第一章 先生の頼み(5)
オーファ・レスフィは、それからしばらく一言も発しなかった。僕が、運ばれてきたオレンジジュースに手を付けず、蛇に睨まれた蛙のように固まっていたからだろう。自分の話を相手が聞いていてくれなかったのではないかと思う時、人は不安と、相手への憤りと、もう一度話さなければならない面倒臭さが入れ混じって沈黙してしまうようだ。
「それは、僕でなければいけないんですか?」
唯一残った希望だった。僕を派遣するという事実が学校側で決定したものだったとしても、僕の意思を無視するやり方はフェアではない。そもそもなぜ、生徒を宮殿に派遣しなければならないのか、まったくもって謎だった。
「残念だけど既に決定したことなんだ。宮殿にももう返事を出してある」
絶対に間違っている。僕には、拒否する権限は与えられていないのだから。それは数ある将来への道の中から強制的に1つに絞られてしまったのと同じくらい悲惨なことだった。少なくとも僕にとっては。
僕には、心に溜め込んだ怒りを周囲にぶちまけてしまうほどの勇気は無く、かといって怒りを心の巣に溜め込んで表に出さないようにする忍耐も持ち合わせてはいなかった。要するに、僕はどうしようもなく情けない男だったのだ。湧き起こる怒りを上手に排泄する手段を持ち合わせていないのだから。
「デイム君。本当にすまないが、君にやってもらうしかないんだ。安全面は心配ない。学校側から護衛をつけるからね」
護衛。明らかに場違いに乱入してきた言葉だ。学校は、僕を追い出すのではないのか。追い出すはずの人間が宮殿に向かうのに護衛などつけるだろうか。消えかかっていた希望の灯火が再び勢いよく燃え始めた。
「先生。僕は退学になるんじゃないんですか?」
「退学?どういうことだい。君が選ばれたのは、日頃の態度と剣の腕が校内で高く評価されたからだよ」
さっきまで考えていたことを全部忘れてしまいたかった。
変なとこで切れてしまいすみません。時間の都合で。。。
更新遅れてすみません。こちらも時間の都合で。