1、はじまりはじまり
あるところに、春・夏・秋・冬、それぞれの季節を司る女王様がおりました。
女王様たちは決められた期間、交替で塔に住むことになっています。
そうすることで、その国にその女王様の季節が訪れるのです。
ところがある時、いつまで経っても冬が終わらなくなりました。
冬の女王様が塔に入ったままなのです。
辺り一面雪に覆われ、このままではいずれ食べる物も尽きてしまいます。
困った王様はお触れを出しました。
<冬の女王を春の女王と交替させたものには好きな褒美を取らせよう。
ただし、冬の女王が次に廻って来られなくなる方法は認めない。
季節を廻らせることを妨げてはならない>
その国の外れの小さな小さな村に住む少年は、そのお触れを見ると大人たちに尋ねました。
「冬の女王と春の女王を交替させるためにはどうしたらいいの?」
大人たちは答えます。
「そんなの分からないよ。誰でも良いから女王様を交替させてくれないかな」
「それが分かれば王様が何とかしてくれるだろう。早く春が来ないだろうか」
少年はもう一度尋ねます。
「冬の女王と春の女王を交替させに行かないの?」
大人たちは答えます。
「こんな小さな村の住人に出来るわけないよ」
「王様や騎士様達が何とかしてくれるだろう」
誰もが春を待ち望み、誰もが女王の交替を望みながら、誰も行こうとしないことに少年は疑問を持ちました。
「僕が冬の女王と春の女王を交替させてみせるよ」
同じ村に住む幼なじみの少女はそんな少年に向かって言います。
「そんなの無理よ」
村に住む大人たちにも同じことを言われましたが、少年は諦めません。
夜中にこっそり村を抜け出して塔にむけて出発します。
「あんただけじゃ心配だからあたしも行くわ」
仕方なさそうに少女も一緒に抜け出します。