第七話・第一の偉業【ジジイの家からタマ回収】
その日──マドカたちと、ゲンはペイペイ学園長の部屋に呼ばれた。
ペイペイが言った。
「最初の難業だ……【学園の校庭近くに住むジジイの家から、飛び込んだ玉を回収してこい】」
「玉?」
「野球ボールとか、サッカーボールとか……あの家のジジイは、家の敷地に飛び込んできた球体は絶対に返してくれないからな……早く行くのだ」
マドカたちは、球体が飛び込みやすい家へと向かった。
◇◇◇◇◇◇
家の表札を見てマドカが言った。
「『玉寄席』いかにも、ボールが飛び込みそうな家だな」
外から家の様子をうかがっていると、いきなり庭木の手入れをしていたジャージ姿の家主が、植木バサミを振りかざして、垣根を飛び越えてマドカたちに襲いかかってきた。
「家を覗いているおまえたちは、詐欺強盗の類いか! 儂も簡単にはやられはせんぞ!」
植木バサミを剣で受け止める、マドカとドルドル。
ボールを返してくれない玉寄席老人が、植木ハサミを受けとめたマドカとドルドルに、笑みを浮かべて言った。
「見事だ……儂の太刀筋を受け止める者が、現世界にいるとは……もしかして、その格好は異世界の者か?」
「そうだけれど」
植木バサミを剣から離すジジイ。
「異世界の若い娘に会ったのは久しぶりだ、家の中で、お茶でも出そう」
マドカたちは、あっさりと玉寄席老人の家に上がらせてもらった。
居間に通されたマドカたちと、ゲンはビックリした。
驚いた拍子にゲンが、上半身を一つ脱ぎそうになるのをユーロが必死に押さえる。
「なんだこりゃ?」
居間の中には、さまざまな球体が飛び込んでいた。
野球ボール、サッカーボール、バスケットボール、バレーボールから……建物の解体時に吊り下げられるクレーン車の鉄球や、運動会の玉送りの紅白の玉まであった。
玉寄席老人が、お茶の準備をしながら言った。
「近くにゴルフの打ちっ放し場や、パチンコ店があるのでゴルフボールや、パチンコ玉も時々飛び込んでくる」
マドカたちが、出されたお茶を飲んでいると。
飛んできた弾丸が、玉寄席老人の湯飲みを直撃した。
「スナイパーが外した流れ弾だ……気にするな」
玉寄席老人が、漬け物に手を伸ばすと今度は、卓球の玉が飛び込んできて、漬け物が乗った皿に命中した。
烈火のごとく、怒りをあらわにする玉寄席老人。
「どこのどいつだぁ! 温泉卓球のピンポン玉を、こんな所まで飛ばしたヤツは!」
その後も、御霊や白ネコのタマや、打ち上げ花火の火薬玉まで飛んできて室内で爆発する。
お茶を飲み終わった玉寄席老人が言った。
「ここは、いろいろと飛んできすぎる……場所を変えようか」
マドカたちは、家の裏にある盆栽棚がある庭に案内された。
「ここなら、それほど玉は飛び込んでこないだろう……たぶん」
マドカが玉寄席老人に、玉を返してくれるように頼む。
玉寄席老人は、即答で返す。
「いやだね……誰が儂の家に飛び込んできたモノを返すものか……返して欲しければ、儂と勝負して勝ってみろ」
そう言うと、玉寄席老人は近くにあった、クレイモア剣を手にして言った。
「実は儂は異世界で、剣術道場の師範代まで務めた男……剣聖には及ばないが、それなりの腕前だと自負しておる……さあ、どこからでもかかってこい!」
ジャージの上を脱ぐと、老人とは思えない鍛えられた筋肉体が現れた。
一歩、進み出た女ドルドルがマドカに向かって言った。
「マドカ、わたしを強く抱き締めて男にしてくれ」
マドカが女ドルドルを抱き締めて、男に変わる。
剣を抜く男ドルドル。
「男のわたしが相手をする」
激突するジジイの剣と、ドルドルの剣が火花を散らす。
次第に若い力に押されて劣勢になった、ジジイのクレイモア剣が、ドルドルの剣に弾き飛ばされて畳に突き刺さった。
尻もちをついた玉寄席老人が、汗だくの中で心地よさそうな笑いを浮かべて言った。
「儂の負けだ……いやぁ、久しぶりに楽しい汗をかいた……儂もな最初に野球ボールが飛び込んできた時には、野球部員が金属バットを持って詫びに来て、儂のクレイモア剣と金属バットで勝負してくれたら野球ボールは返すつもりだった……もう、何年も前の話しだ」
畳からクレイモアを引き抜いて言った。
「約束は守る、敷地内にある玉は好きなだけ回収して持っていけ……良いものだなアオハ……」
玉寄席老人が、スッキリした笑顔で喋っている途中に、飛んできた砲丸投げの鉄球が盆栽棚に命中して、棚と盆栽が半壊する。
爽やかな笑顔から一転して鬼の形相を変わった、玉寄席老人が怒鳴った。
「どこのどいつだ! 儂の家に、砲丸投げの鉄球を投げ込んだヤツは!」




