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「クロートさん、動かないのはプラグがコンセントに刺さってないからですよ。 こうすれば・・・ はい、ちゃんと動きます。」
「おお、かたじけない。」
「アッサム君、テレビはあまり近くで見続けてると目が悪くなるから離れて見てね。」
「えっ?そうなの?・・・分かった。」
「エディさん・・、そのぉ・・・ 」
「何かな?遠慮なく言って。」
「はい・・。 その、、服、前後ろ反対です・・。」
「ん?・・・ あぁ・・。 そうか、では着なおしてくるよ。」
「ウナさん、何か解らない事がありますか?」
「えぇ、まぁ色々と。 こちらは文化が発達しているんですね。仕組みがとても気になります。」
「あぁ、そうですよね。ー。 分解しないで下さいね?」
「ふふ、大丈夫ですよ。」
「・・・。」
家電は不慣れな為扱いがよくわかっていないが、彼らなりに受け入れ手伝いをする事にしたらしい。留守の間は心配だが他に預けれるような頼れる人もいないし、別の宿泊をと思ってもそこまで世話を出来るお金もない。
「今日もお仕事ですか?」
「あ、はい。」
「朝食作り手伝おう。」
「じゃあ私はテーブルをセッティングしようかな。」
もう一人はテレビに夢中だ。
朝食を食べた後は近くのコンビニや公園などを描いた地図を説明して少しのお金と一緒に渡す。ずっと中にいるのも塞ぐだろうし。
観光者と言うより仕事で引っ越して来たばかりという設定のほうが無難かと、そこら辺も話した。
留守番を頼んで昨日と同じように出勤した。
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菜奈子を見送った4人は顔を突き合わせる。
「結界は?」
「張っております。」
「ーー。 さて、いよいよ困ったものだ。」
エディは眉間にしわを寄せて息を吐く。
冷静に対応しても内面は困惑している。今の状況なんて予想外もいいとこだ。
ここは自分達が居た所とは違い過ぎる。昨日1日様子を見ていたが、ここには手掛かりも原因も見当たらない。
「私の失態です。申し訳ありません。」
とウナが言う。
「いいや、お前だけのせいではない。ーー。果たしてこれは敵の思惑通りなのか・・。だとしたら問題だがな。」
普通のマンションの一室で、防衛体制を敷いてのまるで軍事会議のよう。
「いえ、その可能性は低いかと。 もしその様な魔法や術があったなら、こちらの技術を持ち帰っているでしょう。我々に知らせるような事もしないはずです。こちらに追ってくる気配も今のところはありません。」
「ならば事故か・・。 どちらにしても問題が異なるだけだな。」
どうやって帰るか。八方塞がりだ。4人は気分が沈む。
「救いはここの娘さんがお人好しであったことだな。」
始めこそ当然だがこちらを警戒していた彼女。だが悪意がないと思えば中に入れて、追い出しもせず、国に突き出すでもなく、こちらを心配して世話をやくようになった。 女性一人で暮らす所に見ず知らずの男4人。不審者でしかないこちらの事情を信じてなんて、お人好し以外ない。いい大人が縋るには申し訳がたたない相手だ。だが彼女に甘えるしか今のところ手立てがない。
「本当に。。」
と苦笑う。
すまないと思ってもここを離れないのは、心情的にここだけが綱だからだ。このままで良いとは言えないが、不安なのだ。
外に出たところで生活出来ないのが分かった上に、一般平民である彼女には解決出来る伝手もないようだ。これ以上は頼れない。このまま進展がなかったらと思うと暗くなる。
「もう暫くお世話になりましょう。せめて何かお礼はしたい。 そして、このまま動かないならば・・・、 腹を決めてこの国に捕まろう。。」
「殿下・・・。。」
鎮痛な空気がおりる。しかしそれを彼女の前では見せないようにしようと決めた。
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