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黒の一号・終章  作者: 凡仙狼のpeco
『愛媛隕石篇』
1/58

序章:黒の弐号

「ハァイ、ハジメ。久しぶりねん☆」


 明るい口調と共に。

 ハジメとコウのいる墓地に舞い降りたのは、美しい金髪の白人女性だった。


 スタイルは完璧。

 非の打ち所のない、空色の瞳を持つ美貌に淡い微笑みを浮かべて。


 天女のように、彼女は、ふわり、と降臨した。


 その体は透けている。

 彼女は、ホログラフによる映像のようだ。


 ニーナ・ソトニコワ。


 宙に浮かぶ彼女を見上げる、目の前のハジメがどんな表情をしているのかは、サングラスの奥に隠されて見えない。


「準備が、整った」

「そうみたいねん。彼が〝生まれ変わり〟さん?」


 邪気のない様子で小首を傾げる彼女に、目を向けられたコウは頭を下げる。


「北野コウです」


 彼女は一つうなずくと、ハジメに目を向けた。


「思った以上に早かったわねん」

「ああ。いつ戻れる?」

「そうねん。明日中には。送られた座標でいいのかしらん?」

「ああ、待っている。……ようやくだ」

「そうねん。一人ぼっちは辛かったし、戻ったらお酒の一つでも飲ませてくれる? 愛でてくれても良いのよん?」


 笑みの種類を期待に満ちたものに変えて言う彼女に、ハジメは眉根を寄せた。


「……極上のウィスキーを用意している」

「ああん、相変わらずツレないわねん。……また後でねん?」

「ああ」


 ニーナは、ごく短い言葉をハジメと交わして、姿を消した。


「ハジメさん。彼女が?」

「そう。二番目の、そして最後の《黒の装殻(シェルベイル)》」


 コウの問いかけに、ハジメは彼女の、装殻者としての名を口にする。


「〝天女の爪牙〟―――黒の弐号だ」


※※※


 かつて、英雄と呼ばれた男がいた。


 異形の化け物《寄生殻(パラベラム)》を使い、人類を混乱の渦へと叩き落とした悪の組織を、たった一人で壊滅させた男。


 名は、黒の一号。


 しかし世間の認識とは違い、実際には、彼は仲間と共に組織を壊滅させた。

 その人数は三人。


 この時、それが表沙汰になる事はなかった。


 後に、宇宙より来訪した異質な生命体《襲来体(イミテイト)》が大阪に落下。

 彼らの侵攻の際、人類にその存在を確認されたもう一人の人体改造型装殻者は、黒の弐号と呼ばれ。


 その事件の際に生まれた参式(ザ・サード)、そして肆号(ハイブリッド)と共に黒の一号を助け、敵の長である襲来体母体(マザー)を封印する。


 彼らは人々より《黒の装殻(シェルベイル)》と総称され、その名声はさらに高まった。


 二度の脅威に晒された事で疲弊した日本の復興の為、黒の一号は自身の力を再現したものを『装殻(ベイルド)』という強化外殻として普及させる。

 その力を我が物にしようとした米国の侵攻……『日米装殻争乱』と呼ばれる、四国を舞台とした戦いを経て。

 黒の伍号・大甲(ビートコア)をも加えて人類最強と謳われた《黒の装殻(シェルベイル)》は。




 同時に、その人体改造技術の独占と秘匿により人類から追われる事となる。




 やがて黒の一号は協力者と共に【黒殻(アンチボディ)】を設立し、その総帥となった。

 そして人類最悪のテロリストと呼ばれるようになった黒の一号は、日本海沿岸に位置する現在の日本の第二中枢都市『フラスコル・シティ』にて一つの殺人事件を起こす。


 その事件で、黒の零号と呼ばれる存在を仲間として得た彼は、復活した襲来体母体(マザー)の撃退、異界より現れた同一存在《白の装殻(クルセイダー)》との闘争と和解をもって、今に至る。


 【黒殻(アンチボディ)】の真の目的は、未だ遠い宇宙に居る真の襲来体……《星喰使(オーファン・ウィルス)》の殲滅。


 その準備を整える間、たった一人《星喰使》の侵攻を抑えていた黒の弐号を。

 彼は、《星喰使》の先遣隊である異界母体(アナザー)を撃退する為に、呼び戻す。


 今、《黒の装殻》の集結を以て。

 彼が立てた『黒殻計画』が、その全容を現した。


 アナザー、そして《星喰使》との、避けられぬ死闘を見据えながら。

 黒の一号は、己に架せられた使命を全うする為に動き出したのだった……。


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