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ピコピコ呪いをかけられて  作者: 楠本恵士
難題・難問編〈〇〇の偉業〉
8/18

第八話・第二の偉業【旧校舎を根城にしているハト軍団を追い払え】

 学園長室でペイペイが、マドカたちに言った。

「【旧校舎を根城にしているハトを、追い払ってもらいたい】」

「はぁ? ハトってあの神社とかにいるハト?」

「そうだ、あのハトだ」


 ピコピコ音をさせて部屋を歩き回って、考えていたマドカが言った。

「そんなもん、ハト業者に頼めば」

「ハト業者ってなんだ……さっさと行け」


  ◇◇◇◇◇◇


 旧校舎に入ったマドカたちは、ハト軍団が根城にしている場所へと向かう。

 歩きながらゲンが言った。

「なんか、幽霊とか地縛霊が潜んでいたり、こっそりとロックガールが楽器練習していそうな場所だな」


 答えるマドカ。

「ロックガールが、楽器を掻き鳴らしていたら、幽霊の方が逃げていくだろう……音撃で祓われて」

「確かに」


 一行はハト軍団が住処にしている、図書室の扉前にやってきた。

「ここだな、学園長の話しだと、書籍が少し残っているって話しだけれど」

 ゲンが扉を開けた瞬間、書籍棚に止まっていたハトたちが、一斉にギロッと赤い丸目をマドカたちに向けた。

 フンで汚れた本棚と書籍……ハト軍団の中で、ひとまわり大きいハトが喋った。


「なんだ……おまえ……たちは」

「うわぁぁぁ⁉ 失礼しました!」

 恐怖でマドカたちは逃げ出した。


  ◇◇◇◇◇◇


 学園長室に駆け込んだマドカたちが、ペイペイに詰め寄る。

 ゲン。

「ハトが喋ったぞ!」

 マドカ。

「どうして、喋るハトがいると言わなかったんだ!」

 ユーロ。

「あのハトさんたちは、食べてもよろしいのですか?」

 ドルドル。

「本棚と書籍がフンだらけだった……あれは掃除をしないと、不衛生だ」


 ペイペイは、ペットボトルのお茶を一口飲んで、平然とした口調で言った。

「喋るのはボスハトの一羽だけだ……図書室にあった本を読んで人間の言葉を覚えた……九官鳥やオウムみたいなもんだ……気にするな」

「気にする! なにかハトを追い出すヒントをくれ」

「そうだな、ハトの豆エサを体に付けて、ハトを油断させれば良くねぇ……さっさと、ハトを追い払ってこい」


  ◇◇◇◇◇◇


 マドカたちは、リベンジで再び、旧校舎の図書室扉前にやって来た。

 ゲンの格好は。

 頭には工事現場のヘルメット。

 ハトの攻撃から、両目を守るためのゴーグルをして。

 粉塵を吸わないように防塵マスク。

 体の各所にプロテクターを装着していて。

 ハトの攻撃を防ぐ盾と、捕獲網を持っていた。


 ゲンの体に貼られた粘着両面テープに、ハトの豆エサを振りかけてマドカが言った。

「これで、バッチリ! エサを求めてきたハトを捕獲したり、盾を振り回せばハトは図書室から逃げていく」

「本当かよ……不安しか無いんだけれど……この装備で上手くいかなかったら、どうするんだよ?」

「その時は、一回り小さいゲンが中から現れてハトを追い払う」


 ゲンの上半身が持ち上がり、一回り小さい同装備のゲンが「任せろ!」と、顔を覗かせて引っ込んだ。

「二体目のゲンが失敗したら、もう少し小さい三体目のゲンが……それも、失敗したら四体目のゲンが……それも」

「もういい、考えたら頭痛くなった……扉を開けろ、突入するぞ」

 ドルドルが扉を開けて図書室に突入するゲン。


 一斉にゲンの方を向いた凶暴なハトたちが、ゲンの体についているハト豆を狙って襲いかかる。

「痛てぇぇぇ、イテッ、イテッ、撤収!」

 頭の中でシミュレーションしていたゲンの作戦イメージが、いとも簡単に極悪ハト軍団の容赦ない攻撃で破壊されたゲンは、悲鳴をあげて逃げ出した。


 ドルドルが閉めた扉の向こうから、ボスハトのドス声で。

「おととい……きやがれ……ポッポーッ」

 と、言うのが聞こえた。


  ◇◇◇◇◇◇


 保健室で、マドカからキズの手当てをされているゲンが言った。

「なにがハト豆を体に油断させるだ……逆にハトが凶暴化したじゃないか、あいつら絶対にベロキなんとかの子孫だ……いててっ」


 少し考えていたユーロが口を開く。

「あのぅ、わたくしが思うに昼間よりは夜の方が、ハトは鳥目ですから追っ払うには効果的だと思います……ここは、夜のジョブチェンジした、蛮族のわたくしに任せてもらえますか……考えがあります」


  ◆◆◆◆◆◆


 夜になり、棍棒斧を担いだ蛮族王女化したユーロが、マドカたちの先頭に立って旧校舎に入る。

「オレに任せな、ハト軍団を旧校舎から追っ払ってやるぜ……そのための助っ人も連れてきた」

 マドカたちの後方の暗闇には、無数の光る目と唸り声があった。

 怖いもの知らずの蛮族ユーロが先頭に、ドルドルがライトで照らす夜の旧校舎を、進むユーロの目に。

 階段の踊り場で、ライトの光りの中に浮かび上がる白い人影が見えた。

 幽霊を見て悲鳴をあげるゲン。

「うわぁ! 出たぁ!」

 長い黒髪が片方の目を隠した、女性幽霊が泣きそうな声で言った。

「見逃してください……ここを追い出されたら、他に行くところが無いんです……後生ですから、放っておいてください」


 蛮族王女のユーロや、ドルドルや、マドカは特に気にする様子もなく幽霊の近くを通過する。

 ユーロが幽霊に一言言った。

「居たかったら、好きなだけ旧校舎にいな……オレたちが、追い払うのはハトで幽霊じゃない」


 ユーロの言葉に幽霊は、深々と頭を下げて消えた。

 ビビるゲンが、マドカに質問する。

「怖くないのか? 幽霊だぞ?」

「なんで怖い? 今のは元々は生きていた人間だろう……無害な人間の成れの果てを、なぜ怖がる?」


 ドルドルが続けて言った。

「異世界にいた時は、死霊使いが操る霊体にも、普通に遭遇していたからな……悪意の無い無害な霊体にも怖がる、現世界の感覚が理解できない」


 歩きながら蛮族ユーロが言った。

「だいたい、生前に特殊な力も無かった人間が、どうして死んで急に人を呪い殺す力を得る……強い意志の力がある生きている人間なら、とり憑こうと近づいてきた幽霊を波動で弾き飛ばすぜ」


 そうこうしている間に、一行はハト軍団が住処にしている図書室前に到着した。

 棍棒斧を構えるユーロ。

「いつでもいいぜ、扉を開けな」

 ドルドルが図書室の扉を押し開けると、ライトで照らされる図書室の中へ、ユーロとユーロが現世界で知り合って親しくなった。

 ニャンコ軍団が、ハトに襲いかかる。


 天敵のニャンコ軍団の奇襲に、夜目の効かないハト軍団はパニックになって、統制が崩れ旧校舎から逃げていった。

「ポッポッポッ!」


 蛮族王女ユーロが、棍棒斧を上下させて、勝利の雄叫びをネコたちと一緒にあげる。

「ニャンニャンニャー」


 こうして、旧校舎からハトが去り……代わりにネコ軍団が旧校舎に住み着いた。

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