憎しみの涙
京子の目から、涙が、こぼれ落ちた。それは、悲しみの涙ではなく、憎しみの涙だった。
京子には、親しく付き合っていた男性がいた。良純、30歳。京子より、2つ年上だった。本当に、仲が良くて、同棲もしていたのだ。どこに行くのも一緒だった。いずれは、結婚するものと、京子は、思っていた。そう、あの時までは。
京子の大親友の薫が、京子のところに、田舎から、遊びに来るというのだ。京子は、喜んで、迎え入れた。久しぶりに会うので、とても、楽しみだった。薫とは、幼稚園の頃からの友達で、本当に、仲良しだった。
せっかくの機会だからと思い、良純を、紹介がてら、食事をすることにしたのだ。約束のお店で、3人で、テーブルにつき、自己紹介した後に、いろんなことを話した。話は、盛り上がっていた。
京子が、トイレにたったとき、まさかの、良純は、薫に、電話番号を、そっと渡したのだ。
京子は、それを、知るはずもなかった。トイレから、戻り、また、話し始めた。夜も、遅くなったので、帰ることにした。薫は、ホテルまで、タクシーで、帰って行った。見送ったあと、2人は、アパートに、帰った。
京子が、良純に、薫の印象を聞くと、かわいらしい子だな、と、行った。何気ない一言だった。
次の日は、3人で、居酒屋に行って、飲んだ。京子は、とても、楽しく過ごしていた。
最終日、薫が、突然、都合が悪いと言ってきた。京子は、大丈夫だよ、と、言った。
その日は、良純と薫が、京子に隠れて、デートしたのだ。しかも、初日に、3人で行ったレストランで。その後は、2人で、ホテルに向かって、歩いていた。
そんなことは、全く知らない京子は、アパートで、晩ご飯のしたくをしていた。裏切られているとも知らずに。
良純は、最初は、いっときの火遊びと考えていた。でも、薫と話していくうちに、薫の方に、どんどん、惹かれていったのだ。そして、肉体関係を持ってしまった。一夜のことにするつもりが、良純は、離れられなくなっていた。それくらい、燃え上がったのだ。
薫も、京子の彼氏じゃなかったら、付き合いたいと思う様になっていた。悪いと思いつつも、良純に惹かれていった。
京子は、良純の帰りが遅いことを、心配していた。良純は、終電で、帰ってきた。たまたま、同期のやつと、偶然ばったり会って、飲みに行った、と、良純は、京子にウソをついた。
次の日は、薫が、田舎に帰るのを、二人で、見送りに、駅に行った。なぜか、薫は、元気がなかった。しかも、涙ぐんでいたのだ。
京子は、心配になり、大丈夫かと、聞いた。
薫は、涙を拭いて、大丈夫だよ、と、行って、新幹線に、乗り込んだ。
その間、良純は、なんとなく、落ち着きが、なかった。ソワソワした感じだった。元気もなかった。
新幹線が、発車した。良純は、じっと、薫を見ていた。薫もまた、良純を見ていた。京子は、別になんとも、思わなかった。まさか、その日で、終わりになるとは、思わずに。
アパートに帰った2人は、なんとなく、ぎこちない感じになっていた。なぜなのかは、わからなかった。良純の落ち込みが、ひどかったからかもしれない。良純は、京子に、「話があるんだ。」と、言った。京子は、てっきり、結婚話なのかな、と、思い、気持ちが、高揚していた。
次の瞬間、良純の口からは、「別れてほしい。」の言葉が、出た。京子は、何が何だか、理解できなかった。「なんで?」京子は、良純に聞いた。しばらく間を置いて、良純が答えた。「好きな人ができたから。」京子は、信じられなかった。そんな兆候は、みじんも感じなかったからだ。京子は、続けた。「いつから?」良純は、「最近。」と、答えた。京子は、女の感が、働いた。「まさか、相手は、薫じゃないよね?」良純は、「薫さんだよ。」と言った。
京子は、冷静では、いられなくなっていた。良純の頬を平手うちした。京子は、もう何も、いうことがなかった。あまりの衝撃に、何も、考えられなくなっていたのだ。
良純は、荷物をまとめて、出ていった。行く当てもなかったので、当分、友達のところに、いることにしたのだ。
良純は、薫に、連絡をとった。京子とは、別れたから、結婚しよう、と言って、プロポーズをした。薫は、京子に、悪いと、思いながらも、良純のプロポーズを受けた。
間もなくして、婚約して、結婚の準備もできていた。そして、2人は、京子にも、結婚式の招待状を送った。
京子は、それを見て、涙が止まらなかった。悲しみの涙ではなく、憎しみの涙だった。




