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ピコピコ呪いをかけられて  作者: 楠本恵士
迷惑な呪い
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第一話・ピコピコの呪い……現世界へ

「呪いを解いて欲しければ、現世界に(わし)を追ってくるがいい」

 そう言って幼女姿で、顔の鼻梁(びりょう)を横切る縫合線がある。

 赤と青のオッドアイな呪法師『ペイペイ』は、不敵な笑いを浮かべながら。

 地獄にあるという、杖の上に乗った生首が付いた人頭杖(にんずじょう)のような……両目を閉じた昭和の黒ギャル首の杖を掲げて呪法を発動させると。


 異世界から現世界へ繋がるトンネルを作ったペイペイは、トンネルの中に入っていった。

 その場から一歩も動けない、ピコピコ山の戦士『銀座 円(ぎんざ マドカ)』に、振り返って言った。

「異世界で儂が呪いをかけた者は、おまえを含めて三人……その者が到着するまで、現世界へ繋がるトンネルは開いておいてやる」


 そして、ペイペイは恐ろしいコトを付け加えた。

「その三人以外の人間や動物が、このトンネルを通って現世界に行こうとすれば……血肉の塊に変わる呪いをかけてある」

 飛んできた甲虫がトンネルに入った途端、甲虫はミンチされて肉の塊になった。


 前を向いてトンネルを進みながら、幼女姿のペイペイが言った。

「この異世界……異界大陸レザリムスの法則は、おぬしも知らぬわけはなかろう」


 銀座 円こと〈マドカ〉は、現世界からこの世界に迷い込んできた父親から、幼い頃から聞かされて知っていた。

(現世界人は、レザリムスの異世界からトンネルを抜けて元の世界に戻ろうとすると、特別な例を除いて……ウ●コになってしまう法則が発動する)


 異界大陸国レザリムスは、現世界との交流もあり……現世界の知識も浸透している。

 マドカの父親は、現世界の〝はろうぃん〟とかいう仮装祭りで〝銀座すくらんぶる交差点〟とかいう場所で酒に酔ってバカやって……異世界に転移してきたらしい。


 そして、異世界人の女性と家庭を作って、マドカが誕生した。

 動けないマドカは、剣の柄を握り締めて、悔しそうに唇を噛み締めた。


  ◆◆◆◆◆◆


 現世界トンネルの前で、火を焚いて一人異世界キャンプをしていた、マドカの前に夜──呪いをかけられた二人目が現れた。

「臭うな、幼女呪法師の臭いを辿ってここまで来たら……あのトンネルの中から、プンプン臭いやがる」


 現れたのは蛮族の王女だった。

 赤い髪を無造作に縛った蛮族王女は、焚き火を挟んで、マドカから三角点の二点目の丸太に腰を下ろす。

 蛮族王女は、担いでいた棍棒に斧の刃が付いた武器を近くに置くと。

 腰に提げている布袋から、生肉を取り出してかぶりつく。


 少し干した生肉をかじりながら、蛮族王女がマドカに訊ねる。

「あんたが、クサレ幼女呪法師が言っていた……呪いをかけられた一人か、名前は?」


 マドカが静かな口調で言った。

「そちらが名乗るのが先だろう……焚き火の所有者は、あたしだ」

「それは失礼、蛮族だから礼儀を知らない……オレの名前は『ユーロ』……聖女王女&蛮族王女だ」

「聖女王女? どこが聖女?」

「それは、朝になればわかる……歩き疲れた、オレは寝る」

 そう言うと蛮族王女ユーロは、マドカに背を向けて眠ってしまい。

 マドカも眠った。


   ◆◆◆◆◆◆


 朝になり、目覚めたマドカは消えかけている焚き火を小枝で掻き混ぜている、清楚で可憐な聖女の姿を蛮族王女がいた場所で見た。

 聖女王女に変わったユーロが、笑顔で言った。

「おはようございます……昨夜はお楽しみでしたね……この挨拶でいいんですか? この地域の朝の挨拶は?」


 ユーロがかけられた呪いは、夜間は蛮族王女……昼間は聖女王女の【ジョブチェンジ呪い】だった。


   ◆◆◆◆◆◆


 マドカとユーロが三人目を待っていると翌日──その人物は現れた。

「ここか、あの呪法師が言っていた現世界に繋がる、トンネルがある場所は」

 現れたのは、首から下を甲冑で固めた女性騎士だった。

 女性騎士が自己紹介をする。

「わたしの名前は、ガーディアンくっころ男女(おとこおんな)騎士『ドルドル』……呪われた者だ」


 マドカが丸太に座るように勧めると、なぜかドルドルは丁重に断った。

「すまない、この姿の時は座れない……悪いが、わたしを抱きしめてくれないか……女性の腕で」

 ユーロがドルドルを抱き締めると、ドルドルの姿は女から男へと変わる。


 マドカがドルドルに質問する。

「それが、かけられた呪いか?」

「いやこれは、わたしの体質だ……性別変化で甲冑も変化するように細工されている」

 ドルドルの話しだと。

 女の時に女に抱き締められると男に。

 男の時に男に抱き締められると女に変わってしまう、特異体質らしい。

 男ドルドルが言った。

「わたしに、かけられた呪いについては……いずれ、さあ現世界に行こう」


 立ち上がった、マドカを先頭にトンネルに向かって歩きはじめると、マドカの足から歩くたびにピコピコピコと、音が聞こえてきた。

 ドルドルが少し笑いをこらえて言った。

「なんだ、その音は」

 ユーロがフォローする。

「わたくしも最初は驚きました……足から変な音がするのが、マドカさんが、呪法師からかけられた呪いみたいです【ピコピコの呪い】とか」


 歩くたびにピコピコ音がする、マドカが赤面して言った。

「笑うなよ……本人は結構、気にしているんだからな」

「笑わない、笑わない……わたしにかけられた呪いも音系の呪いだ」

「では、いざ呪法師ペイペイを追って現世界へ」


 三人がマドカのピコピコ足音を響かせながら、現世界トンネルに入ると、開いていたトンネルの入り口は閉じて岩になった。


 未知の現世界での、三人の冒険がはじまった。

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