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昼休みの保健室だから誰か一人ぐらい気分が悪くて寝てる人がいるんじゃ無いのかと思ったけれど、実際入ってみると本当に誰もいなかった。そう、誰も。養護教諭すら。って言うかこの学校の養護教諭には未だに一回しかあったことが無い気がするんだけど。確かその時はなんか木登りして遊んでたような。よくそれで就職出来たな、と言いたい。
「で、マッシュルームが効かなかったってどういうこと?」
真っ白なベッドに腰掛けたナツミが髪の毛をポニーテールに縛りながらそう言った。うん、やっぱりナツミは髪の毛下ろしてるよりポニーテールの方が似合う。
「どういうことって聞かれたってそのままの意味なんだけど。」
「少なくとも偽物とかじゃ無い筈よ。実際あたしも使ったけど思いっきりキマったから。」
「マジで? 私全然効かなかったんだけど。」
「もしかしたらそう言うのが効きにくい体質なんじゃ無いの?」
「何それ、無茶苦茶損な体質じゃん……。」
「クスリなんてやらなきゃいい話でしょ。」
「あんたが言うな。」
これはアレか、神様からのダメ。ゼッタイ。とか言う思し召しなのだろうか。オーマイゴッド、ファッキュー。何で煙草も酒もオッケーでクスリは駄目なんだ。……あ、煙草も酒も一応未成年だからアウトか。でも私は煙草も酒も基本的にやって無いんだからクスリくらいオッケーしてくれたっていいじゃ無いかクソったれ。
「で、ちょっと話は変わるんだけど。」
とナツミが少し身を乗り出して言う。
「何?」
「キリ、今朝フルタと喋ってたでしょ。」
いつの間にか咥えていた煙草の煙を吹きながらナツミが言った。少し強く問いただすような口調。
「ちょっとじゃ無くてびっくりする程話変わってるよそれ。」
「キリはあんまり学校来ないから知んないかもだけど、あいつ、ヤク中だって有名だよ。」
「あんたが言うなよ。」
私がそうツッコむと、ナツミはちょっとムッとした顔でケータイをパチンと閉じて、「あたしだから言えるのよ」と言った。
「あたしはクスリで飛ぶ感覚を愛してるだけのただのジャンキーだけど、あいつはあたしと違って本当にヤクが無いと生きていけない依存者なの。見てて分かる。」
「へえ……。」
いや、いきなりそんな話をされたところで反応に困ると言うか何というか。ここで可愛い女子高生なら「きゃっ、何それこわーい」とか言わなきゃ駄目なのかなぁ? いやいやそんなの私にゃ無理だって。
「まあ適当に喋ってるだけだったら全然構わないんだけど、付き合いたいとかそう言うふうには思わない方がいいわよ、危ないから。」
「……付き合う? はい?」
予想外過ぎて声が裏返った。もし今カツ丼食ってたら米粒が鼻に全力で突入してた自信があるぜ。
いやいや付き合うって。今朝初めて喋ったような男子と何がどうなって付き合うとか言う話になるんだよ。あり得るとすれば私がタスクに一目惚れした可能性とかだけれど、そんなきゃぴきゃぴした感受性は残念ながら持ち合わせていねえぜ。
「あんたがそう言う気じゃ無いんだったら言うことは何も無いわよ、じゃあ、そろそろ授業始まるから戻らなくちゃ。」
時計を見ると、次の授業まで後二分。煙草の火を消して保健室から出て行くナツミを見送りながらベットに横になった。ふっかふか。気持ちいいな、子宮にいるみたい。勿論子宮にいた頃の記憶なんてあるわけも無いけれど、きっとこんな感じで羊水に包まれて幸福で満たされてるんだろうな、なんて言ってる場合じゃ無い、普通に小テスト亓限目だし私も戻んなくちゃ。
そうして私は焦って起き上がり、教室目指して全速力で走りだすのであった。




