といった言葉を繰り返す。


僕は少食だ。そして食べることが早い。なぜかはお分かり頂けると思う。

そういうわけで、僕は空の食器を召使いに任せると僕は自室へ向かう。


僕はできるだけ早く歩く。理由はすぐわかる。


床を掃除している侍女が呆れたようにこちらを見る。

この城において、僕に威厳なんてあったもんじゃない。

ただでさえ全てにおいて弟たちに劣っていた僕は、影で侍女たちに嗤われていた。

そのことに気付いたのはいつだったろう。

ちょっと思い出せない。

それほどに当然に自分の無価値を自覚していた。

その弟たちが非業の死を遂げた今、僕の精神的地位は最底辺と言っていい。


行政は王とその秘書たちによって行われている。

父は酒量は増えたもののまだ現役ではある。


僕の父が治めるこの国は、大国とは呼べないものの、古くからの歴史を誇る。

商業が発達しており、街は活気に溢れている。

軍事力は誇れるほどのものではないが、その豊かさから、大国と同盟を結び、

今のところ国防に支障はない。


それより僕の仕事だって?そんなものはない。

仕事が出来ないわけではない。ただ、ないのだ。


僕などに任せては置けないということだろう。



自分の部屋に着くと、鍵を閉め、ため息を吐く。

自分の部屋は落ち着く。

僕には嫌いなものが沢山あるけれど、

その中でこの部屋には、僕の愛するものが雑多に詰め込まれている。


大量に積み上がった本や、木彫りの人形、綺麗な置き時計に、美しい絵画、

イーゼルに乗ったキャンバス、瓶に入れられた筆、絵の具の匂い。


堅苦しい服を脱ぎ捨て、ベッドに倒れこむ。

少し埃臭い匂いを吸い込み、目を閉じてまどろむ。

僕はこの空間を愛しいと思っている。

世界がこの部屋だけになればいいと、

心から思う。



読んで頂いてありがとうございます。

国の設定など、見苦しいところがあれば申し訳ありません

頑張って書きますので次があったら読んで見てください

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