第十六話・第十の偉業【学園敷地内に隠された財宝を見つけろ】
学園長室に呼ばれたマドカは、輝きに目眩がした。
ペイペイが食べている料理の器は黄金色に輝いていた。
食べているローストビーフや、鶏の詰め物料理、子豚の丸焼きも金箔や金粉で黄金色に輝いていた。
「【学園敷地内に隠された財宝を見つけろ】……以上」
ペイペイが飲んでいる、飲み物の中にも金が浮かんでいる。
「今飲んでいるのは、金箔が浮かぶドンペリだ……こっちのスープは金箔入りの佛跳牆だ……美味いのぅ」
マドカがポツリと呟いた。
「趣味が悪い」
◆◆◆◆◆◆
マドカたちは、図書室で学園に隠された、財宝についての記録を調べた。
歩くとピコピコ音がするマドカだけは、図書室の外で体育座りをして待っている。
机の上に積み重ねた書物で調べた要点を、ノートに書き写しているユーロが言った。
「この学園は、なぜか財宝とか埋蔵金には縁が深い地のようですね……甲斐の国の武田家の埋蔵金伝説から、はじまって、徳川幕府の埋蔵金……海賊クックの財宝……盗賊が隠した千両箱……旧日本軍の財宝やナチスの財宝まで、学園の敷地に集結しています」
ドルドルが別の書籍を開いて見せた。
「それだけじゃない……古代インカの財宝とか、ロシアの隠し金まで噂で残っている……学園の遥か地下には古代遺跡が埋まっているとも……空から見たら学園は、ミステリーサークルか地上絵だ」
頭を抱えるゲン。
「なんなんだ、この学園はいったい? 敷地内を掘れば財宝とか遺跡にぶち当たるのか? この間の地上げ屋の目的はコレか」
ドルドルが言った。
「とにかく明日、スコップとかシャベルを持って校庭に集合!」
◆◆◆◆◆◆
マドカたちがスコップやシャベルを持って学校に来ると……すでに校庭は埋蔵物を掘り出そうと集まった者たちで、大変な騒ぎになっていた。
校庭に暗いうちから一番乗りして、一人乗りの小型シャベルカーを操作して掘り起こしているのは。
玉寄席老人だった、玉寄席老人が重機を動かしながら言った。
「学園長からの許可は取ってある……元々、儂の先祖は江戸時代の盗っ人でな、古文書には学園の敷地内に千両箱を埋めたと記されている」
玉寄席老人は、小型シャベルカーを動かして桜の根元を、少し掘り返して直ぐに埋め直した。
「桜の木の下には、掘り起こしてはならないモノが埋まっているという、言い伝えは本当だったのか……南無阿弥陀仏」
校庭には海賊の子孫を名乗る者や、山賊の子孫を名乗る者、皇帝の血筋の者まで集まって、手当たり次第に掘り起こしていた。
その中に、シャベルを持ったクマ番長の姿もあった。
マドカが地面を掘り起こしている、クマ番長に訊ねる。
「番長も宝探しか?」
「あぁ、子供の時にブリキの菓子箱に入れて埋めた、宝箱をな……誰かに掘り起こされる前に見つけないと」
番長の持っているスコップの先端が、ガギッと何か金属のようなモノにぶつかる。
掘っていくとそれは、どこかのクラスが埋めた球体型のタイムカプセルだった。
「こんなもん、いらねぇや」
番長は、掘り出した銀色のタイムカプセルを、遠くに放り投げる。
昼頃になると、校庭のアチラコチラで発掘物の報告が、飛び交うようになった。
「これ、エジプトのミイラ棺だよ……そこの縄文遺跡に埋め直せ」
「うおっ、紐で繋がった寛永通宝が出てきた」
「その宝箱はオレの先祖が埋めた海賊の財宝だ! こっちに渡せ!」
「うおっ、金脈と油田にぶち当たった!」
「うわっ、生ゴミが穴の中から出てきた」
夕暮れになって、校庭から人が居なくなると……ペイペイがやって来て、夕日で地面に映る自分の影の頭の部分を、スコップで掘りはじめた。
校庭の土の中から現れた、夕日に染まる前方後円墳。
スコップの先端からガギッと音がして小判が現れる。
軽く笑ったペイペイは、その小判を持って学園長室に戻ると。
隣の部屋のドアを開けた。
学園長室の隣の部屋には金銀財宝が、山積みになっていた。
ペイペイは、その財宝の山に掘り出してきた、小判を放り込んだ。
短いです