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ピコピコ呪いをかけられて  作者: 楠本恵士
迷惑な呪い
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第四話・異世界乙女のパジャマパーティー

 ゲンの母親から二階の空き部屋に案内された、マドカとユーロは自分たちが、これから住む部屋を見た。

 階段を登ってマドカたちを案内してきた、母親のリラはマドカの足から聞こえてくるピコピコに、首をかしげながら部屋を見せた。

「ここに住んでください……二階にもトイレとお風呂はありますから」


 リラが去ると、聖女王女のユーロが言った。

「あら、アコーディオンカーテンで仕切られた部屋ですね……では、こちらの部屋をあたくしの部屋にしましょう……反対側の部屋をマドカさんの部屋で」


 男になったドルドルが、マドカとユーロの部屋を覗いて言った。

「ちょっと、わたしが住むコトになる、隣の汚部屋を見てくれないか」

 マドカとユーロが、隣の部屋──元ゲンの部屋を覗く。

「散らかっていますね……ゴミ入れに咲いた、あのティシュのバラの花はなんですの?」

「これは、大掃除が必要だな……片づくまで、あたしたちの部屋で一緒にいればいい……狭いけれど、犬小屋に住むよりはマシだ」


 その時、怒りの形相でゲンが階段を駆け上がって来て怒鳴る。

「おまえら、母さんと妹に何を吹き込んだ! 勝手にオレの部屋をいじくるな」

 向かってきたゲンの体を抱き締める男ドルドル。

 同性の抱擁に動揺するゲン。

 ドルドルの姿が女に変わる、ゲンに抱きつきながらドルドルが言った。

「わたしが男の時に、抱きついてきたらその、まま抱き締めてくれ……少しだったら、女のわたしを抱き締めさせてやる……悪い条件じゃないだろう」


 ドルドルの背中に手を回して、体を抱き締めるゲン。

 美人のドルドルに見惚れて、思わずギュッと強く抱き締めたゲンが言った。

「本当になんなんだ……おまえたち、特におまえ、男になったり、女になったり」

「わたしの名前はドルドルだ……ゲン、君の力が必要だ」

「オレの力?」

「君の部屋を片付ける時に……必要なモノと不必要なモノを指示してほしい」


  ◇◇◇◇◇◇


 窓の外の夕暮れを見ていた、聖女王女ユーロが言った。

「もうすぐ、日没です呪いでジョブチェンジした……蛮族王女の、わたくしが現れます」

 ユーロの姿が粗雑な蛮族王女に変わる。

 蛮族ユーロが言った。

「腹減ったな、さっそくキッチンに行こうぜ! カレーとか言うモノを食べてみたい」


 階段を下りてきた蛮族王女のユーロを見て、フランの目が白点なる。

「あなた誰?」


  ◇◇◇◇◇◇


 女ドルドルが、イスに慎重に腰を下ろす……音が鳴らなくてドルドルが安堵した瞬間、尻からブブブフゥゥと音が聞こえた。

 赤面して、いいワケをするドルドル。

「おナラじゃないんです! お尻の音です……わたしと一緒に屁を垂れてみませんか……うわぁぁ! 恥ずかしい」


 興奮して、皿に盛られた米とカレーを手づかみで食べる蛮族王女ユーロ。

「うめぇ! なんだコレ! 美味すぎる」


 ユーロの肘が、当たったマドカの体がサイコロ状に砕け散り……床でミニマドカになった肉片がピコピコピコピコ……と、キッチンを駆け回り、ゲンは悲鳴をあげた。

「うわぁぁぁぁぁぁ! 今度はなんだぁ! ピコピコピコうるさい!」

 母親のリラと妹のフランは、すでに思考が追いついていなかった。


  ◇◇◇◇◇◇


 カレーも食べ終わって、テレビも観て、お風呂も入ったマドカ、ユーロ、ドルドルの三人は少しだけ片付いたゲンの部屋にパジャマ姿で集まった。

 着慣れない現世界のパジャマに、少し着心地が悪そうな顔をする蛮族王女ユーロ。

「なんか、人喰い鬼のオーガが襲ってきたら、反撃できねぇ服だな」


 マドカが床に胡座(あぐら)をかいている、ドルドルに訊ねる。

「その座り方は大丈夫なのか?」

「あぁ、なぜかこの触り方だとブーブーの呪いは発動しない」


 ここで三人は、互いの体質と、ペイペイからかけられた呪いについて書いてまとめた。


 ピコピコ山の戦士【銀座 (マドカ)

 体質・強い衝撃を受けるとサイコロサイズに体がバラバラになって、ミニマドカになる〔ミニマドカは、自然に集合して元の姿に戻る〕

 呪い・【ピコピコの呪い】歩くと足からピコピコと音がする。


 聖女王女&蛮族王女【ユーロ】

 呪い【ジョブチェンジの呪い】昼は聖女、夜は蛮族に変わる。


 ガーディアンくっころ男女騎士【ドルドル】

 体質・男の時に男に抱き締められると女に。女の時に女に抱き締められると男に変わる。

呪い・【ブーブーの呪い】女の姿の時にイスに座ると、尻から音が鳴る。


 書き並べた、それぞれの特徴を見て、マドカが言った。

「こうして見ると、ユーロだけは体質の特徴はないな」

「おう、オレは昼と夜で姿が変わるだけだぜ……マドカの足の裏ってどんな足の裏しているんだ?」

「見たいの? じゃあ見せてあげる」


 マドカが見せた足の裏は肉球があった。

「この、肉球のせいで歩くとピコピコ音がする」

「お互いに、厄介な呪いをかけられたものだぜ」


 その時──押し入れの戸がスゥーッと開いて、上段に横たわったゲンが顔を覗かせた。

 ドルドルやマドカが、さすがに野外の犬小屋で寝泊まりさせるのは……犬が迷惑するとの判断から、特別に押し入れのスペースをカプセルホテルのように、ゲンが使用するのを認めた──変な気を起こさないのを条件に。


 ゲンが狭い押し入れに、追いやられたコトに対して不満を漏らす。

「なんで、オレが自分の部屋の押し入れで、寝泊まりしないといけないんだよ」

「外のペソの犬小屋よりも、いいだろう」

 ペソというのは、ゲンの家で飼われている大型犬の名前だ。


「そりゃ、そうだけれど……だいたい、おまえたち、どうして呪いをかけられて?」

 ゲンがそう言った時──少し開いていた窓の隙間から、先端が吸盤の矢文が飛んできて、ゲンの額に吸盤が張りついた。

 悲鳴をあげる、鐘暮 ゲン。

「ぎゃぁぁぁ!」

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