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ハズレスキル【下痢】持ちの俺、ウンコマンはいらないとパーティーを追放されるもスキルの使い方に気付いて大逆転 トイレに駆け込んでももう遅い! お前のクソは漏れている!

作者: 梅松竹彦

 ある日の事だ。

 俺は冒険を共にするパーティーのリーダーから話があると酒場に呼び出された。


「ゲイリー。お前をパーティーから追放する」


 リーダーのベンが渋い顔で酒を呷り、いきなり本題を切り出した。


「お前、スキルは【身体強化】だけって言ってたよな?」


「そうだな。実際、役には立ってただろ?」


「まぁ、それは……うむ。だが、問題はそこじゃない。なぜ黙ってた」


「逆に聞くが、こんな特大のデメリットを背負ってると知ってたら、お前は俺をパーティーに加えようと思ったか?」


「ねぇよ。だって臭いもん」


 それ見たことか。

 俺たちがこんな()()()()()話をしなきゃならない理由は、俺が持つスキルにあった。


 この世にはスキルと呼ばれる力がある。

 例えば【身体強化】のスキルを持つ者は、見た目がひょろひょろのモヤシ野郎でも熊並みの怪力を発揮できるといった具合に、スキルの恩恵は凄まじい。


 スキルは生まれつき持っていることもあれば、ダンジョンで見つかる宝珠を使って後から身に着けることもできる。

 そしてその中には、デメリットの代償に強力な力を得るものや、デメリットしかないハズレスキルも存在する。


 スキル【下痢】。

 どんなに健康でも唐突に下痢になってしまう。正真正銘のハズレスキルだ。


 下痢は突然やってくる。


 好きだった幼馴染の女の子に告白しようとした春の日も。

 故郷の村を旅立とうとした夏の日も。

 初めて大きな依頼をこなしてギルドの受付嬢から熱い視線を向けられた秋の日も。

 特に何もない冬の日も。


 何の前触れもなく、げりげりぴーだ。

 生まれ持ったこの呪いのせいで俺の人生はいつだってクソまみれで、いつしか俺はウンコマンの二つ名で知られるようになっていた。


 わざわざ拠点を隣国のこの街に移したのも、そんな不名誉な二つ名を捨てて新天地で一からやり直そうとしたためだったが、どうやら俺のケツは取り返しがつかないほど汚れ切っていたらしい。


「ハハッ、普段は強いくせに肝心な場面でクソを漏らす冒険者がいるって噂、お前のことだったんだな」


「やめろ」


 酔いが回ってきたベンが赤ら顔でヘラヘラと俺をなじる。


 前回のダンジョン探索で、俺はまた下痢になった。

 30層のフロアボスとの戦いの最中にだ。


 おかげでダンジョン攻略は失敗。幸い死者こそ出なかったが、破損した装備の修理代など収入面では大損害だった。


「ここでお別れだウンコマン。戦闘中に腹を下して戦えなくなるような奴はいらん。故郷に帰って一生便所にでも籠ってろ!」


 そこまで言わなくてもとは思ったが、俺がウンコマンなのは事実だし、食い下がったところでベンが考えを改めてくれるはずもなし。

 だから喧嘩になる前にその場から立ち去ろうとした────まさにその瞬間!



 ぐぎゅるるるるる!!!!



「おごぉっ!?」


 来た。特大のだ。

 や、ヤバイ。漏れる!? トイレ。トイレは!? いや無理だ! 一歩でも動けば漏れる!


「お、おい。まさかまた下痢か!? やめてくれこんなところで! 酒が不味くなる!」


「う、うるせぇ……っ、大声出すな……っ。腹に、響く……っ!」


「お、落ち着け。な? こんなところで漏らされたら俺まで臭くなるだろ。ほら、トイレはすぐそこだ。頑張れ!」


 この野郎。自分のことしか考えてねぇ。

 ここぞって時に限って下痢になる辛さを知らないからそんなことが言えるんだ。

 憎い。この世のすべてが憎いっ! 


 どうして俺ばかりこんな目に合わなきゃならないんだ。不公平じゃないか!

 畜生、この痛みと苦しみをコイツにも思い知らせてやりたい!


 するとそんな俺の願いが届いたのか、腹から痛みがすぅーっと引いて、代わりにベンの顔色がどんどん青くなっていくではないか。


「うぐぅっ!? な、なんだ、急に腹が!? ゲイリー、テメェ! なにしやがった!?」


 ……そうか。そういうことだったのか。

 俺は今、自分のスキルの本当の使い方を理解した気がする。


 俺の人生に呪いのようにつきまとってきた【下痢】スキルの、悪魔めいた恐ろしい使い方を!


「思い知ったか。俺が今までどんな惨めな思いをしてきたか!」


「や、やめろっ! 大声出すなっ、腹に、響く……っ! ほごぉっ!?」


 ぐぎゅるるるるごろごろごろごろ、と、ベンの腹の底で雷が鳴った。

 そろそろ限界らしい。


「ところで、さっきは随分と酷いことを言ってくれたじゃないか」


「わ、わるかった! あやまるっ、あやまるから! だからたしゅけて!」


「じゃあなウンコマン。故郷に帰って一生便所にでも籠ってろ!」


「ち、チクショ────────ッ!!!!」



 ぶぶぅー! ぶりぶりゅびちびちぶりぶりぶりぶり────ッ! びちっ。



 盛大な炸裂音とかぐわしい臭いを撒き散らすベンを尻目に、俺は大笑いしながら最高の気分で酒場を出た。


下痢ゲイリー便ベン

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― 新着の感想 ―
[良い点]  ツィッターありがとうございます!ギャグな話で面白かった!男性受けする話ですよね!続編あるのなら是非!それではまたね!
[一言] 笑いが止まらないです。 「笑いながら書いてた」とTwitterで言っていたからか、梅松さんの笑い声すら聞こえてきます(幻聴) まじやばいw
[良い点] 強いて言うならば便通でしょうか [一言] Twitterから来ました。 やっぱくっだらねぇwww でも面白いっすよ
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