9、おうちにかえりたい(二度目)
そう、私は思うわけですよ。安心してからの恐怖とか意識くらい飛ぶと。だから短時間に二度も漏らしても悪くない、私は普通。でもこれは墓まで持っていく。私が子どもに笑われない為に。未来の旦那様に軽蔑されないために。
「この場合、おめでとうございますで良いのでしょうか?」
経緯はどうあれ怪談のかけらを取得した私に神様は声を掛ける。聞くところによるとあの屑ガキ…もとい、花沢の所から担いで来てくれたとか。やるじゃん、神。そして花沢はただの脅しとか、脅しでやるレベル越えてると言いたいとこだけど…とりあえず死んでないから良し。
「それで、帰れそう?私帰れそうかな?」
正直身が持たない。このまま何回もこんな事してると私と私のズボンは再起不能になる。今だって正直着替えが欲しい。
「ふむ…帰れます、ね。多分」
最初濁していた割に一つで帰れるのかと言いたくなったが私は学んだ。要らないことを言えば時として手痛いしっぺ返しが来るかもしれないと。だから慌てるな、杏奈。まだ慌てる時間じゃない。
「ただ申し訳ないですが、これからも怪談収集はして貰わないといけませんね。」
釈然としないが帰れるなら何でもいい。勢い良く頷くと神様に帰り方を言う様に促す。
「それで、どうやったら帰れるの?」
「来たトンネルを戻るのですが、あの見えない壁は怪談のかけらを持ったままだとすり抜けられます。」
漸くだ。日常よ、私は帰ってきた!!神様の言葉に私は出口へと走っていく。そしてそのままの勢いでトンネルまで到着すると弾かれたところに手を伸ばす。すると進めなかった所にすっと手が入り中へと吸い込まれた。
「あなたの行く先にこれから多くの怪異が現れるでしょう。私は常に傍にはいられません。だから…気を付けて。」
トンネルへと吸い込まれる私の背中に神様は言葉を投げ掛ける。私はこの時本当に帰るべきだったのか。今更それを言っても仕方ないが、あの時はただ帰りたかった。湿ったズボンの感触を感じながらそう思ったのは決して嘘ではないのだから。