8、一の怪談、トイレの花沢さんその四
「長かったかしら?これでおしまい。何の変哲もないトイレの花沢さんの物語よ。」
私は彼女の語る怪談を聞き思ったのは、有り体に言えば犠牲系に分類されるものだなと。自己が選ばれて代わりに元居た者が成り代わる、そういった怪談は少ないがいくつかある。
「ちなみに貴女とは代わらないわよ?だって、貴女には資格がないもの」
心の片隅にあった疑問を、彼女は答えてくれる。ただ、資格がないとの言葉に引っ掛かってしまう。
「…例えば、その資格があれば代わっていた?」
安全を確保すれば人は欲を出す。私はついつい彼女へ聞いてしまった。それは可能性の話に過ぎず自身は安全圏にいるから出た言葉なのかもしれない。彼女は少しだけ微笑むとその目を血走らせて私の眼前にまで迫ってこう言った。
「代わらなかったのはお前を殺して楽しみたいからだよ!!!」
人は本当に驚くと声も出せずに息を呑むのだ、私は二度目の失禁と共に目がぐるりと上へと向き白目を剥いてその場に倒れた。意識が遠退く前、神様が後ろから走り込んできた様な気がしたが、もうそんな事は意識を手放した私には何の関係もなかった。
「人の悪い、いや…死んでるからこの言葉は不適当ですかね」
「あら、ちょっと安全圏にいると勘違いした彼女に怪談の収集とはどういうことかを身を以て教えてあげたのよ。私の様にいたずら程度で済む相手の方が少ないってね」
「…そうですね、私は見守ることしか出来ませんから」
神様はそのまま彼女を背負ってトイレを出ていく。花沢さんはそんな二人に笑顔で手を振った。これから始まる怪談の一つ目を飾る者として二人の背中が見えなくなるまで手を降り続けていた。