彼は自覚がない。
此処は学校の廊下。そこには、眼鏡をかけた男と制服を着崩した二人の男がいた。
「くたばれ!」
バキィ!
制服を着崩した男の一人が眼鏡をかけた男を殴る。
「テメェ、調子に乗り過ぎなんだよ!」
もう一人の男は殴った男の隣で眼鏡の男に文句を言う。
「…………」
眼鏡の男は何の反応を見せない。まるで、殴られた事すら興味を持たないかのように黙っていた。
「チッ、スカしてんじゃねぇぞ糞が!」
ドゴッ!
眼鏡の男の反応に苛立った男は腹を蹴る。
「テメェ、調子に乗り過ぎなんだよ!」
隣の男は同じ文句を言う。
「そこまでだ!」
現れたのはイケメン。
「また邪魔するつもりかよ、神山ァ!」
「あぁ、邪魔するさ。僕の前で弱い者イジメは許さない!」
神山の言葉の裏を返せば、自分の目の前じゃなければイジメていいよ。と、言う事になる。
「肩故里君、やべぇよ。アイツ、下梨先輩をぶっ飛ばしたんだぜ。俺達じゃかなわねぇよ」
文句を言っていた男は暴力を振るっていた男に耳打ちをした。
「糞っ………良かったなぁ、怠惰ァ!今日はこれで許してやるよ。これに懲りたら二度と小雪に近づくんじゃねぇぞ!」
そう言って、男達は去って行った。怠惰はそれを確認し、その場を立ち去ろうとする。
「待てよ!」
しかし、神山がそれを良しとはしなかった。
「なんで、抵抗しないんだ!それなんだから君は駄目なんだ。いいか?皆、君のその態度に迷惑しているんだ。それに君みたいな男が小雪さんの近くにいる資格はない!分かったか!……あっ、おい!何処に行く!逃げる気か!」
怠惰はその言葉を無視して教室に向かった。
ハロー、この物語の主人公こと怠惰 骸でーす。
なんか知らんが俺は朝、学校に来て、制服を着崩した二人の男に戯れ付かれていた。なんかベラベラ言っていたが俺はイヤホンを付け、音楽を聴いていたので何を言っているのかは知らん。つーか、この光景は毎度の事だ。
本当、何がしたいんだコイツ等?毎度、毎度ポコポコ叩いて来やがって。アレか?構ってチャンとかですか?
ヤダよ面倒くせぇ。
……あっ、また何か来やがった。誰だっけ?確か、横長君?だった気がする。まぁ、あれだ。この横長君?が来るとこの戯れ合いは終了する。
……眠い。
なんか知らん間に二人も帰ったし、俺も教室に向かうか。
……あれ?まだ用があったの?横長君がなんか怒ってる。つーか、そろそろ朝のSHL始まりそうだし、無視すっか。
ガラガラガラ
俺は教室に入り、イヤホンを外し、席についた。
「おう、おはよう」
今、俺に話し掛けたのは鬼ヶ島 小雪。クラスメートだ。言っておくが、別に幼馴染みではない。つーか幼馴染みなんていねぇし。
「おっす」
「はぁー、おはようって言ったら、おはようって返すのが普通だろ?」
「今のおっすは、おはようございますを略したからいいんだよ」
「まぁいいか。ほら、今日の弁当」
「さんきゅー」
この弁当は俺が学校に行く唯一の楽しみ。俺、メシ喰うの好きだし。家庭科の調理実習?終わったよ、そんなものは。
「さて、寝るか」
俺は貰った弁当を鞄の中にしまい、枕を取り、眼鏡を外し、愛用のアイマスクを付けて眠りについた。
だから俺は気付かなかった。数分後、教室に魔法陣が現れた事に。