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黒の一号・終章  作者: 凡仙狼のpeco
『最終決戦篇』
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第8節:会戦


 スイングバイによる加速を滞りなく成功させた装殻者達は、そのままさらに両翼に位置するケイタとミカミの補助を受けて電磁加速を行いながら、太陽系に突入したと連絡のあった《星喰使(オーファン・ウィルス)》を目指した。


 巨大で無骨な人形をした『ジンパチ』を中心に、ロッカスをよりトンボに近付けたような外見の『ウラノス』と『ガイア』が左右に位置している。


 斜め後方に向けて六機ずつ『ティターンズ』が並び、∧型の飛行陣形を組んだ彼らの中に、三角形でアイリ、コウ、そして黒殻(アンチボディ)となった《黒の装殻(シェルベイル)》達が並んでいる。


 装殻心核(ベイルド・コア)共鳴励起(ストリームレイド)により全員のコアと黒殻の増幅核(ブーストコア)がリンクし、黒殻の頭に弐号、中央に黒の一号、尾の部分に参式、両翼に肆号、伍号がそれぞれに同一化していた。


 コウは、自分自身の真の巨殻形態である、強襲形態(アサルトスタイル)飛翔形態(アウェイクン)を掛け合わせたような漆黒の龍に似た姿に。

 アイリも、6対12枚の翼と背面リングに加えて、体長と同じ長さの刀身を2対4本、両腕に備えた純白の鎧の天使に似た姿となっていった。


『衝突まで、後3時間、ってところかしらん?』


 電磁加速により既に出発時の倍近い速度で航行している自分達同様、太陽系に突入した事で再び力を増し始めた《星喰使》の方も、襲来体を産み落としながら限界機動を行なっているらしい。

 ニーナの報告に、コウが尋ねた。


「時空改変による跳躍は、考慮しなくて良いんですか?」

『地球へ? 無意味ねん。奴らの最終目的は、あくまでも霊号を殺す事よん。君達がこの場に居て、本体との最終決戦である以上、奴らも真っ直ぐに突っ込んで来るわ』


 そんなニーナの言葉に、反論したのはジンだ。


『地球を潰されたら帰るところがなくなる。流石にずっと装殻状態を維持したまま宇宙を彷徨うのは俺らでも無理っしょ?』

『そうでなくとも、ニーナさんやコウくん達が防ぐだろう』


 ジンの言葉に、答えたのは花立だった。


『観測はしてるんじゃないのか? アイリ』

『してるけど。防げるかどうかは、僕とコウはやってみた事ないしね』

『兆候があれば伝えるわよん』


 ミツキが、そんなやり取りにのほほんと割り込む。


『俺らも時空改変で突っ込んだら良かったんちゃうん? 暇やで』

『あんた、アホなの!? こっちが防げるんなら向こうだって出来るでしょうが!』


 ルナが噛みつき、ケイカが同意する。


『時空改変中に干渉されたら、結果がどうなるか分からないでしょう。私たちだけ、《白の装殻(クルセイダー)》みたいに別の世界に跳ばされる可能性だってあるのよ』

『あ、ホンマやな』


 そんな会話に、溜息まじりにケイタが言う。


『お前、本当に根性座ってんな。一番経験浅いくせに、少しは緊張とかねーのか』

『ケイタには〜、言われたくないと思いますよぉ〜?』

『フリード・コントローラー完成直後にアナザーとタイマンした馬鹿。……嫌いじゃないけど』

『バラすなよ!』


 ミカミとリリスの言葉にケイタが突っ込み、ミチナリが溜息を吐く。


『……緊張感がないのはどっちだ』

『全くだ』


 ミチナリに花立が同意し、ハジメが含み笑いを漏らす。


『なんだ、本条』

『いや。誰でも昔の事は棚に上げるものだ、と思ってな』

『あらん、愛しい人(モイ・リュビーモイ)。貴方にも覚えがないとは言わせないわよん』

『ハジメさんは今でも変わらんやん』

『確かに』

 

 ミツキのツッコミに、コウは苦笑した。


 そんな和やかな時間も、後数時間で終わる。

 コウが《星喰使》を観測する今の間にも、相手は数を増やし続けていた。


 雑魚は無視して、母体へ突っ込む……そんなシンプルで明快な作戦を遂行するのが、どれほど難しいか。

 コウは一人、先の戦闘に思いを馳せた。


※※※


 火星圏。

 そこが、《星喰使》との決戦の舞台になった。


「行け……『ティターンズ』!」


 開戦の狼煙を上げたのは、リリスとルナが操るビット・ガンベイルだった。

 ルナの声を受けて、サイクロプスのシステムを応用した充填式増幅核を備えたティターンズの出力解放級のブレード・スラスターの一斉射によって、宙域を埋め尽くす程の数の襲来体が次々に破壊されていく。


 崩れた前線に、超音速で突っ込む装殻者達の外縁を担う《白の装殻》に対して、アイリが言った。


「行くよ、《白の装殻(クルセイダー)》! 装殻心核(ベイルド・コア)共鳴励起(ストリームレイド)!」

出力解放(アビリティ・オーダー)!」


 霊号コアをタンクにした《白の装甲殻》とティターンズが、共通兵装である槍をそれぞれに構えると、槍の先端同士が霊子共鳴して円錐型のフィールドを張る。


 一体となって襲来体を貫き、《星喰使》の母体へと突き進む装殻者達の前に、一際巨大な襲来体が姿を見せた。

 その頭部にある顔を見て、花立とミチナリがそれぞれに声を上げる。


「マザー……!」

「アナザー!」


 そこで、ニーナが声を上げた。


「母体を、フィールドによる突貫で突き抜けるのは無理ねん」

「……散開だ。コウくん、アイリ」

『はい!』


 ハジメの呼びかけに、二人が応えた。


「……任せる」

「うん!」

「安心して、突っ込んで下さい」

「カウントダウンよん。3、2、1……散開!」


 ニーナの声と共に、ティターンズと《白の装殻(クルセイダー)》が二人の霊号の周囲を守る為に半円状に広がり。


時空改変(レコード・ブレイク)!』


 コウが、時空改変の影響を受け入れた黒殻(アンチボディ)を母体の後方へと転移させ、アイリが残った面々を襲う慣性をキャンセルして母体との相対速度を合わせて対峙する。


 そのまま、黒殻は先へと突き進んでいき、コウとアイリは、それぞれにマザー・アナザーへと突っ込んで行った。

 


 

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