ハイブ001
森林地帯を重武装した部隊が草木をかき分け進んでいる。
「K、状況はどう?」
先行している偵察隊員に無線が飛ぶ。
「あー、今偵察の無人機出すとこ。地上の見張りは少ないからそのまま1キロは近づいていいよ」
Kの大雑把な情報に不満の無線が飛んでくる。
「K! お前が隠密一番上手くてすでに敵地にたどり着いてんだからしっかりしてくれよ!」
「まだ3キロも距離があって敵空見張りないんだからもっと力抜いてって…あ、Eの部隊の近く。音響探知センサーある。ちょいまち」
猫耳をぴょこっと動かしコントローラーとゴーグルを装着し、1番のチャンネルにアクセスする。視界はEの率いる部隊の少し先に配置した静音射出装置の付いた戦車の様なドローンのカメラが表示される。
「せーのっと!」
戦車から発射された音は風で木々が揺れる音よりも静かにセンサーを破壊した。
「E~進んでいいよ~」
「ったく、どーも。優秀でうらやましいよ」
憎まれ口をたたかれるのも何回目だか。この部隊は未知の感染症、感染すると最終的には皮膚や体毛が金属のように変質し理性を失い非感染者を襲う恐ろしい感染症の撲滅を目指す組織の特殊部隊員だ。彼らは皆いくつもの訓練を各種族の警察、軍隊や民間軍事組織からクリアした折り紙付きの隊員である。
崖の上から一機の無人偵察機が射出され、各小隊の手元に映像が送られる。操作は先程センサーの破壊を担当したK、ケットシーの民兵組織から派遣されている。体が小さいにもかかわらず、重量物を敵に見つかることなく運ぶ彼は部隊の電子戦兼偵察員だ。二機目の無人機も射出される。こちらはカメラの代わりに武装を搭載されている。二機は今回の殲滅拠点のはるか上空を旋回した。
「E。見張りは6人武装はサブマシンガンだねー、KL11かな? 随分豪華な装備で」
「隣国が関わってるかもしれない組織だからな、正式採用銃の型落ちくらいはそりゃあるだろう」
Eは4人の部下とジリジリ目標に近づく。Eはハーフエルフで警察から派遣されており、部下もエルフ、またはハーフエルフかヒューマンという力仕事ではなく射撃制度などの技術面で信頼の置かれる部隊だ。
Eはハンドサインで部隊に散開の合図を出し、扇状に展開した。
「Wの部隊はどうする?見張り倒したら君たちの番だけど…」
ワードックが部隊長の部隊にKが無線を飛ばす。ノイズが2回返ってくる。彼の部隊は軍の特殊部隊出身だ。基本無線は通信ボタンの押す長さだけで報告を行う。
「りょーかーい。じゃあやりますかぁ」
作戦開始の旨が全部隊員の端末に送られる。Eの部隊がサイレンサー付きのライフルで射撃を開始する。全目標にほぼ同時着弾し、確実に絶命させる。
「はーい外は全滅。E部隊は円状に包囲、Wは突入! 航空支援入れるねー」
はるか上空に旋回待機していたドローンにKがチャンネルを接続し、操作を始める。
「3,2,1,投下!」
ヒュー、という落下音が徐々に大きくなり…目標拠点の天井に大穴を開け爆発する。叫び声が聞こえ爆風と共に感染者が窓から地面に落ちてくる。Wの部隊は素早く射撃し命中確認と共に建物へ、Eの部隊は包囲を完了させる。
「感染対策機構だ! ハイブを差し出せ!」
Wの言うハイブとは、目標組織”BBC”の感染者を取り纏めるリーダーだ。角から感染者が飛び出しショットガンを射撃し、命中…したが砂埃が去った後感染者の目の前には盾に弾痕の残った部隊員がハンドガンを構えている光景だった。
Wの部隊は殲滅しながら3階へと駆け上がり最後の部屋へグレネードを放り込み、爆発と共に突入した。
「ハイブはどこだ」
かろうじて息のある感染者に銃を突きつけ聞く。先ほどの爆発で血だらけの彼は、
「くたばれクソッタレが」
ニヤっと笑い中指を立てる。その指には手榴弾の安全ピンがかけられていた。
直後、近くの爆発物に誘爆し、三階部分が火の海に包まれる。
「W! Wの部隊員は状況報告を!」
Kが呼びかけるも無線は帰ってこない。
「K、俺らが最終確認をする。回収班を呼んでくれ」
「…わかった」
回収班は無限軌道の装甲車で近づいてくる。感染者の死体の一部は研究のためサンプルとして採集され、回収できる味方の遺体も回収する。母国へ帰すためでもあるが、感染していない死体は感染体に変異することが確認されているため可能な限り回収しているのだ。
「K、そろそろお前も撤退を…」
「回収班とE! 早く離れて!」
全員の端末に無人機から複数の感染体が接近してきている映像が映し出された。採集作業を中断し撤退を開始する。Kは他の無人機を武装して射出。撤退の支援をした。




