プルートの嘆き
冥王星が惑星ではなくなるらしい。
このニュースを耳にして、私はひどく心配になった。
これから先、彼の星は生きていけるのだろうか。
宇宙最果ての惑星だった、あの星は。
例えば、お前は人間としては小さすぎるから人間だと認められない、と私が言われたらどうするだろう。
生き物としては十分に生きていけるけれども、とある瞬間から人間であることを捨てねばならないとするのなら。
また、もしもこうだったら、どうするだろう。
私の家が余りにも日本の果てにあるから、日本人として認められないなんて言われたら。
それまで日本人として生きてきた日々を否定されて、私はどこへ行けばいいのだろう。
そして、今まさに。そんな状況に追いやられている冥王星は、どうするのだろう。
惑星としては小さいけれども、星としては多少大きい厄介者のレッテルを貼られて。
あんなに端っこにいるのに、太陽の家に入ることを許されないまま、どこか辿り着ける場所はあるのだろうか。
大小様々な星に囲まれて、酷いことを言われたりしないだろうか。
心ない虐めを受けたりしないのだろうか。
地球で呑気に朝食をとる私が、呆然とそんなことを考えている間に、ニュースは移り変わり、張り付いた笑顔のキャスターが天気を伝えていた。
窓の外は、テレビの中で彼女が言うように、どんよりとした灰色に満ちている。
口に含んだパンが上手く飲み込めず、クッと呻き、私は再びカーテンの隙間から覗く世界を見やった。
雨を孕んで巡る大気の遙か向こうにある冥王星に思いを馳せる。
太陽の家族に戻れるといいのにね。
そっと祈り、私は立ち上がった。