第十八話・第十二の偉業【敷地内に侵入してきた食用宇宙人を捕らえて食べる】
学園長室に呼ばれたマドカは口と鼻を押さえた、ペイペイはある干物を七輪で焼いて食べていた。
「なに食べているんだ! あんた!」
「クサヤの干物じゃ……匂いは強烈だが、食べ慣れれば美味いぞメシが進む」
「とにかく、早く難題を言え! 早くこの部屋から出たい」
「【敷地内に侵入してきた食用宇宙人を捕らえて食べたい】」
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中庭のガゼボでマドカは、ペイペイ学園長の今回のとんでもない要望を仲間に伝えた。
ゲンがマトリョーシカのように、体の大きさを変えながら言った。
「宇宙人なんて学園内にいるのか? いたとして、どうやって食用かどうか見分ける?」
ドルドルが何回も座り直して、プープー音をさせながら言った。
「くっころ……見つけたとして素直に、宇宙人が食われてくれるとも思えん」
ユーロが膝に擦り傷をした、男子生徒の聖光治療をしながら言った。
「どんな姿をしているかもわかりませんね」
ユーロからの聖なる光りの治療を受けていた、男子生徒の擦り傷が悪化してボコボコと腐り、小悪魔がキズ口から這い出て現れる。
悲鳴を発する男子生徒。
「うわぁぁぁ!」
「あら、運が悪いですわね……半々の確率で悪い方に当たってしまいましたね……保健室に行ってください」
マドカが言った。
「校内に宇宙人募集の張り紙でもしてみるか」
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『学園内に未来人、超能力者、アンドロイド、〝宇宙人〟、お医者さんがいたら、生徒指導室まできてください』
張り紙をしたマドカたちは、たむろ場の一つとしている生徒指導室で宇宙人が現れるのを待った。
ゲンが張り紙を見ながらマドカに訊ねる。
「こんなんで、本当に宇宙人が見つかるのか? 未来人とかお医者さんってなんだ?」
「フェイクだ……直接、宇宙人だけを募集しても用心して、近寄ってこない可能性もあるからな」
「なるほど」
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張り紙をしてから半日後──教室に学食のおばちゃんがやって来て言った。
「張り紙見たんだけれど……あたしを探していた?」
おばちゃんの口から、カタカタと穴が間の紙が出てきた。
「いや、別におばちゃんを探していたワケじゃないから……探しているのは宇宙人だから」
「なんだ、宇宙人を探しているの……だったら、あたしに心当たりがあるから連れてきて上げようか」
「おばちゃん、宇宙人と知り合いなの?」
◇◇◇◇◇◇
学食のおばちゃんが、宇宙人を連れてきた。
「まずは、学園の女性教論に化けている宇宙人……耳がエルフ耳」
エルフ耳の宇宙人は、プイッと教室を出て行ってしまった。
ゲンが小声でマドカに聞く。
「今のエルフ型宇宙人……食べられるのか?」
次におばちゃんが紹介したのは、悪臭が漂うスライムみたいな宇宙生物だった。
ゲンが言った。
「こんなのが、学園にいたのか?」
おばちゃんが答える。
「薄暗い場所に潜んでいるの……知性は無いから、毒抜きすれば食べれる……次は彼」
おばちゃんが紹介したのは、アーモンド型の目をした。
グレイ型宇宙人が学園の制服を着て立っていた。
「これなら、学園長の所に連れて行ってもいいかも」
◇◇◇◇◇◇
制服を着たグレイ型宇宙人を連れて、マドカたちは学園長室にやって来た。
宇宙人を一目見たペイペイは、舌なめずりをした。
「美味そうじゃのう……さあ、こっちに来るのじゃ」
グレイ型宇宙人を連れて、学園長室隣の調理室にペイペイは入った。
調理室でガタガタと音がして、裸のグレイ型宇宙人が飛び出してきて学園長室から逃げていく。
調理室から、顔を覗かせたペイペイが言った。
「どうやら、生命の危機を感じると分裂して食用宇宙人だけが残る種属のようじゃのう……残った一体を調理しよう……おまえたちにも、食べさせてやる」
ペイペイが調理室に顔を引っ込めた直後に、チェンソーの音が聞こえ、宇宙人の断末魔が聞こえてきた。
◇◇◇◇◇◇
テーブルの上に並べられた、宇宙人料理をマドカたちと一緒に、食べながらペイペイが言った
「どうした? 食が進まないようじゃのう……遠慮しないで食べるがいいぞ」
「いや、さすがにこれはちょっと」
壮絶な宇宙人の料理にマドカたちは、口元を押さえる。
宇宙人の腕肉をしゃぶりながら、ペイペイが言った。
「ここまで、儂の無理難題を聞いてくれたんだから……呪いを解いて異世界に帰ってもいいぞ……どうする?」
マドカが代表して答える。
「呪いは解かなくてもいい……この現世界も悪くない学園の友だちもできたし」
「そうか……新たな世界での生活も、住めば都じゃな」
そう言って呪法師ペイペイは、宇宙人のスープをすすった。