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天使の襲来

「なんで、貴方がここにいるのかしら?」


朝のホームルーム前、

遅刻ギリギリで教室に飛び込んでくると

江良は信じられないという表情をした。


視線の先には三条茜がいた。


途端に教室の空気の色が変わった。

動いているのは江良と三条だけで

教室の生徒たちの動きはピタリと止まっている。


音一つしない教室で、三条の声が響いた。


「ミア様、ご無沙汰をいたしております。」


三条は江良の席の横で片膝をつき、

深々と頭を下げている。


「見れ麗しい御姿に拝謁できまして、光栄の至り・・・」


「そういうのはいいわよ。

 まさか、貴方、彼に手を出していないでしょうね?」


江良はそう答えると、露骨に嫌そうな表情を浮かべ

クロワッサンと牛乳パックのストローを交互に口に運び続けた。


「いえ、私は・・・。」


三条がうつむいて、ほんの少し頬を赤らめた。

江良はわずかな動揺を見逃さなかった。


(明らかにヒカルとの間で何かあったわね。

 この様子だと彼に苦戦したのかしら?)


「貴方ほどの戦士ですから、素人にケガをさせていないわよね」


「はい。もちろんでございます。」


(三条茜の様子だと間違いないわね。

 それにしてもヒカルは、思ったよりも面白い存在に

 なるかもしれないわ。)


昔からインスペクターとガーディアンは

監察官という立場から、変わった能力のヒトが現れると

バトルを仕掛けて、戦闘レベルを観察してきた。


結果、能力が高いものは組織に組み込まれ、

組織の邪魔になりそうな者は、人知れず排除される。


しかし、これまでネームドが自ら出向き

観察バトルをおこなうなんて、聞いたことがない。


「あいつ、よほど彼のことが気になるのね」


三条は片膝をついて下を向いたまま、黙っている。


「それで貴方は苦戦したのかしら?」


「いえ負けていません!」


三条の目が真っ赤に燃えている。


「ただ恐ろしく早いスピードで動くので、

 攻撃が軽くかわされてしまいました。」


江良は俺がタイムリープを使ったと直感した。

しかし、三条にはバレていないようだ。

ならば、これ以上三条から詮索する必要はない。


「それで彼を引き抜くのかしら?」


「いえ、それはまだ。。。」


「わかったわ。彼が自分の意志でガーディアンになるのなら、私は止めない。

 しかし、強引に組織に入れたり、消そうとしたら、

 私があなた達の敵になることだけ覚えておきなさい」


「い、いったい彼は?」


「わかったわね!」


『不思議な速さで動いた俺は、いったい何者なのか?』

三条は、そう聞きたかった。

しかし、江良の視線で言葉が遮られた。


三条は、過去に神の前に出たことがあり、

何度か威圧を受けたことがある。


しかし、今感じた江良の威圧は桁外れだ。

僅かな威圧に感じたのに、足の震えが止まらない。


一瞬で消される。

三条茜は瞬時に死を覚悟した。


ガーディアンのエースでこの状態だ。

他の戦士であれば失神しているに違いない。


三条は返事すらできず、黙ったままうなづくだけだった。



すると視界がぱっと開け、

ほかの生徒たちが動き始めた。


江良は既にクロワッサンを食べ終え、いつもの清楚なたたずまいで

何事もなかったかのように静かに読書を再開していた。


時間が動き始めたということは、自分は助かったらしい。

(この偉大な女神を動かすだけの、ヒト、天野ヒカルとは、いったい。)



江良と三条が感動の再会を果たしていた

時間から、ちょうど30分前、

俺はいつもと違い、バスで学校に向かっていた。


実は昨晩、愛車がパンクをしてしまったのだ。


朝の通学バスは、うちの学生で満員だった。

俺は一番後ろの左端に座って、ぼんやりと外を見ている。


窓の外には桜が散り始め、花びらが舞っている。


すると、花びらの向こう側、

進行方向から数人の生徒が走って逃げてきた。


「なんだ?」


逃げてきた方向を見ると、背中に羽の生えた生き物が、

通学途中の生徒たちを弓矢で襲っていた。


ぱっと見では、愛のキューピットが恋の矢を放っているようだ。

しかし、乙女チックな妄想とは違い、

矢が刺さった人の背中から血が噴き出していた。


矢に当たり動けなくなったヒトは、キューピット、天使もどきに

網でとらえられ、上空へ連れていかれている。


「なんだ、こりゃ?」


俺は思わず叫んでしまった。


隣に座っていた女生徒もパニックとなり泣き出している。

バスの中ではあちこちから悲鳴が聞こえる。


我先に窓から逃げ出すやつ、泣きながらうずくまるやつ、

電話で助けを求めるやつ、前の席では正座でお経を唱えている。


俺は、、、

なぜか心が落ち着いていた。


いざとなれば、タイムリープすれば何とかなるし、

何より、こんな天使もどきより三条の方が恐ろしかったのだ。

この数週間で恐怖には慣れっこである。


リーダーらしき天使もどきが、周りに叫んでいる。


「あと、30体でちょうど200だ。

 ノルマを達成して、さっさと飲みに行こうぜ」


「そうだな、強い敵もいない。」

「楽な仕事でよかったぜ」


かわいい顔をした天使もどきの中身はオッサンだ。


江良からは、人前で力を使わないように釘を刺されている。

しかも、あれだけの数だ。絶対に勝てない。


俺は人が狩られていくのを、じっと見ているしかなかった。



男子生徒が取れさられ、

次に天使もどきたちが目を向けたのは、5歳ぐらいの

男の子を連れた母子の2人だ。


母親は恐怖のため座り込んでいる。

その前に小さな男の子が立ち、母親を守ろうとしていた。


こぶしが握りしめられているが、手足が震えている。


(あんな小さな子が勇気を振り絞っているのに、

 俺は隠れているだけか?本当にそれで良いのか?)


天使もどきたちが、母子を射る順番で言い争っている。


そして、リーダーが矢を構えた。

母親は恐怖のあまり気を失ってしまった。


これは確実に彼らに命中する。



俺はいても立ってもいられず、

バスの窓から飛び降りると、三条との戦いで

覚えたばかりの時間を止める技を使った。


一瞬で風景が変わり、時が止まった。

もはや、見慣れた風景だ。


俺の力では10秒ぐらいしか持たない。


急いで、親子をバスの影に移動させた。

何とか間に合った。


風景が変わり時間が動き始める・・・。


天使もどきは、自分の放った矢が外れ、親子が消えたことに驚いている。


間髪入れずに、俺は再び時を止めて、

自分も隠れることにした。


しかし、何故かその時は時間が止まらなかった。


次の瞬間、標的は親子から俺に代わり、

天使もどきの矢が一斉に飛んできた。


(仕方がない!やり直しだ)


俺はタイムリープを唱えた。



------------


俺は3分前に戻ると、もう一度親子を遠くへ逃がし、

自分もその場から離れることにした。


今回、学んだことだが、

一度時間を止めると、止めた時間の2倍、

俺の場合は20秒ぐらい、インターバルをおかなければ

もう一度時間を止めることができないようだ。


いざという時に使えるぐらいで、

戦っている最中に使えそうにはない能力だ。


今回、俺が守った2人は無事だったが、

代わりに他の生徒が2人連れ去られた。


いったい、あいつらは何だったんだろう。

江良といい、三条といい、

毎日分からないことばかりだ。


気が付くと、渋滞していた車が少しずつ動き出していた。

天使もどきの攻撃は終わったのだろうか?


俺は奴らに見つからないように、現場に近づいてみた。


すると驚いたことに、

破壊された現場が元通りになっていた。

飛び散った血の跡もなく、ガラス一枚割れていない。


確かにあの時、目の前で人が倒れ、拉致されていった。

しかし、今は何事もなかったかのように生徒たちが歩いている。


(あれは夢か?)


俺は完全にパニックになった。

遂に俺は、現実と夢の区別がつかなくなったらしい。


頭の中が暴走しかけた時、聞き覚えのある声が聞こえてきた。


「ママ、なんで僕たちあそこで寝てたんだろうね」


母親と手をつないだ男の子が交差点に歩いてきた。

俺が助けた親子だ。母親も不思議そうな顔をしている。


(さっきまでの世界は現実だったのだ)

(この件について、江良なら何か教えてくれるかもしれない)


俺はともかく江良に会うために、学校に急いだ。



学校へ向かって歩いていると、

俺の乗っていたバスが、前の方に止まっていた。

無事だったらしい。俺は走ってバスに乗った。


バスは空席が目立ち、ガラガラだ。

おそらくバスに乗っていた半分の生徒が今回の犠牲になったのだろう。

俺は直感的に理解した。


しかし、みんな何事もなかったように学校へ向かっている。

友達が消えているのに気が付いていない。


(これが江良が話していた記憶の書き換えなのか・・・)


俺はそのとき、何とも言えない底知れぬ恐怖に包まれた。

゜*。,。*゜*。,。*゜*。,。*゜*。,


今回もお読み頂きありがとうございます。


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