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黒の一号・終章  作者: 凡仙狼のpeco
『愛媛隕石篇』
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第22節:装技研防衛戦(中編)

『はっはぁ! ハジメさんたちがまた襲来体の親玉潰しに行ってんだろ!? 戻って来る場所は確保しとかねーとな!』

『Lタウンの隕石が潰されて暇だったしな! ゴキブリどもは皆殺しだ!』

『テンション上げすぎて勝手に突っ込まないで下さいね。襲来体はともかく相手はトウガのコピーですよ?』

『はん、あの泣き虫野郎がどうしたって? こっちにも装殻がありゃあの野郎なんか余裕で殺してやるよ!』

『Hey、模擬戦で一回もトウガに勝った事ナイ奴の言葉じゃないyo?』


 ペラペラと喋りながらも、次々に降下を終えた【黒の兵士】達が散っていく。


『やかましいおっさんどもだな……』

『てゆーか、あいつら動きハンパねぇなオイ! 生身で襲来体と戦ったとか言ってたの、まさかマジなのか?』

『花立特務課長を呼び捨てだしな……鬼の花立が泣き虫野郎ってどういう事だ……』

『それより課長が参式だった事実が驚きなんだけど』

『どうでも良いよ。それよりアイリはどこだ? 俺のアイドル!』

『最前線だよ。ここ守ったら行ってこいよ』


 特務課の面々は滞空して整然と隊列を組んだ後、ツーマンセルで急降下と上昇を繰り返し、片方がスタッグバイトで襲来体を拘束、片方がブレードでそれを危なげなく潰していく。


 【黒の兵士】も特務課も、問題児の集まりである。

 シノは溜息を吐いて、全周波回線を開いた。


「【黒の兵士】。花立さんに言いつけますよ。特務課。それ以上無駄口叩いたら減給です」

『No! それはあんまりだyo!!』

『てめ、シノ、脅しかコラ!』

『やめろよ! アイツ暴れ出したら俺らで止められる訳ねーだろ!』

『さっきまでの大口はどうしたんですか……』

『局長! あんまりっす!』

『俺ら頑張ってるっすよ!? ほら!』

『バカ黙れ! 局長はやるって言ったら絶対やるから!』


 慌てる【黒の兵士】と特務課は喚いてから口をつぐみ、それまで以上の速度で襲来体を殲滅し始める。


 彼らは問題児だ。

 しかし実力と根性は、殲滅戦を生き残り、あるいは花立が認めただけあって折り紙つきである。


「私も出ます」


 シノは、狐火の代わりに副司法局長となった男性に言い置いて、輸送機の後部へ向かった。

 そこにうずくまる自身の体よりふた回りも大きなそれを見上げて、シノは目を細める。


「カヤの手を借りるのは癪ですが、今はありがたく使わせていただきましょう……Veild up」


 カヤは白い『青蜂』を纏い、中に居た装殻者と交代すると、巨大なそれの開いた胸郭の中に体を潜り込ませた。


接続(コネクト)


 補助頭脳の言葉と共に胸郭が閉じて、カヤの肉体と『青蜂』がそれと一体化する。


「出して下さい」


 カヤの言葉を受けて輸送機のハッチが開き、彼女は空へと飛び立った。

 陽光を受けて、それの大きく無骨な背部スラスターが開き、鮮やかに外殻がきらめく。


 それは、黒の一号に似た色合いの巨殻(ギガンテス)だった。

 正確には、巨殻を模したもの。


 外部干渉型補助頭脳(アウターベイル)と同時に開発されていた、政府軍の切り札となり得る力。

 その、試作型だ。


 名を、拡張型充填殻(サイクロプス)


 本来、巨殻を動かす為の増幅核(ブースト・コア)を扱えるのは、人体改造型のみである。

 その代わりに、サイクロプスには新たな外殻駆動システムが備わっていた。


 霊子エネルギーを貯める充霊池の開発に、日本政府軍は成功していたのだ。

 しかし充霊池は、一度限りの使い捨てな上に高価なもの。

 さらに直前までコアによる霊子エネルギー供給を受けていなければ、霊子エネルギーが自然拡散してしまう不完全なものだ。


 それでも。


「サード・コピーは、流石に捌式を纏う精鋭でも手に余る相手でしょう。短期決着を……」


 と、山の辺りにある巨大なエネルギー反応を目指すカヤの目に、海の中から飛び出してきた三つのものが映った。


 タコのようなガンベイルが二つと、半分液化しているイプシロン。

 宙を舞う彼らの周囲には、無数の小さな球体……マグネボールが浮いている。

 彼らの出現と同時に、山に居たサード・コピーの反応も彼らへ動き始めた。


「司法局よりガンベイルへ。サード・コピーがそちらへ行きます。協力する気があるなら合流を」

『あ? 巨殻!? 誰だ!?』

『黒の一号や参式とは形状が違いますねぇ〜』

「説明は後ほど。私は空井シノです」

『【黒の兵士】か!』

『そして、現司法局長……日本政府も油断なりませんねぇ。そんなものを作ってたなんてぇ〜』


 二人はイプシロンを追うのをやめて、シノの方へ向かい始めた。

 シノは、エネルギー残量を確認して目を細める。


「思ったより、時間がなさ過ぎますね。まだまだ欠陥品です」


 シノは、《白の装殻》の二人に自分の頭上に待機するよう要請し、眼下の山裾で合流したサード・コピーとイプシロンを眺めた。

 周囲からは、襲来体が湧き始めている。

 ぼやぼやしていてはジリ貧になりそうだった。


「私が最初に仕掛けます。周囲の襲来体が潰れたら即座に追撃を」

『手があるのか? 俺の《轟水落天(スティールダイヴ)》なら一気に行けるぜ?』

「この外殻は稼動時間が短いのです。それに私の直接戦闘能力は、カヤ程には高くない……」


 彼女の双子の姉は、花立ほどではないが十分に規格外なのだ。

 シノ自身も戦闘能力が低いわけではないのだが、《黒の装殻》と肩を並べる事が出来るほどではなく狙撃による援護が主だった。


「あなた方がいるなら私はサポートに回ります。コア・コピー達を潰して下さい」


 シノは、両肩のキャノンを展開した。

 透明な球体を砲口に備えたそれは、参式の《紅の爆撃(クリムゾンバースト)》を参考にした広域殲滅武装『クリムゾンレーザー』だ。


「行きます。出力解放(アビリティオーダー)!!」

承認(レディ)


 キュゥン、と音を立てて、充霊池を瞬時に消費して霊子エネルギーを注ぎ込まれたキャノンの球体が輝き、無数に球体内で拡散されたレーザーを発射した。

 狙い通りにコア・コピーを中心とした範囲を巻き込んだレーザーの照射面で、生まれかけた襲来体が焼き尽くされていくが、サード・コピーの防御膜によってコア・コピー二体への攻撃は防がれる。


「今です!」


 シノの合図で、待機していた《白の装殻》の二人が飛び出した。

 

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