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少女と、たこ焼きと、一本のナイフ

入学から1か月後が経った。


この日、江良の姿は教室になかった。

担任によると、親戚の法事だそうだ。


江良は越境入学のため素性を知る者が少なく

休んでも、あまり目立たない。


俺は初対面のインパクトが強かったせいか

あいつのことは日々チェックを入れている。

確か、今月だけで5日も休んでいる。


そんな江良だが、クラスメートの評価は意外と良い。



【クラスメート10人に聞いた江良のイメージベスト5!】


第5位

学校をよく休むくせに、勉強ができる


第4位

運動神経が良い。スポーツテストの後、多くのクラブから勧誘された


第3位

誰に対しても興味なさそう


第2位

あの品の良さは絶対にお嬢様だ


第1位

とにかくかわいい、学年でベストスリーに入る



俺が受けた仕打ちを考えると、虚偽のイメージばかりだ。


確かに、かわいい。

しかし、あの性格は無理だ。


2位のイメージ通り、見た目はお嬢様。

だが、別世界のお姫様で、関わってはいけない人種だ。


何かにつけて俺をトラブルに巻き込み観察している

いやーーな奴だ。


そんな江良がいない静かな一日を、俺は満喫した。

だが、正直言うと、物足りなさも感じていた。



<<<  bububu   >>>


『ヒカル、ごめん! 放課後、委員会活動になった。

 一緒にショップへ行けない。』


帰りのHRの時間に あっちゃんからのメッセージが届いた。

今日は一緒に隣駅のカードショップへ行くはずだったのだ。


なにしろ、待ちに待った魔法戦隊カード第2期の発売日だ。


このシリーズは、前から人気があったが、

2期目から新キャラの魔法戦士少女が加えられた。


今、ネットでは そのデザインが話題となっているのだ。


俺も1度、その画像をスマホで見たことがあるが、

どことなく夢に出てきたミアという女性に似ていた。



そういえば、あの夢は事故の夜以来見ていない。


あの夢の後、タイムリープの能力が身についた。

夢と能力には、何か関係があるのかもしれない。


とても気になる。

しかし、今は第2期のカードが先だ。


俺は、HRが終わると急いで隣駅に向かった。



隣の駅前商店街。

この一角にカードショップが出店している。


夕飯の買い物客でにぎわうアーケードに入ると、

遠くから聞き覚えのある声が耳に飛び込んできた。


「「「 きゃー、このたこ焼き最高やわー 」」」

「「「 おっちゃん、もうひとつちょーだいな? 」」」


やはり聞き覚えがある声だ。

俺は気になり、声がする方へ近づいてみた。


「「「 かーっ、仕事帰りの、たこ焼き、たまらんなー 」」」


雑踏の中で黄色いリボンが揺れている。


リボンに近づいてみると、

そこにはポニテの女子がたこ焼きを頬張り、

満面の笑みを浮かべている姿があった。


「それだけ美味そうに食べてくれると、オジちゃんもうれしいよ。

 はい、これオマケな」


「ほんまにー? おっちゃん最高や!」


たこ焼きの屋台の前で、謎の盛り上がりを見せる2人。

俺はあっけにとられて思わず、声をかけてしまった。


「江良さん、なんでこんなところに?」


「あ・・・」


俺の姿をみて、固まる江良。

明らかに瞳の奥で動揺している。


「いっこ、たべる?」

「私がここにいたことは、内緒にしてね。」


急に言葉遣いが変わり、いつもの江良に戻っている。


「江良さん、仕事帰りって、言っていたけど」


「あー、それも聞いちゃったのね。言った私が悪いんだけど・・・」


江良は少し恥ずかしそうに下を見た。



「分かった。誰にも言わないよ。それじゃ。」


俺はその場を立ち去ろうとする。


新作カードの方が気になるし、なによりも

この女に関わるとろくなことがないのだ。


江良がたこ焼きを頬張りながら、俺を指さした。


「このあと、ちょっと私に付き合わない?」

「じゃ、私についてきて」


(おいおい、なにも返事してないぞ。)


江良は俺の返事も聞かずに歩き出す。

小さな体なのに、相変わらず風を切るように歩く。



商店街を抜けると、小さな公園に出た。

そこで江良は振り返り、俺の後ろに向かって呼びかけた。


「もう良いでしょう。

 そろそろ私を一人にしてくださらないかしら。」


なんだ?

江良の奴、妙な言葉遣いに変わっている。

俺の後ろに誰がいるっていうんだ?


そもそも俺の背中には何の気配もない。

はずだった・・・。



「申し訳ございません。貴方様に危害を加えるつもりはありません」


<<< え、えええええーーーっ >>>


さっきまで誰もいなかった砂場の横に、膝まづく男女が現れた。


(な、何のイリュージョンだ?)


俺は思わず、半歩後ろに飛びのいた。

エビのようなポーズになった俺のことなど、ガン無視で

2人はまっすぐに江良を見ている。


「そうね。貴方たちの気持ちは理解しますが、

 毎日付きまとわれるのは、さすがに気分がよろしくなくてよ。

 気分が悪くなるとどうなるか、、、分かりますよね」


2人の表情が突然変わり、額から血の気が引いている。


「は、はい。あの方にお伝えいたします」


「えぇ、分かれば宜しいのです。では、お消えなさい」


「ははっ」



いつの間にか2人の姿がない。

残された公園には、ブランコの揺れる音と、

商店街からこぼれるBGMだけが流れていた。


「ごめんなさい。君を巻き込んでしまったようです」


あっけにとられる俺を見ながら

江良がリボンを揺らし、深々と頭を下げた。


「あの2人は?」


突然のことばかりで。俺は平凡な質問しかできなかった。


「あの2人は古い友人のお知り合いの方たちよ。

 君のことを探りにきたみたい」


「え。俺・・・。なんで俺のことを・・・。

 あんな人たち、今日初めて見たんだけど」


「そうよね。突然言われても困るわよね」

「じゃあ、その理由を教えてあげるわ」


江良はたこ焼きを再び頬張ると、少し微笑んだ。


そして、いたずらっ子のような眼をすると

一瞬で俺の懐に飛び込んできた。


手にはナイフが握られている。


次の瞬間、俺の心臓には江良のナイフが刺さっていた。

゜*。,。*゜*。,。*゜*。,。*゜*。,


今回もお読み頂きありがとうございます。


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