幕間2 漆黒と黒衣
第1章のエピローグ、最後の3行の意味は、これでわかると思います。
その日、ライはフィアンナと共にレグロスの呼びだされていた。
首を傾げたのは、呼び出されたのが謁見の間であったことである。そこには国王はいずにレグロス王子とエンパートのみがいた。
「王子?」
「……」
ため息をつきそうなレグロスとエンパートに、ライトフィアンナはいうべき言葉がみつからない。
やがて、ため息をついたレグロスが口を開く。
「お前を訪ねてきた男がいる。お前と同郷だそうだ」
「はい?」
「まぁ、見た目でお前と同郷であると、認めるしかないんだが……」
「わたしと同じ色の髪と瞳、ですか?」
「ああ、その通りだ」
「で、会うか?」
興味がないといえば嘘になると、ライは思っていた。
自分と同じならその男も異世界人であるが、果たして信じるに値するかは不明である。いくら同郷といっても、相容れない相手なら見捨ててもいいだろうと考えていた。どう判断するにしても会ってみないことには、なんともしようがないのである。
「会いましょう」
「わかった」
しばらくしてフードを被った男と銀髪の女が、謁見の間に姿を見せる。ライを見たフードの男の口元が笑みに変わった。
「まいった。うわさの騎士があんただったとはな」
「フードを取りませんか。あなたがわたしと同郷であったとしても、あなたに理になることはしませんよ」
「ああ、そうだな」
フードを後ろにはねのけて男の顔があらわになると、フィアンナは驚いたような吐息を漏らし、ライは首を傾げていた。どこかで見たような顔だった。
「久しぶりだな、ライ。アキト・シグラ、シグだ」
「まさか……あなたが……でも、どうしてです? わたしが覚えているあなたとは年齢が違うようですが……」
「ああ、それか。俺はここにきたのが4年前、今は22だな。ライが半年ほどなら同年になるか」
「4年前?」
「ああ、俺は東にある島国ヒゼリアに3年いたからな。そこからこっちに渡って1年だ。で、残虐非道な漆黒の騎士のうわさを耳にして、そいつが俺と同じ夜色の髪と瞳を持つと聴いたからここまで来たんだ。で、そのうわさの騎士があんただったとね」
「残虐非道……ですか」
ライの顔に笑みが浮かぶ。同じようにシグの顔にも笑みが浮かんでいた。
「あんたが、いや、あんたにも護りたい者ができた。と、いう事なんだろう。良かったじゃないか、俺たちの剣技がここでは役に立つし『ミカヅキ』さえ使えれば敵無しだ。俺だって、あんたと同じ立場だったら同じ事をするさ」
「シグ……」
ライが目を見張った。
「向こうにいた時は分からなかったが、今ならわかる。あんたは、すべてどうでもよかったんだと、な。一族の誇りさえも、自分が生きてる事も」
「シグ、わたしは……」
「だからこそ、銀月の乙女を護るために残虐非道になった」
「わたしを非道だと、いいますか?」
「いいや、よくやった。と、いうぜ」
「……」
なにも言えないライの隣でフィアンナが微笑んでいる。
「よくわかりますね」
「一族のなかでは俺が一番、ライと一緒に長く戦ってきたからな。それに、当主とあの男を見ていた顔が忘れられなかったからか」
「うらやましいですね。男同士の友情、ですか?」
「いいや、違う」
首を振るシグは、笑っていた。
「俺も同じだからだ。俺は護りたい奴を護れなかった。その時に決めた。護りたい奴を護るためなら、どんな事でも、どう言われようと貫き通すと」
シグはライを見て続けた。
「改めて名乗る。ヒゼリア王国にて『黒衣の騎士』と呼ばれた化け物。分厚い王都の城門を切り裂いた『ミカヅキ』を振るうシムラ一族がシグラの当主アキト。これよりライの配下につこう」
「いいのですか。アキト」
「かまわないぜ。それから、呼び名はシグだ」
この後、銀月の騎士団が結成され飛龍隊を『漆黒の騎士』ライが率い、騎馬隊を『黒衣の騎士』シグが率いて、ナセル王国に貢献していくのであった。
ここで出てくる「当主とあの男」は、異形の戦士の「紫村美沙と桂木翔」の事です。異形の戦士第2章で行方不明になった二人は、異世界「フリオニア」に来てたわけです。
ちなみにシグの物語は「フリオニア大陸物語 ヒゼリア編」になります。まだ半分はどしかプロットができていないので、投稿はかなり先になりますが、かならず投稿したいと思っています。
では次回から第2章を開始します。
主人公はライやシグではありませんが、お楽しみに。




