プロローグ
私は冴口菜奈子〔27歳〕。2LDKのアパートで一人暮らしのごく普通のOL。
そう、今でもそのはず。。。
「ねぇねぇっ、これどうやって音出てるのっ? この人達誰っ?」
「これは興味深いですね。。 あ。ナナコさん、おはようございます。」
「ナナコ殿、動かないのだが、どうすればいいだろうか?」
「おはようナナコ、よく眠れたかい? ところでこちらの服のセンスは独特だね。素材は良いと思うのだけど、、どうも慣れないね。」
・・・・・・。
これは夢!! っと思いたかった。。
「・・おはよう・・ございます。。 」
一瞬現実逃避に浸るが、取り敢えずは冷静に?
今ここには4人の知らない男性がいる。何でこうなったかなんて知る訳がない。当本人たちでさえ首を傾げているのに。
彼らが来たのは昨日の早朝の事。まだ真っ暗な時に、いきなりもの凄い音が近くでして意識が覚めた。
始めは泥棒かっ?と身構えた。物音からして複数。隣りの部屋からだった。
心境的にはパニックだった。布団の中でどうしようどうしようと唱えて、竹刀があるのを思い出してそっと取りに行った。携帯電話は運悪く隣りの部屋だ。聞き耳を立てながら扉越しに様子を窺っていると、その泥棒(*推定)から声がかかったのだ。やけに丁寧な落ち着いた言葉遣いと子供っぽい者もいるようで、しかも一度外に出た後入って来た出戻りだった。
よくわからない。いや全くわからないっ。
怪しい者ではないですって・・。十分怪しいですからっ。
兎に角こちらも煽らないように外に出てもらった。警察を呼ぶべきかと思ったが、ドアスコープから覗くとなんと、外人さんだったことが判明。しかもなんかコスプレしている。益々解らない状況に。
なんのドッキリなのかと、ちょっとだけカメラを探してしまった。
どう考えても不法侵入の不審者だ。モデルみたいに顔はイイみたいだが、やはり警察だろうかと観察した。
しかし言われた通りに外に出て、大人しく待っている。会話の中でも何か困ってると言っていた。いや、だからと言って入っていい理由にはならない。鍵だってかけていたのだから。
チェーンをかけたままそっと戸を開けると、そこにはニッコリと愛想の良い顔を向ける4人が。
なんかコワイ。。
そしてその圧力?に押し負けたのだ。
警戒心は持ちつつ、中へ入れて改めて話を聞いてみた。
すると何の冗談かととれる話をしてくれた。
界渡り?異世界?? ええ?追手が来るかもしれないからここで見張りと護衛をするぅ???
ちょっと許容オーバーなんですけどっ?
申し訳なさそうにしているが、何だかんだと言い包められた私。
いやいや、ちょろくないと言いたいっ。
だって、どうもウソではないみたいなのだ。
私関係ないし?これは何処に訴えるべきかと少し混乱していたら家の目覚まし時計が鳴ったのだ。
その時、一人に咄嗟に腕を回され抱き寄せられ、他の3人は一斉に警戒態勢に。一人は抜刀、一人は手にナイフを、一人はなんか氷?を出していた。
何何何何~!? とパニックになっている内に、めざまし時計さんはお亡くなりになった。。
何するんだと怒って説明したら、壊した本人たちは自分たちの勘違いに平謝りだった。
そんな事があってからお腹も空いたし、朝食にした。適当にサンドイッチとインスタントのスープを出してあげた。
イケメンに囲まれての朝食。やはりこれは夢かと現実逃避した。
自己紹介をした。体を鍛えているのか姿勢が良い。
一番お貴族様っぽい金髪の方は、エディさん。なんと王族らしい。確かに言われれば気品があって、一番堂々としていて一番優雅にお茶していた。食事もお上品だ。流し目が色っぽい。
次は氷を浮かべてらしたウナさん。魔法士副団長だとか。知的な感じのする人で、気遣いが出来る人だ。会話の交渉や説明もこの人が主導だった。朝食の準備を手伝ってくれてちょっとドキッとしたが、仕方ないと思う。
次に長剣を抜いていた真面目そうな人はクロートさん。騎士団長の近衛で、エディさんの護衛騎士をしているそう。礼儀正しい、私をお嬢さんと言ってくれた人だ。別に手を紳士に握られたから絆された訳ではないっ。
そして最後は一番若いアッサム君。まだ10代だ。騎士団では注目のエースらしい。元気っ子って感じがする。サンドイッチを頬張っているのを見ると可愛くて微笑ましい。いや、騙されてないからっ。
兎に角、その格好ではそのまま外にも出れないので、私は近くのコンビニに行って食料品等々を買って、家の中の取り扱いを説明し、ドタバタしながら職場に出勤した。気になってしかなかったが、休みの時間でネットショップで注文した。布団や恥ずかしかったが下着も・・。帰りにも服を買い、スーパーや百均で買い物した。アパートの駐車場に着いた時には、私は一体何をしているのかと思ったものだ。帰ったらもういないかもしれない。そしたらかなりおバカだ。自分のことながらお人好しだと思う。
帰ったら4人はいた。お帰りとわらわら出迎えられた。遅かったので心配されたようだ。車の荷物も一緒に運んでもらった。防具は脱いでいたし、もう暗いので直ぐそこまでならいいかと思ったのだ。
どのくらい食べるのかわからなかったが、簡単なサラダとスープに、フランスパンをスライスしたガーリックトーストを先に出した。作っている間に彼らには買った物を解いてもらい、トレーナーに着替えてもらった。小さいテーブルとお客用の折り畳みテーブルを並べてあるが、料理を置けばいっぱいいっぱいだ。
メインはゴロゴロ肉のミートパスタ。コップにはジンジャーエールを注いだ。
床座りで違和感があるが、本人たちは喜んで美味しいと食べてくれた。
ある程度済んだところで、何か出来ることはないかと尋ねられた。手持ち無沙汰であるのは察する。お世話になってばかりもいられないので、何か仕事がしたいと。逆の立場なら私も同じ事を言ったと思うから気持ちは分かる。
が!
身分証明書のない彼らが働ける所などない。彼らは見るからにしょんぼりした。私は励ますように、家の中で出来るようなものを探すためPCを立ち上げたのだった。
きっと本来ならばもっと役立つ仕事があるはずの彼ら。こんな内職探しを真剣に考える立場ではないはず。そう思うとなんか居た堪れない。いや、私のせいじゃないけどねっ。
注文した物も届いて寝床を作り、私は自分の寝る準備をしながら明日のメニューを考えていた。
直ぐ隣りの部屋で寝るので緊張したが、スマホで目覚ましをセットして眠った。
そして冒頭に戻る。