5、一の怪談、トイレの花沢さんその一
「卍固め…これは凄い、痛そうだ。」
「あの、そろそろ心読むの止めて貰っても?私の感情めっちゃ丸裸で切ないんで。」
言うだけ無駄かと思いながらも一応は抵抗しておく。神様だからって差別はしない、私の前には全て平等だ。それにお願いするんだからちょっとくらい偉そうにしてもバチは当たらないはず。
「すいません、久しぶりの人との会話に少し取り乱してしまって。さて、それでは怪談のカケラについて説明しましょう」
神様の話を聞くと怪談のカケラとはこの世のあらゆる怪談や恐い話に発生し、それが発生している間は怪談は実体化してしまう。つまり私の見たトイレの花沢(仮)さんはモノホンの怪異らしい。こっわ。
「それと怪談のカケラについてですが、人間しかとれません。取る為にはその怪談や怪異を知り恐怖する事が必要です。いつまでもあそこにいるのは私としても心苦しく…ちょうど心霊スポット巡りに来たのを建前にあなたの力を借りたかったのです。」
つまり神様としては怪談のカケラ集めてあの子を成仏させたり他のトラブルを解決してほしいと言ったところか。
「まあ乗りかかった船です、任せてください。」
私は一応快諾しておく。というかどうせやらなきゃ帰れないんだし。詰んでるとはこの事よ。さあ行くか、私のパンツの敵討ちに。そんな訳で神様とトイレの方へと歩いていく。なんだろう、トイレのお化けも神様が一緒にいると怖くないかもしれない。
「そういえば大変申し訳ないのですが、私は特に手伝えないので頑張ってください。流石に命の危機は無いはずですが怪談とは人の理の外の出来事です。あなたに危険がないとは言えませんから。」
この神、トイレの前で言うなよ…やっぱりぶん殴っとくべきだったかな。まあこう言ってるし流石に死なないよね。ていうかまだ暗いんだけど、次は照明しっかり敷設して欲しい。
ぼやきながらトイレへと入り私は例の個室に手を掛け、ゆっくり開いた。するとそこには…いなかった。さっきはいたのに。おかしいなと扉開くと後ろに気配がする。身の毛がよだつとはこの事だろう。
「あなたが入りますか?」